表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/48

いきなりクライマックスから始める第一話

 ホールのような広い空間に、貴族の子女達をギャラリーとする人の輪。その外側には衛兵達、ホールに複数ある出入り口をメインに警戒しつつ、遠巻きにしている。そしてその中心に対峙するのは、二人と一人。

 その片方の内の二人は王子殿下と、これに守られる主人公である美少女だ。

 となれば、もう片方にいるのが悪役令嬢。

 そう、これは乙女ゲームの世界に異世界転生した悪役令嬢モノでおなじみの、断罪イベントなのだ。

 のっけから申し訳ないが、いきなりクライマックスだった。


 で、語り部たる私がどこにいるかというと、悪役令嬢側ではなく、かと言って主人公ちゃんなのではもちろんなくて、私が今いるのはそれを取り囲むギャラリーの中。一人のモブとして見守っているわけだ。

 こうして紹介しているわけだから、私がこの乙女ゲームの世界に転生した転生者だという事は、もはや説明するまでもないだろう。

 私の名前はシルヴィー・ルーヴォア。ルーヴォア公爵家の次女だ。

 転生前の名前は真地木真紀。……たしか。

 シルヴィーとして生まれる前の話でもう15年以上は前の話だし、しかもその間一回死んでるしで、もう記憶もオボロなのだ。が、まあそれは今更どうでもいい。

 今は現在の話をしよう。

 あそこの、悪役令嬢として立っているのが私の姉、イザベル・ルーヴォアだった。

 豪華なスタイル。絢爛な金髪。表情はまるで常時怒っているように見えて、眉間にシワが寄ってない時がないのではないかと思うほど険しいが、イザベルお姉様くらいお美しいと、むしろそのくらいの瑕疵(かし)があった方が返って魅力的に見えるくらい。

 対面しているのはロベール殿下とヒロインのジャンヌ・ブルイエ嬢。

 ロベール殿下は、まあ、フツーにイケメン。ひと目見れば誰でも「攻略対象かよ!」とツッコミたくなるような容貌だ。ゲームでの性格設定でも、腹黒イケメンと書いてあった。

 ジャンヌの方も、フツーに可愛い。整っているのだが、異性にモテそうというより、親しみやすくてお友達が多そう、という感じ。さすが乙女達のゲームの主人公だけあって、乙女達のコンプレックスを刺激しないよう、気配りされたキャラ設定だ。

 場所は「学院」と呼ばれる貴族専門の学校のホールの一つ。私たちはロベール殿下の招集に応じてここに呼び集められたのだ。殺人事件の犯人がわかった、という理由で。

 いや、待って。

 のっけから悪役令嬢モノの断罪イベントでしかも推理モノの犯人当てシーンはさすがに盛り過ぎだろう。とね。まあそう思うのもムリはない。実際、私もそう思う。


 でもまあとにかく、詳しい話はおいといて、とりあえずその殺人事件のあらましを少し説明するとしよう。

 ジャンヌのお友達の男爵令嬢、クリスチアーヌ・スカルポンがある日、水死体で見つかった。エッグ川の下流の方で護岸に引っかかっていた。死因は溺死ではなく、刺殺。大きなナイフで心臓を貫かれていた。殺された後、川に放り込まれたという事だ。


 で、犯人当てシーンに戻るんだけど。

 まあ、ていうか、探偵役のロベール殿下と悪役令嬢が対峙しているこの状況で、他の人が犯人とか、ぶっちゃけあり得ないよね。

 まだ何も言ってないけど、もう言っちゃってる感じ。

 つまり探偵は、悪役令嬢たるイザベルお姉様が犯人だと言うわけだ。

 そして、この異世界の元になる乙女ゲームをプレイした私は知っている。その推理は正しい。いや実際、推理なのか当て推量なのかは知らないけど。

 但しそれは、イザベルお姉様があの乙女ゲームの通りのキャラならば、の話だ。

 あの乙女ゲームでは、イザベルはこのシーンでは、居丈高な態度で

「これはなんの騒ぎかしら。探偵ごっこは結構ですけど、ワタクシも暇ではありませんの。亡くなられたご令嬢にはお気の毒と思いますが、そのご令嬢と面識のないワタクシたちまで招集する必要はなかったのではないかしら?」

