24話 家族の定義と癒やしの時間
「恥ずかしい……うぅぅ……。そ、そうですよね。お休みのキスをするほど……仲良しになりましたよね。……か、かずや……くん。うーっ……ひゃぁ……! やっぱり、恥ずかしいですぅ……!」
レナはさらに赤くなり、逃げ場を求めるようにカズヤの腕に真っ赤な顔を押し付けた。ぎゅっとしがみつく彼女の体温と、柔らかい感触がダイレクトに伝わってくる。
「か、カズヤくんも……『レナ』と呼んでください。わたしだけ呼ぶのは……不公平、です……」
「え、いや……。女の子を下の名前で呼んだことなんてないし、俺みたいなやつが呼ぶと、普通は嫌がられるんだけど……」
「わたしは嬉しいですよ! ……なので、お願い……します。うーっ」
レナは腕に顔を埋めたまま、上目遣いでカズヤを見つめた。カズヤの腕には、彼女の柔らかな頬の感触がぷにぷにと伝わり、その甘い感触に彼自身の顔も沸騰したように熱くなっていく。
家族の定義と癒やしの時間
「わ、分かったよ……れ、レナ……」
「……あわわぁ……ひゃぁ……! う、嬉しいです……。ちゃ、ちゃんとこれからも呼んでくださいね、えへへ」
レナは蕩けるような笑みを浮かべ、カズヤの腕にすり寄った。その瞳には、今まで以上の親愛の情が溢れている。
「……お休みのキス……後で……しますから。仲良しですし……当然の儀式、です……」
(はぁ……わざわざ宣言することないだろ。こっそり自分の家のベッドに逃げ込もうと思ってたのに……。今さら、恥ずかしいから止めてくれなんて言える空気じゃないしな……)
カズヤは爆発しそうな鼓動をなだめるように、努めて冷静に言葉を返した。
「……そうだな。一緒に住んでいるし、何から何まで面倒を見てもらってる。俺たちは、もう……家族のようなものだよな」
「んふふ、ですよね。家族なら、お休みの挨拶は大切ですから♪ さあ、映画を見ましょう!」
レナはすっかり上機嫌になり、カズヤの腕を離すとリモコンを手に取った。先ほどの動揺はどこへやら、今は一緒に過ごす時間を心から楽しもうとしている。
「どれを見る?」
「んー、わたし、これが見てみたいです」
レナが選んだのは、動物たちが繰り広げる、穏やかで可愛らしいアニメーション映画だった。
照明を少し落としたリビング。大画面から流れる優しい音楽と、隣に座るレナの生乾きの髪から漂う甘い香りが、カズヤの心をゆっくりと解きほぐしていく。
並んでソファーに座り、肩が触れ合う距離で物語を追いかける。
それは、これまで孤独な夜を過ごしてきたカズヤにとって、映画の内容以上に「癒やし」に満ちた、贅沢なひとときだった。
映画の向こう側の体温
映画が始まって間もないというのに、レナの視線は画面ではなく、隣に座るカズヤへと向けられていた。暗がりのなかで、彼女の琥珀色の瞳が熱を持ったようにチラチラと動く。
「れ、レナ……どうした?」
「ひゃぁ……え、えっと……カズヤくんに、寄り掛かりたいなぁ……なんて、思ってしまいまして」
「俺で良かったら、遠慮せずに好きにしてくれていいけど。……嫌じゃないから」
カズヤが不器用に許可を出すと、レナの表情がパッと華やいだ。
「んふふ、やったぁー♪ えいっ」
寄り掛かる程度かと思っていたカズヤの予想に反し、レナは流れるような動きでカズヤの膝に頭を乗せた。柔らかな髪が太ももに広がり、彼女の重みが心地よく伝わってくる。
カズヤはソファーの背に掛けられていたブランケットを手に取り、冷えないようにそっと彼女の体に掛けた。
「んん……ありがと。……カズヤくん」
レナは照れ隠しのように、カズヤの手首を小さな両手でぎゅっと掴んだ。そしてそのまま、握った彼の腕を自分の頬へと引き寄せ、愛おしそうに押し当てる。
「レナの頬は……柔らかくて好きだな……」
「カズヤくんの腕も、ぷにぷにしているじゃないですか。……わたし、好きですよ」
レナが幸せそうに目を細め、腕に何度も頬ずりをしてくる。
吸い付くような肌の感触、甘い香りの吐息、そして信頼しきった彼女の体温。カズヤの顔は沸騰したように赤く染まり、視線のやり場に困って泳ぎ続けた。
結局、二人の意識は画面の中の可愛い動物たちには全く向かず、ただただお互いの存在にソワソワと照れ合いながら、過ぎゆく贅沢な時間を噛み締めていた。
淡いピンクの夜の約束
しばらくすると、膝の上からスヤスヤと規則正しい寝息が聞こえてきた。
画面の中ではアニメのキャラクターが賑やかに動いているが、レナの意識はすでに夢の中へと溶け出しているようだった。
「レナ……ここで寝ると風邪を引くぞ」
「んー……むにゃむにゃ……」
「レナの部屋に入るけど、いいか?」
「んー……」
「抱きかかえるけど……悲鳴を上げたり暴れたりするなよ。落ちたら危ないから」
「んー……」
生返事を繰り返す彼女の首筋と膝裏に、カズヤはそっと腕を差し入れた。
ゆっくりと力を込めて抱き上げると、レナは驚くほど軽かった。腕の中に収まった体は驚くほど温かく、そして柔らかい。そこから漂う優しい花の香りが、カズヤの理性を揺さぶる。




