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キモデブと、琥珀色の守護天使  作者: みみっく


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26話 はじめての買い出しデート

「そ、そうだったよな。ありがと……レナ。それにしても、昨夜は無防備すぎだったぞ……。あんな姿、他の男子に見せたら危ないからな」


「それは……仕方ないじゃないですか。眠かったのですから……。それに、前にも言いましたけれど、わたしには男子のお友達はいませんし、作る予定もありません。ああいう姿を見せるつもりも、ありませんから……。うぅぅ、カズヤくん、出来たお料理を運ぶのを手伝ってくれませんか?」


 レナは恥ずかしさを誤魔化すように、トレイに乗せた皿をカズヤに差し出した。


「それなら……いいんだけど。ああ、手伝うよ。朝食、ありがとな」


「夕食の残り物と、お味噌汁とベーコンエッグ……ですけれど。えへへ」


 トレイを受け取る際、指先がレナの手に触れる。

 カズヤは、湯気を立てる美味しそうな朝食を見つめながら、必死に自分を律していた。


 (……ヤバいな。嬉しすぎて……今のタイミングで、感謝のキスを返しそうになった。レナが俺に接してくる距離が近すぎて、まるで彼女が俺に好意を抱いてると勘違いしてしまいそうだ……!)


 あくまで「命の恩人」への献身。そう言い聞かせなければ、心が持たない。カズヤは赤くなった顔を伏せ、豪華な朝食が並ぶテーブルへと急いだ。



孤独の癖と、琥珀の不満

 朝食を終えた二人は、リビングのソファーに並んで腰を下ろしていた。

 ふと気づけば、レナは当然のように肩が触れ合う距離まで密着し、柔らかな体温をカズヤに預けている。


「今日は、どうしましょうか? 夏休みが始まったばかりですよ♪」


 レナがニコッと花が咲くような笑顔を向け、琥珀色の瞳を潤ませて見上げてきた。不登校だったカズヤにとって、学校がない日はただの空白だったが、彼女にとっては輝かしい自由時間の始まりなのだ。


「コンビニでも行くか?」


 カズヤは、ふと思いついた行き先を口にした。


「……え、何を買うのですか?」


 レナは不思議そうに首を傾げた。お嬢様の彼女にとって、コンビニは目的なく立ち寄る場所ではないのかもしれない。


「え、なんとなくというか……癖になっているのかもな。毎日、コンビニ弁当を買っていた時期もあったから。最近はレトルトをまとめ買いして、家を出る回数を減らしていたんだけど……」


 それを聞いた瞬間、レナの表情から笑顔が消え、あからさまに不満そうな顔になった。

 彼女はギュッとカズヤの腕を掴むと、少しだけ尖らせた唇を寄せてくる。


「カズヤくん……レトルトやコンビニ弁当は、もう禁止です。わたしが、朝も昼も夜も、カズヤくんの体に良いものをたくさん作りますから」


「いや、流石にそこまでしてもらうのは悪いし……」


「ダメです。わたしの作るお料理じゃ、不満ですか……?」


 レナは悲しそうに視線を伏せ、掴んだ腕に力を込めた。孤独を埋めるためにコンビニへ通っていたカズヤの過去を、彼女はその優しさですべて塗り替えようとしていた。



はじめての買い出しデート

「コンビニは禁止です。……代わりに、スーパーへ行きましょう。今夜の献立を一緒に決めて、お買い物をするんです!」


 レナの強い希望に押される形で、二人は近所のスーパーへと足を運ぶことになった。

 カズヤにとっては見慣れた風景だが、隣にレナがいるだけで、色褪せた日常が鮮やかなスクリーンの中の出来事のように感じられた。


「わぁ……新鮮なお野菜がいっぱいですね。カズヤくん、これなんてどうですか? 煮物にしたら美味しそうです!」


 レナはカズヤと腕を組み、密着したままカートを押していく。時折、珍しい食材を見つけては目を輝かせ、カズヤの顔を覗き込んできた。


「煮物か……いいな。レナの作る料理なら、なんでも楽しみだよ」


「んふふ、そう言っていただけると作り甲斐があります♪ ……あ、カズヤくん。あちらにカツオの叩きがありますよ。今夜はさっぱりと、高知風の献立にしましょうか?」


 お嬢様育ちの彼女が、真剣な目つきでパックの裏の産地を確認したり、大根の重さを吟味したりする姿は、どこか微笑ましく、そしてひどく家庭的だった。


 (……なんだこれ。まるで、新婚さんみたいじゃないか……)


 カズヤは周囲の買い物客から向けられる「あんな美少女が、どうしてあんな太った男と……」という好奇の視線に気づき、少しだけ身を縮めた。けれど、レナはそんな視線など全く気にする様子もなく、さらにぎゅっとカズヤの腕を抱きしめた。


「カズヤくん、今日はデザートに桃も買いませんか? わたしが剥いてあげますから。あーん、って」


「……ああ。お願いします……」


 カズヤは顔を真っ赤にしながら頷くしかなかった。

 カゴの中に増えていく食材は、かつての孤独なレトルト食品とは違い、二人で囲む食卓の温もりを予感させていた。



分け合いたい重さ

 スーパーを出ると、夏の陽光がアスファルトを熱く照らしていた。カズヤの両手には、食材が詰め込まれた重たいレジ袋が二つ提げられている。


「カズヤくん、重そうです……。一つ貸してください。わたしも持ちます」


 レナが心配そうに顔を覗き込み、袋の持ち手に手を伸ばしてきた。

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