 だの

「ふん、馬鹿らしい。どこにそんな証拠がありまして」

 だの

「その、スカルポン男爵令嬢ですか。残念ながらワタクシ、その方と面識がありませんの。ですから、そもそも動機の発生しようがないでしょうに。一体全体、どうしてそんな荒唐無稽な妄想に取り憑かれてしまわれたのかしら」

 だのと、口数多く、犯人が言いそうな事を口走っていた。

 が、今、私のイザベルお姉様はただ、黙然と佇んでいるだけだった。いつもの通り、口を厳しく引き結び、目つき鋭くロベール殿下を睨みつけ、胸前に腕組みをして。

 ロベール殿下の方は、そんなイザベルお姉様の鋭い視線に耐えかねるように、一瞬目線をそらし気味になったが、気を持ち直すようにあえてイザベルお姉様を睨み返す表情となって

「みな、忙しい所すまない。件の事件の犯人がわかったので、証拠隠滅や逃亡の機会を与えてはまずいと考え、急ぎ、このような形となった」

 と切り出した。

 それを聞いて、イザベルお姉様は、ゆっくりと腕組みをとき

「よかろう」

 と言うと、半身の姿勢になって右腕を突き出し、ロベール殿下に向かってグッと拳を握った。

「かかってこい」

 一瞬の沈黙の後、ロベール殿下が慌てて言う。

「いやいやいや、その反応はおかしいだろう!」

 そうだね、おかしいね。心の中でウンウンとうなずく私。

 だがしかし、この世界に生まれ落ちて15年。イザベルお姉様の生き様を見てきた私には、こうとしか思えない。

 でも、イザベルお姉様だからなあ。

 と。

「と、とにかく、まずは、私の話をきけ。弁明はその後に聞いてやる」

 もう、こうなると、探偵役も去勢を張っているようにしか見えない。

 それに対するイザベルお姉様の答えは、こうだ。

「ふん、御託はいい。要するに俺を殺したいのだろう? かかってこないならこっちからいくぞ!」

バンッ!

「まっ……!」

「う゛がっ!!」

 一瞬の出来事で、イザベルお姉様以外誰も動けなかった。

 ちなみに、「こっちからいくぞ」と言っているが、その前の「かかってこないなら」の「か」の部分で既にイザベルお姉様の風の魔法が発動していた。バンッ!という爆発するような音がそれだ。

 理屈はよく分からないが、風の魔法を操って爆発的な突風を引き起こし、それで一気に前進する。イザベルお姉様がかつて教えてくれた事から私がイメージしたのは、弾丸女だ。

 たぶんだけど、ロベール殿下が「待て」と言おうとして「まっ」と口にした時には、ロベール殿下の横を既に通り過ぎていたんじゃないかと思う。

 とすると、イザベルお姉様が「こっちからいくぞ」という前に、ジャンヌは既に殴り倒されていたことになる。

 なんて恐ろしい有言実行。言う前に実行されたら、無駄な抵抗すら、する暇がない。

 イザベルお姉様の頭の回転の速さに、身体がついていってない弊害ではないかと思われる。口はまだ「俺を殺したいのだろう?」までしか言えてないのに、イザベルお姉様の頭の中では、おそらく既に「こっちからいくぞ」まで言った認識になっているのだ。

「ひっ…! ひっ…!」

 ロベール殿下が恐怖に顔を引きつらせて何か言おうとしている。「ひっとらえろ」とでも言いたいのだろうか。いずれにしろ、イザベルお姉様の流れるようなシームレスな動作でロベール殿下も殴り倒されたので、殿下が何を言いたかったのかは、もう確かめるすべがなかった。

「こ、拘束しろ!」

 という声が人の輪の外側から響いた。王子殿下が殴り倒されたとみて、衛兵の誰かが上げた声だろう。状況が一斉に動き出す。

 飛びかかった衛兵に押し倒されたイザベルお姉様の方から「きゃっ」という可愛い悲鳴が上がった。にも関わらず、次々と衛兵がその上に飛びかかっていく。

「ひっ」「きゅうっ」「ぐえ」「げぶ」

だんだん悲鳴が汚くなっていくのが、そのままイザベルお姉様の逼迫した状況を表してるようで、私は慌てて飛び出した。


実は結末を考えずに書き出しました。続きが思いつかなくなったら、ごめんなさい

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