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第二話 屋敷

 

「とりあえず、馬車に乗って」


 ミルト様が馬車に触りながら言った。


「あ、はい」


 そして私は馬車に乗る。

 足枷があるから乗るのに手こずっていると、彼、ミルト様が手を貸してくれた。もしかしたらこの人はいい人なのかもしれない。


 そして、馬車の中で、


「とりあえず、これ」

「それは……?」

「鍵。これで枷を外してあげるよ」

「え? いいんですか?」

「ああ、動きにくいだろ」


 そう言って枷を外してくれた。首枷だけは奴隷の証として外してはくれなかったけど。

 馬車に乗りにくかったのを見ていたってことなのかな?


 そして手足が数日ぶりに自由になった。正直嬉しい。


「どういう経緯で奴隷になったんだ?」

「それはその」


 正直恥ずかしい経緯だ。でも、ご主人様の命令には従わないといけない。

 私はゆっくりと説明した。


「なるほど、そんなことが」


 そう言ってミルト様は手で椅子を叩いた。


「その、メルクというやつは人間の屑じゃないか」


 なんか、憤慨してくれている。

 私なんかのために。


「その、ありがとうございます」

「いや、当然の怒りだよ。俺が、そんな男のことを忘れさせてあげる」

「……はい」


 そして、馬車は、すぐさま屋敷へとたどり着いた。


「ここが……」


 かなり大きい屋敷だ。庭も十分なスペースがあり。かなり格式のある家だろう。


「ああ、お前が今から住む屋敷だ。とりあえず、案内するよ」

「あ、はい。よろしくお願いします。ミルト様」

「いえいえ、こちらこそよろしく。メア」


 そして中に入ると、外見通りの豪華な屋敷だった。

 そしてとある部屋の前でミルト様が立ち止まり、


「君の部屋はここだ」


 と言われた。その部屋はかなり大きく、大きなベッドに中くらいのテーブル、さらには椅子が二つ置いてある。


 しかもベッドは硬そうないかにも奴隷に与えられるようなベッドではなく、かなり柔らかそうなベッドだった。


「えっと、ここなのですか?」


 だって、奴隷の身分の私にはふさわしくない豪華な部屋だし。

 私には見合わない。


「ああ、不満か?」

「不満なんてめっそうもない。むしろ私には豪華すぎるというか……」


 何しろ、もともと私が住んでいた家よりもはるかにいい部屋なのだから。

 メルクとの生活ではあまり豊かではなかった、そのため、私自身に使うお金を節約していたのだ。


「安心しろ。お前の身分を奴隷として扱うつもりはない。その首枷もあくまでも逃走防止のためだけのものだ。俺はお前を花嫁として迎えたいと思っているのだからな」

「……は?」


 は、花嫁? なんで? 


