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キモデブと、琥珀色の守護天使  作者: みみっく


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21話 ベッドの上の小さな侵入者

「んふふ。わたし、お友達は結構多いので心強いですよ。大丈夫です。それに、何かあればお父様もいますし……一切、ご心配なく」


 レナは力強く言い切ると、今度は一転して、とろけるような甘い顔でカズヤを見つめてきた。その潤んだ瞳で見つめられると、カズヤはもう言葉を飲み込むしかなかった。


「……まあ、可愛い女子と一緒に登校してみたいな、っていう願望はあるけど……」


 カズヤの本音がポロリとこぼれる。本当に彼女に泥を塗るようなことにならないのなら、そんな奇跡のような日常を送ってみたい。


「それでは、決定ですね♪」


 レナは弾けるような笑顔を見せ、カズヤの手をぎゅっと握りしめた。

 孤独だった不登校児の日常に、眩いばかりの光が差し込もうとしていた。



ベッドの上の小さな侵入者

「それでは決定ですね♪」


 レナは弾けるような声で宣言すると、まるで自分の部屋のようにカズヤのベッドへと勢いよく飛び込んだ。


「わぁ……っ。夜月くんの良い匂いがします……♪」


 彼女はシーツに顔を埋め、うつ伏せのままニコニコと幸せそうに微笑んだ。そのまま、喜びを隠しきれない様子で両足を後ろにパタパタと動かす。

 その拍子に、可愛らしいワンピースの裾がふわりと捲れ上がった。


 露わになったのは、まばゆいほどに色白で、形の整った綺麗な太もも。カズヤの視線は、吸い寄せられるようにその眩しい白さに釘付けになり、心臓の鼓動が耳元でうるさいほどに鳴り響いた。


「ちょ、ちょっと……綾瀬さん。俺の匂いなんて、臭いだけでしょ……」


 カズヤは動揺を隠すように、少しだけ顔を背けて呟いた。


「そんなことありません。ちゃんとお風呂に入って洗っているじゃないですか。……落ち着く、とっても良い匂いですよ……?」


 レナはシーツから顔を上げ、不思議そうに首を傾げてカズヤを見つめてきた。その瞳は純粋そのもので、自分の無防備な姿がどれほどカズヤを狼狽させているか、全く気づいていない様子だった。


「わたし、ここでならぐっすり眠れそうです。……ふふ、どうしましょう?」


 彼女のあまりにも無垢な誘い文句に、カズヤの緊張は限界を迎えようとしていた。



暴露された秘蔵本

「俺の部屋に、綾瀬さんがいるのが不思議な光景に見えるな……」


 カズヤは壁に背を預け、自分の日常に迷い込んだ異分子——あまりにも美しすぎる少女の姿を眺めて呟いた。


「わたしも不思議に思いますよ。わたし、小さな時から男子のお友達っていませんでしたから……」


「そうなの? すごくモテそうだけどな……」


「家が厳しいということもありましたし、周りの女子のお友達が『ああいう下心丸出しの男子はダメだよ』って。当時はよく分かりませんでしたけれど、それで良かったのかもしれませんね」


「初めて入る男子の部屋が、俺みたいなやつの部屋というのは……なんだか申し訳ないな」


「そうですか? わたしは、ドキドキわくわくしていますよ。えへへ」


 レナは楽しげにベッドの上でゴロゴロと転がったり、カズヤの毛布にくるまってみたりと、その感触を全身で確かめていた。


 すると、ふいに彼女の動きがピタリと止まった。


「夜月くん、夜月くん……ああいう女の子がお好みなのですか?」


 レナの視線の先——。

 中学校の頃、引きこもり生活の慰めに購入したアイドルの写真集が、丁寧に整理された本の一番上に鎮座していた。表紙には、眩しい笑顔を浮かべるスレンダーな美少女が映し出されている。


(……待て、なんでそれが一番上に!? これは……掃除した業者というか、綾瀬さんの家の使用人さんの嫌がらせなのか……!?)


 カズヤは血の気が引くのを感じた。よりによって、今をときめくお嬢様に、過去の淡い憧れを白日の下に晒されるとは。


「それは……その、昔のやつで……!」


「ふぅん……。やっぱり、こういう細くて、可愛らしい子が……タイプなのですね?」


 レナはベッドから身を乗り出し、じっと写真集と自分の体を交互に見比べ始めた。その瞳の奥には、好奇心だけではない、少しだけ複雑で鋭い光が宿っているように見えた。



掛け布団の中の独白

「え、あ……う、うん。まあ……可愛いと思うよ」


 カズヤは冷や汗をかきながら、正直に答えるしかなかった。嘘をついて誤魔化せるような空気ではなかったからだ。


「ふうん……そう、なのですか……」


 レナの表情が、あからさまに曇った。琥珀色の瞳がじわりと湿り、その写真集の少女を敵視するような、あるいは自分に自信を失ったような、複雑な不満の色が浮かぶ。


「髪型……綾瀬さんと同じだね。雰囲気も、こう……清楚で可愛らしいところが同じだし……」


 カズヤが慌てて共通点を挙げてフォローを入れると、レナの表情は劇的に変化した。

 にぱぁ、と花が咲いたような満面の笑みが浮かんだかと思うと、猛烈な羞恥心に襲われたのか、カズヤの掛け布団の中に勢いよく潜り込んでしまった。


「……ということは……ですよ。わたしのことも……お好みなのですか……? ひゃぁ……っ」


 布団の膨らみが、もこもこと震えている。くぐもった声は、期待と照れが混ざり合って震えていた。

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