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キモデブと、琥珀色の守護天使  作者: みみっく


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20話 予期せぬ再会と、重なる運命

「いや、流石にそれは悪いって……」


 申し訳なさにカズヤが声を落とすと、レナはそっとカズヤの顔を覗き込み、慈しむような笑みを浮かべた。


「命を助けてくれたお礼ですから。受け入れていただけると、わたし、とっても嬉しいのですが……」


「……そう言われると。ありがとな、本当に助かったよ」


「はい、どういたしまして。……ふふっ、ここが夜月くんのおうちなのですね♪」


 レナは楽しそうに部屋を見渡し、パタパタと小走りで窓辺へ向かった。

 数年間、ただ寝るためだけに過ごしてきた無機質な空間。けれど、そこにレナがいるだけで、冷えていた空気までもが明るく華やいで見えるから不思議だった。


(自分の家なのに、こんなにキラキラして見えるなんて……。美少女一人で、こうも変わるものなんだな)


 カズヤは、清潔になった自分の部屋の真ん中で、彼女の琥珀色の髪が夕陽を弾いて輝くのを、ただ眩しそうに見つめていた。



未定の未来と、現在の体温

「和風の古い家と、洋風の豪華な家……どちらも楽しめるようになったんだな」


 カズヤが冗談めかして言うと、レナの表情がぱあっと明るくなった。


「んふふ、わたしの家も『夜月くんの家』と言ってくれるんですね♪」


 彼女は弾むような声で答え、再び吸い寄せられるようにカズヤの元へ。その細い腕を彼の腰に回し、当然のように寄り添ってきた。


「でも……綾瀬さんも忙しくて、俺に付きっ切りという訳にはいかないだろ? その……彼氏とか、友達とか……。そういう付き合いもあるだろうし」


 カズヤの問いに、レナはきょとんとした顔をした後、少しだけ困ったように微笑んだ。


「え、彼氏ですか? いませんし、興味ありませんよ。お友達とは学校だけのお付き合いですし、放課後も習い事で遊ぶ暇なんてありませんでしたから。そもそも、彼氏なんていうものには……興味が持てなかったんですよぅ……」


 レナは恥ずかしそうに俯き、上目遣いでカズヤを盗み見た。桃色の唇がわずかに震え、彼女の頬は淡い桜色に染まっていく。


「じゃあ、その……高校を卒業した後は? 彼氏とか作ったりしないのか?」


「それは、その……未定ですよ。分かりません……。その時に考えますから、ご心配ないですよ。今のところは、現状で……とっても幸せになっていますから」


 レナが腰に回した腕に、ぎゅっと力が入る。

 それは、どこにも行かないでほしいという、密かな、けれど確かな主張のようだった。カズヤの胸に押し当てられた彼女の温もりは、言葉以上に「今、この瞬間」の真実を告げていた。


「……そっか。俺も……今は、すごく幸せだよ」


 カズヤが不器用にそう返すと、レナは嬉しそうにカズヤの肩に頭を預け、二人で静まり返った和室の夕暮れを眺めた。



予期せぬ再会と、重なる運命

「自分の部屋が気になるな……。一応、家の中でもあそこだけは綺麗に片づけていたんだけど」


 カズヤを支えていたレナの腕が、期待に弾けるようにピクンと反応した。


「夜月くんのお部屋ですか。ご一緒しても……?」


 レナの可愛らしい顔がカズヤを見上げ、琥珀色の瞳をキラキラと輝かせている。


(女の子に自分の部屋を見られるのは……流石に恥ずかしいな。でも、断る理由もないし……)


「別に……いいけど。面白い物なんて、何ひとつないぞ」


「えへへ。男の子の部屋を見るのは初めてなので……ドキドキしますね。どちらですか? 夜月くんの、お部屋ですかぁ……♪」


 レナの弾むような足取りに合わせ、カズヤは奥にある自室の扉を開けた。

 そこは、リビングの惨状が嘘のように整頓されていた。必要最低限の家具と、趣味の数少ない本。そして、クローゼットの端に、丁寧に掛けられた一着の制服があった。


 その時――。


「わぁ……っ!? その制服……わたしと、同じ高校ですよ!」


 レナが驚愕の声を上げ、カズヤの制服を指さして立ち尽くした。


「えっ……。綾瀬さんも、あの高校だったのか?」


「はい! わたし、今の今まで気づきませんでした……。夜月くん、わたしの先輩だったのですね……!」


 レナは感極まったように、吊るされた制服の袖をそっと撫でた。

 命の恩人として出会った少年が、実は同じ学び舎に通う身近な存在だった。その偶然という名の運命に、レナの頬はかつてないほど赤く染まり、その瞳にはさらに深い情熱が宿り始めていた。



約束の通学路

「え、そ、そうだったんだ……。俺は、ちょっと……今は不登校になっていてさ。年は同じだし、先輩じゃなくて同級生だと思うぞ……」


 カズヤは気まずそうに視線を外した。輝かしいお嬢様と同じ学び舎に籍を置いているという事実が、今の自分にはあまりに不釣り合いに思えたからだ。


「そうなんですか……。わたし、夜月くんと一緒に登校したいです……。お弁当を一緒に食べたり、放課後に図書室に寄ったり……」


 レナは夢見るような心地で、指を組んで胸元に当てた。


「……でも、俺は学校で……イジメを受けていて。一緒にいると、綾瀬さんにまで迷惑がかかるって……」

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