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ETERNAL PROMISE【The Advance】  作者: 小林汐希
4章 あしたいろのレシピ
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[4章2話-2]:珠実園の救世主となった彼女





「健ちゃん、この上下の組み合わせどうかなぁ?」


 店内を見て回る中で、茜音が見つけたのはショーウィンドウに展示されていたサンプルだった。


 大きく胸元まで緩やかなカーブに開いた水色で薄手のカットソーと、その上に重ねるニットカーディガンのセット。


 白い膝丈のスカートはウエストに近い部分に何本ものタックが入っていて、その下はフレアスカートのように軽くふわっとしているデザイン。春先から初夏にかけての着こなしにはぴったりの装いだ。


「もう少し暖かくなったら普通に着られるかもね。試着してみたら?」


「そうだねぇ」


「あら、いらっしゃいませ」


 そんな二人を見かけて、店員が話しかけてきた。


「あ、こんにちはぁ。あの、あれ試着できますかぁ?」


 何度も来ているだけあって、店員とも顔なじみらしく、茜音は展示を指さして聞いている。


「さすが、よく気がつきましたね。これ、昨日入った春の新作の先行品なのでお安いんですよ。もしサイズが合えばお得かもしれないですね」


 彼女はそういってショーウィンドーから取り出して茜音に渡してくれた。


「うん! じゃぁ行ってきます~」


 荷物を健に持たせて、試着室に持ち込む。



「茜音ちゃんの力は凄かったよなぁ……」


 珠実園の子たちの衣料品の購入に同行したりもする健だけれど、限られた予算の中で枚数を買わなければならない現実では、茜音と同じようにお洒落をさせてあげたくても限度がある。


 特に小学高学年以上になると、男子はともかく、女の子らしくしたいという口に出来ない思いがあることも分かっているから、なんとかしたいと思っていた。



 昨年の秋口にそのことを茜音に話したところ、サイズが合わなくなって着られなくなってしまったものを含め、佳織、菜都実からも「みんなが気に入ってくれるなら、遠慮なく使って」とダンボール十数箱にもギッシリ詰まった衣類を提供してくれた。


 突然届いたあまりの量にその出所を聞くと、あの旅の中で知り合ったメンバーにも男女問わずに声をかけてくれていたとのこと。それを一つ一つ点検し、洗濯や染み抜きまでしたうえで男女別やサイズごとの分別、冬着だけでなく来年まで保管の夏物には防虫剤などを入れて用意してくれたのだとわかった。


 特に高知の千夏(ちなつ)、横浜の大竹姉妹の妹、(もえ)は茜音に近い嗜好の服も多かったことから、男子向けだけでなく、女子向けのバリエーションを一気に増やすことができたのが大きく、珠実園の周囲の住民からも、どこか大きなスポンサーが現れたのかと冗談混じりで言われるほどの変化だった。


 提供してくれたものはサイズや好みなどで振り分けたけれど、特に先の三人が提供したものは争奪戦で、サイズごとに公平にくじ引きにしたほどで、まだ十分なストックもある。茜音がおしゃれ着の洗濯の方法を教えてくれただけでなく、萌と一緒になって小さな補修もしてくれるようになったから、一着を使える期間も飛躍的に延びた。


 服だけでなく靴なども程度のいいものだけでなく、補修されたものまで提供されたことから、その分の予算を学用品などの必要な部分に回すことが出来る。


「そっかぁ、どんどん普段使いに着てくれていいんだけどねぇ。まだ出せるものはあると思うよ」


 そのことを知った茜音は、珠実園での手伝いの時に笑って言った。


 そのときになって分かったことだったが、茜音の服というのは数の多さもさることながら、その質も良くてリユースと言ってもまだ十分に使えるものがほとんどだった。


 しかし、彼女とて費用が無尽蔵にあるわけではなく、自身のアルバイトの給料の中からの貯金を使っている。


 その一方で、欲しいものがなかったり、お金が足りないときは生地を買って萌と一緒に自分で仕立てると言うのが彼女のレパートリーの多さの秘訣らしい。


『今年は時間がなかったから、1シーズンでダメにしてもいいから、遅くなってごめん!』


 そう言って12月に渡された子どもたち全員そろいの冬場のマフラーは、萌と茜音の合作だという。両者とも推薦入学試験が終わった後に、手芸用の編み機を持っていた萌と、ミシンを持ち込んだ萌が茜音の家に泊まり込んで仕上げた。各自のネームまで入っているその高速技には職員みんなで舌を巻いたものだ。




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