老後人生曼荼羅草紙 老いの果てに見えてくるものとは?
思えば遠くに来たもんだ
ふるさと離れて60年
生まれた家は跡形もない。
毎日が音もなく過ぎてゆく
あれから何年たったのだろう?
そう
わたしはもう70年以上もこの世に生かされている
そんなに時が知らないうちにすぎていたんだね?
70年振り返ればいろんなことがあったよなあ
ふるさと離れて東京の某大学に入学
初めての都会暮らしも新鮮だったよなあ
6条一間の下宿暮らしだったけど
心は新鮮だったよなあ
そうして大学生活が始まって友人もできて
淡い初恋もあって
気が付けばあっという間に
4年間が過ぎていたよなあ
指導教授からは
大学院へ誘われたが
貧乏家庭の私は就職を選び
とある県の会社へと合格して
その見ず知らずの県へ行ったのさ
そこでまさかの30年も務めることになるとは
その時は
予想しなかったけどね
いろいろあったよなあ
病気もしたし
手術もしたし
結婚もしたし
子供もできたし
建売住宅も買ったし
気が付けば30年はあっという間にすぎて
ええ?
もう定年ですか?
思えば遠くにまで来たもんだなあ
ふるさと離れて60年
父母もなくなり
生まれた家は跡形もない。
わたしは縁もゆかりもない
他県で30年仕事人生も終わり
年金暮らし
ああ
人生って何だったのだろう
思えばこんなに遠くに来たもんだ
ふるさと離れて60年
生まれた家は跡形もない。
定年後は日々が音もなく過ぎてゆき
気が付けば70歳を超えている老いた自分がそこにいるばかり
なにをするでもなく
日々が流れてゆくだけ
老後人生なんてこんなもんなんだろうなあ
70才を超えてこれからどうなるのか?
どうにもならないで
日々が過ぎてゆくばかり
俺の人生って何だったんだろう?
振り返ってみても
幻のようにしか見えては来ない
あと何年生きたらいいのだろう?
それは神のみぞ知る
わたしにわかるわけもない
でも命ある限り今日も又生きてゆく
それが命の使命だから。
うららな春を経て
異常な猛暑の夏に耐えて
秋が来て冬が来る
季節の巡りにうろたえることもなく
ただただ
順応して老後を生きるだけ
それが老後人生の正しい送り方だから
それしか他にないから
70歳過ぎて
やがて80才になっても
そうして生きてゆくだけ
それが老後人生だから。