第二章 18 | 『四月一日』⑤
◇ narrator / 来次 彩土
───────────
「──協力って?」
『あぁ、どうもまだ良い線に入れてないらしくてね。
このまま俺が活州さんと話しても丸く収まらないみたいなんだよ』
「いや知らないよ。そもそも僕もう空の上に居るし、これ以上できる事なんて無いだろ?」
『……もし協力してくれるなら、1つ良いことを教えてやるぜ?』
──良いことか、良いことね。
ここまで来れたのは清光の助言のおかげだ。
聞いて損は無い気がする。
「分かった、協力する。僕は何をしたらいいんだ?」
『ありがとう、助かるよ。
君、さっき投げやりにコピペ送っただろ?
明松君がラインで君に送った事を、一度しっかりと見てみてくれ。
それでどうにかなりそうなんだ』
……しっかりと見てみてくれ?
どうしてそれを先に言っておかなかったんだ、二度手間になってしまっているじゃないか。
それに、なんとかなりそうだと?
その言葉感も不確的な気がする。
まだどうなるのか正確には分かって無いって感じの言い方だ。
終業式の時も色々と予定と違ったと言っていたし、清光の予知って、やっぱり正確性に難ありって感じなのか……?
「……見るだけでいいのか? そんなんで協力した事になるのか? どういう事だよ」
「言ったろ、俺の予知は絶対じゃないんだよ。
全く視えないモノもあるし、『きっかけ』と『結果』だけを予知して、その繋がりまでは拾えないパターンも多い。
今回はそれなんだ。とりあえず君が真面目に見てくれなければ始まらないらしい」
……ねるほど。
僕が知らない予知のルールというか、法則性のようなモノがあるという事か?
確かにさっき、あまり確認せずにそのままコピペして送ったが、僕が内容をしっかりと見る事で何か未来に変化が訪れるという事か。
待てよ? それはつまり、見たあと僕が何かアクションを起こさなければいけないという事になるのか……?
「──分かった。この通話が切れたらもう一度見てみる。
……悪いな、さっきは投げやりな感じで済ませちゃって」
『別にいいさ、君からすればいい迷惑だっただろうし。
それにあんな形で、反則スレスレで選定試練を仕掛けた以上、君が俺を良く思わないのは当然だと思うからな。
……まぁ、だとしても即ブロックはエグ過ぎると思うけど』
っべーよ、ブロックしたのまだ根に持ってるっぽいよ…
ほんと自分の動向を掴まれてるの恐ろしいな。
ほんとやめてほしいんだけど……
『……今、朝に君と話した自販機の近くに居る。君が真剣に見る未来が確定したら、活州さんと話して来るよ』
「──そうか、まぁ頑張れよ」
僕としても2人には仲直りしてほしい。
ここまで関わった以上、やっぱり復縁できず、何の成果も得られませんでしたとなっては寝覚めも悪いというモノだ。
『……あぁそうだ、言い忘れてた。
さっきの「1つ良いことを教えてやる」って話だけど、実を言うと聞いてもムダになる可能性の方が高い。
相当に低い確率なんだ。だから頭の片隅に置いとくくらいのつもりで聞いてほしいんだけど──』
「あぁそれな、僕も忘れてた。なんだよ?」
『……いいか? もしもこれからヤバいと思うような事があったら、
"なにも聞こえてないフリ"をするんだ。
"言っている意味が分からない"って反応はダメだ。
そしてそれを悟られるなよ? いいな?』
「──それどういう意味? もっと分かりやすく言ってくれない?」
頭の片隅に置いとけとか言う割には内容が物騒過ぎないか?
しかも警告の内容がいつも通り抽象的過ぎる。
どうしてこいつはいつもこんな言い方をするんだ……
『……悪いけど、あまり詳しく話し過ぎると、下手すれば後から俺が誤解される可能性があるんだ。
──俺は君と違って「詭弁の神」側に付くつもりは無いからな。今はまだ、あくまで中立でいたいのさ』
「お前、本当にどこまで視て知ってる? お前の予知怖すぎるんだが?
あと誤解があるっぽいけど、僕も明確にヘルメス側に着いてる訳じゃないぞ。どっちかと言うとお互い利用し合おうって関係で──」
『──なるほど、少し予想外だな。
今の君の反応で大体分かった、そういう線に入ってる訳か。
……だとすれば気を付けろよ? さっきの「良いこと」が必要になる可能性は格段に高くなったぜ』
少し予想外? 僕がヘルメースから『詭弁』を継いだ事や、取り引きをして空の上に来た事を予知していた訳じゃないのか?
……いや違うか。今の言い方は──、
「清光、お前もしかして今、僕にカマを掛けたのか?
……本当にムカつく奴だな」
『何度も言ってるだろ、俺の予知は絶対じゃないんだ。
聞き出した方が速いし正確なのさ。
それに何より君に何かあると困るんだよ、だから君の正確な状況を知っておきたかった。
……これも前に言っただろ?「俺のモノになるまでは、君にその左手を持っててもらわないと困る」って』
電話越しに聞こえる清光の声からは、どこか"してやったり"というか、"ざまぁみろ"的なニュアンスが感じられた。
くっそぉ、色々助けてもらっててあれだけど、やっぱり好きになれない。
「──はぁ、お前とはやっぱり友達になれそうにないな。
でもまぁ忠告ありがとう。さっき言われた事、覚えとくよ」
僕は一応お礼を言ってから、清光との通話を切った。
だいぶ迷ったけれど、結局『アキラ』のブロックは解除した。
読んでくださってる方ありがとうございます (*'-'*)
ブクマや評価頂けると五億倍がんばれるので、よろしければお願いしますmm