第四章
第四章
四日目、試験日。
この日も曇り空だった。
Sは前日言われた通り三十分前に行き、まず筆記試験を受けた。
出るところはほぼ教えられていて選択式だったため、難しいことはなく早々に終わった。
Sは実技に移った。
今日の担当はHではなくYと言うベテラン女性だった。
YはSに「試験と言うと固くなっちやうから、レッスンの中で五級が出来ているか見るわね」と言った。
Yは綱の握り方から鐙の調整のしかたなど、改めて一通り話してくれた。
初日に聞いたであろうことも、Sはいくつか忘れていた。
YはSが緊張しないように、常に話しかけてくれた。
その中で軽速歩をやっていると、試験のことも忘れ、昨夜、動画で見た自分の欠点に注意することが出来た。
立つことに重きを置きすぎて、立った時に頭が残り気味になる。
Sはそれに気がつくと、積極的に頭を前に出して立ち上がった。
今まで以上に立ち上がりやすい。
馬体の上下にタイミングが合う。
鐙から体を押し上げる動きを感じる。
馬に合った姿勢、動作は、良い循環をもたらした。
YはSに曲がり方を教え、続いて軽速歩をしながら曲がっていく方法を教えた。
それは試験外のことだったが、Sが実技試験を合格したことを意味していた。
そして、レッスン兼試験は終わった。
四回お世話になった馬を引いて、厩舎前に帰る。
馬を柱につなぎとめ「ありがとう」と首元をなでた時、Sは気が付いた。
馬の目は、「終わった、終わった。疲れた」と言っていた。
人間的な、まつげの長い大きな目だった。
筆記も合わせ、Sは乗馬五級ライセンスに無事合格した。
四日間の、真剣な馬乗りは終わった。
まずは、これを以て馬乗記の筆を置く。




