幼馴染な僕ら
彼女は、女神だと思うんだ。
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「おはよう、ハル」
いつも一番に僕を見つけて、一番に声をかけてくれる。
容姿端麗成績優秀、まさに『才色兼備』な彼女。
そんな彼女は、僕の幼馴染。
「おはよ、リン」
「今日遅かったね。寝坊?」
微笑みながら近付いてくる彼女の名前は松平凛。
幼稚園から高校二年生の現在までクラスが離れたことがない僕らは、思春期にも関わらず大の仲良し。
一番近い友人であり、家族のような存在だ。
「ん、昨日寝るの遅かったから…」
「ふふ、ほんとに眠そうだね。授業中は寝ちゃだめよ?」
「分かってるー…」
机に突っ伏した僕を見ておやすみ、と囁いた彼女は、他の友人のもとへ向かったようだ。
暖かな春の陽気に誘われ、僕は意識の底へと落ちて行った。
●○●○
「陽斗ー、HR始まるぞ」
肩を揺すられ、重い瞼をゆっくり開く。
体を起こすと、机の傍らに友人の三浦亘(わたる)が立っていた。
「おはよ、亘」
「おう。どうした?かなり眠そうだけど」
「寝不足。あぁ…眠い」
大きな欠伸をする僕を見て、亘は首を傾げた。
「何してたんだよ?昨日は課題なかったよな」
「本読んだり…筋トレしたり」
「お、出たよ筋トレ馬鹿」
「うっせ」
ほどほどになー、と言いながら自席へ戻る亘を見送ると、タイミングよく教室の扉が開いた。
「おっはよー!今日も全員いるねー」
出席簿で肩をトントンと叩きながら入ってきた担任は、笑顔で教室を見渡す。
教壇に荷物を置き連絡事項を話し終えると、何故か僕に視線を向けた。
「明知は終わったら職員室ね」
「なんか用事ですか?」
『陽斗なんかしたのかー?』
「なんもしてねー」
からかうように言うクラスメイトを軽くあしらい、教室を出た担任を追う。
いってらーというクラスメイト達の声に返事をしたあと、職員室目指して歩き出した。