「そう驚くな、お前がかわいかったから花嫁に選んだ。それだけだ」

「いや、そうじゃなくて、何で奴隷を花嫁に?」


 別に奴隷と平民が結婚してはいけないなんて決まりはない。

 ただ、なぜ奴隷を選ぶんだろうか。


 こんな屋敷を立てられるほど財力がある人なら花嫁位吐き捨てられるほどにはいるだろうのに。


「悪いか? 俺はモテないんだ」

「モテない?」

「ああ、俺の目を見てみろ」

「ミルト様の目ですか?」


 黒色の瞳。だが、その眼光は鋭く、見る物を恐れさせる力がある、と私はふと思った。

 そして髪の毛も黒だ。


 黒眼に黒髪、それは良くない不吉なものをイメージさせる力がある。


「俺は異質なんだ。親も普通の目と髪の色をしている。なのに、俺だけこんなのなんだ。おかげで友達も恋人もいないんだ。それに嫌われたしね」


 明らかに嫌なことが多々あったんだろうなと、思わせるものだ。


「だけど、それは第一印象を決める物……だけな気がします。だから気にしなくともいいと思います」


 それはあくまでも私の意見ではあるが、性格を見ると、そこまで恐れられるようなきつい性格をしているとは思えない。

 それに見た目だけで内面を決定つけられるのは明らかにおかしい。

 見た目の中身は関係ないのに。


 何しろ、私は奴隷なのだ。


 もし、ミルト様が冷たい性格の持ち主なら、私を無理やりベッドに押し倒して、無理やり犯すということも可能だ。

 それに、モテないとは言っても、彼の財力なら何とかしてモテることは可能なはずだ。


 それをしないということは、そういう事なのだろうか。


 奥手だから、人とあまりか関わっていないのだろう。

 過去のトラウマがそうさせたのか。

 私はこの人を哀れだと思う。


 たしかに黒は不吉なイメージがあるが、それもあくまで迷信の域を出ない。


 この人はもっと幸福な人生を歩んでいいはずなのに。


「私は……ミルト様のことを、嫌ってはいません」

「そうか。ありがとう」


 そう言う彼は、少し嬉しそうで、今まで苦労してきたんだなと言うのが伝わってくる。


「じゃあ、今日は疲れただろう。もうご飯にするか」

「ええ、そうですね」


 外の天気は薄暗くなりつつあった。太陽が沈んでいっているのだろう。

 おなかの空き具合も、うん。


 当然牢の中ではあまり食事なんてなかったのだから、お腹は空いているに決まっている。


 奴隷になってしまった私が、食事を楽しみにしている。

 これは本当に信じられないことだなと本当に思う。

 本当なら私は今頃慰安のために働かされていてもおかしくなかったというのに。



 そして連れられた場所は、大きなテーブルのある大広間だった。

 なるほど、ここが食事処か。

 並んだ料理はどれもおいしそうに見える。


「ほら、これが君の料理だ」


 そう、見せられた料理は、どれも素晴らしいくらい美味しそうなものだった。


 奴隷の身分の私が食べていい物とは思えないくらい、むしろ奴隷になる前の時の日々の食事よりもはるかに質のいい食事だ。


 こんなものを私が食べていいのかと、少し不安にもなってしまう。


 そんな様子を心配したのだろうか、ミルト様が「さ、遠慮しないで食べてくれよ。冷めるとせっかくの料理が台無しだ」と言ってくれた。


 その言葉に甘えて一口スープを飲む。美味しい。

 しっかりとした味で、今までで一番のものかもしれない。

 いや絶対に一番の味だ。


「美味しいならよかった」

「え?」


 どうやら美味しいという感情が顔から零れ出していてしまっていたらしい。少しだけ恥ずかしくなってしまう。


「大丈夫だ。俺はそんなうれしそうな君を見るのが楽しいから」

「……そうですか」


 とはいえ、こんなに見つめられてしまったら、少し気まずくなるところではあるけども。

 とはいえ、食事自体が美味しいからあまり気にはならないところだ。


 そして、食事が終わった。そしたらすぐにお風呂に入ることになった。本当に至れり尽くせりで逆に心配になる。


 もしかしてミルト様は愉快犯で、私を見て楽しんでいるのではないのか。これから私を裏切って、私の絶望に満ちた顔を見ようとしているのではないか。

 そんな良くない想像をしてしまう。


 だが、こんな想像をしてたらミルト様に申し訳ない。そう思って、やめることにした。

 それにその可能性はいざその時になった後、考えればいい。そう思いながら広いお風呂に浸かった。

 お風呂の中でも、混浴になるんじゃないかと思ったけど、そんな気配もなく。


 そして夜。


 正直言って、少し怖い。もしかしたらこのタイミングで襲ってくるかもしれないと。

 よく考えたら、奴隷の私は汚かった。


 だからこそ、お風呂に浸かって、綺麗になってから襲おうなんて考えていてもおかしくない。


 今も私の首枷はつながっている。

 とはいっても、だいぶ長く設定してあるおかげで、不自由さは感じないのだが。


 そして、警戒すること三十分。誰も入ってこない。

 部屋に入る前にメイドの少女が、ではごゆっくりと言ってたけど、本当に何もないんだ。


 なんだか、緊張してしまった。

 ただほど高いものはないともいうが、本当に無償で、優しかっただけなんだ。


 疑いすぎてたのかも。そう思い、ゆっくりと目を閉じて、脳を休めた。




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