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ヒロインのハッピーエンドを確認しました。(1)

 モニカとの出会いを果たした日から三ヶ月後。私は彼女とランセルの結婚パーティーに、招待されていた。

 モニカとランセルの結婚パーティーである。モニカとランセルの。大事なことなので二回言いました。

 確かにね、モニカとリヒト王子の仲が進展していないのは知っていたよ。だってリヒト王子は相変わらず我が家にちょくちょくお茶に来るし。私個人でもあれから五回は一緒に釣りに行ったしね?

 でも、待って。これは早い、展開が早い。結婚ってゲームでは卒業してからだったよね!?


「堅物は腹が決まれば行動が早いよね」


 私の隣でリヒト王子が、私と似たような感想を漏らす。彼の場合は、モニカではなくランセルに対するそれであったが。

 にしても、しれっとこの場に溶け込んでいるよね、この王子。通常、王族が要職でもない臣下の祝い事に出席することはないわけで。レアケースのはずが、誰一人として触れないのは何故なの。まあね、私から見ても「違和感仕事しろ」な状態ですがね。

 この結婚パーティーの前にした結婚式にもいたどころか、実はリヒト王子は婚約パーティーにも出席していた。そのときは確か、「学生として先輩のために駆けつけた」という体でいたはずだ。今回はどんな理由を用意してきたのか。そのうち子供が生まれたら、またそれっぽい理由を用意して見に来るんでしょ? 知ってる。

 そんな確信を持って、私はリヒト王子の横顔を見上げた。


「!?」


 途端、こちらを見ていた彼の青紫色の瞳と思いがけずかち合い、ドキリとする。

 これまでもこうして目が合った機会はあったはずなのに、まるで初めてそうなったかのように心臓が跳ねた。


(まあ……恋愛対象として見るのは、実際初めてよね)


 特別な仲になりたいと思ったなら、その相手が特別に見えてくるのは必至。頭ではわかっているけれど、ついこの間までは気心知れた近所の男の子みたいな感覚だったというのに。この急な心境の変化……余計に甘酸っぱい。

 加えて前世で社会人まで体験したはずが、若干十四歳と一分のズレもなく恋心が共鳴しているという事実が痛い。前世の私の恋愛は中学生レベルだったのか、あいたたた……。


「あの二人、まるで物語の一枚絵のようだね」


 私の心中を知ってか知らずか、リヒト王子が普段通りに私に声を掛けてくる。

 ――いや知らずではないわ、知ってるわ。ちょっとニヤッとしてるし。

 さすがに私の悶々していた内容まではわからないだろうが、熱っぽい視線を送ってしまったのは気付いたらしい。


「そうですわね」


 私が彼に対し「あなたのことなんてお見通し」と思うように、彼の方もそうなのかもしれない。物心ついた頃には婚約者候補だった、幼馴染みの成せる技か。

 しかし、そんな関係は改めて思えば気恥ずかしい。私はリヒト王子から視線を外し、モニカたちに目を戻した。

 ――『一枚絵』。

 彼が口にした例え話の単語に、私はつい例えでない方の『一枚絵』を思い浮かべた。即ち、ゲーム画面の一枚絵――ランセルルートのエンディングを。


(懐かしい……)


 今目の前に起こっていることなのにそう感じてしまう、奇妙な感覚。

 その感覚に引き寄せられるままに、私はフレームの向こう側にいた彼らの姿を思い返した。

 そしてその記憶はそのまま、あの日の私に繋がる――


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