新しく始まる僕の日常
刑事がどんな生活しているのかはわからないので想像でかきました。
署内にある大きな会議室。7、8人のむさくるしい男たちが集まっている。そのなかで僕はどうしていいのかわからなかった。今までずっと交番でぼーっと過ごして、そしてこのまま一生を終えるつもりだったのに。それが、なんかわからない紙が来てよくわからずに班長とかいうのになってしまったから。
「新倉くん。新倉蒼也くん。聞いているのかね」
ああ、課長が怒っている。少し禿げた頭を気にしだした、まだ現役バリバリのつもりの飯田課長が。
「はい。髪には女性ホルモンが関係していると言われてます」
「は? なに言ってるんだ君。私はこの通りフサフサだ! って違う! 今まで何を聞いていたんだ新倉」
僕らのやり取りに唖然としている他の班長。唯一、僕を推薦した科捜研の浅井さんが笑いをかみ殺している。
しまった。ついうっかり。
「やはり彼では荷が重いようだ。他の人間を班長にしたほうが良いのではないかね浅井くん」
飯田課長の矛先が彼女のほうを向く。僕のせいだ。
「いえ、課長。特殊捜査課の第五班は今年できたばかりの班ですが、知っての通りかなり特殊な人間でないと班長は任せられません。飯田課長は信じておられないようですが、ただ一人の犯罪者を捕まえるために班をつくる必要があったのです。超能力者と世間一般で呼ばれる人間を集めて」
「しかしだな。会議中に放心するような人間はいくらなんでも班長には向かぬと思うが」
すごい。浅井さん。飯田課長と言い合いを繰り広げる度胸があるなんて。
「それはどうでしょうか。さ、蒼也くん。やっちゃって」
その言葉に浅井さんを思わず見る。お願いします。ということらしい。いたずらに、にやにやしてるのはこれから起こることへの圧倒的な信頼からだろうか。
僕は飯田課長に集中した。
「はい。確かに僕も最近の犯罪率上昇は、ミラージュが関わっていると思われます。しかしながら、彼が関わるような類の事件は一目で見て彼の関与が明らかなものばかりです。その他の事件も増えているので一概には言えないと言うのがおそらくこの場にいる多くの人の意見でしょう。さらに言いますと、確かに三階の男子トイレの電気。あの明るさは無駄だと僕もそう思います」
それが彼とこの場にいる皆と僕の意見だった。それを僕が言った瞬間、飯田課長はすごく恐ろしいものを見るような目つきで、その他の班長は全く意味がわからないと言った顔で僕のほうを見た。
しばしの沈黙。浅井さんのにやにやさえ音で聞こえそうな静寂。
「あ、ああそうだな。彼の言う通りだ。君たちがどう考えているのかは定かではないが、確かにミラージュだけが犯罪率を上げているのではない。あと話し合おうと思っていた経費削減の案がだな、あの、ああもうやりにくいだろうが新倉!」
意識を取り戻した飯田課長は最後にあたふたしてそう怒鳴る。他の班長は思わず噴き出しそうになっているがこらえている模様。中には笑わせんじゃねえよという殺気さえ感じる。
「経費案は各自検討しておいてくれ。今日は以上だ。各班戻って伝えるように!」
その一言で解散になり徐々に会議室から出ていく班長達。
「新倉君。あなたは私と仕事の打ち合わせ」
つられて出て行こうとした僕を引きとめる。
「あっ、とそう言えばうちの班って」
何もわからないままここに呼ばれたのだ。浅井さんが心の中で溜息つくのはどうかなと思う。
「今日から誰を班員にするのか。あなたにとってとても大事な、そしてとても大変なお仕事が待ってるのよ。しっかりなさい」
そう浅井さんは楽しそうに僕に告げた。




