第二章 12 | 候補者の計りごと ② / セカンドネゴシエーション ①
◇ narrator / 来次 彩土
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真弾学園 高等部 放送室。
貴方が言ったんだぞヘルメース。
僕には次代のヘルメースになれる適性があるって。
他人の嘘を見抜けないような奴に、バレない嘘を吐ける筈も無いって。
……つまり、逆を言えば僕にはできるって事だろ?
いや、正確には少し才能があるってくらいの事かもしれないけど。
だったらやってやるよ。
貴方が絶対に嫌がるようなオオボラをかましてやる。
『──おぉっと待ちな!! 私の前でその名前を出すな、見つかってしまうッ……!!』
『私は最高神じゃない。最高神は先ほどお前が名前を呼ぼうとした神だ』
『──そして私が動く以上、お前には必ず最高神ではなくヘルメースを継がせる。そうなるように私が誘導するからな』
当の神様にはいくらバレバレの嘘だろうと、それを聞かれたら困る相手が居るのを知っている。
ならば貴方は僕を止めに来ざるを得ない筈だ。
「あーテステス。いきなりお耳汚しですみません。
今から最高神に盛大な反逆を企ててる極悪非道で悪辣な神様、
ヘルメスについて話そうと思います」
さぁ どうなる。
貴方は嫌だろう? これから先、あることないこと言われるのは。
さぁ来い。
こい! コイコイ!! 来い来い来い!
いやほんとマジで来てお願い……
よろしくお願いしまぁあああああああぁす!!!!
そう思っていた矢先───、
「来次彩土ィいイイイイイイイイイッ───!!!!!!
キサマぁあああああああああああぁぁああああッ!!!!!!」
放送室のドアが開け放たれ、神様が飛び込んで来た。
よし、これでとりあえず一つ目の賭けに勝つ事ができた。
「──来てくれると思ってましたよ。神様」
◇
◇
◇
「貴様ァ! まじふざけんなよ貴様!!
なんて事を、このッ、……貴様ァッ!!!!」
「ボキャブラリー少な過ぎません? 『雄弁』とか『詭弁』とか『伝令』とか司ってるんじゃないの? あ、それから確かもう1つ──」
「──るっさいわ! お前なにやらかしたか分かってるのか!? なぁ! 分かってんのかぁッ……!?」
ここまで焦るとは思ってなかった。語彙も凄い事になっている。
ていうか先にやらかしてくれたのはそっちなのに
貴様貴様言い過ぎじゃない?
流石に僕も いい加減にしろ! と言いたくなるけれど
貴様ぁ! 反撃かぁああ!! とか言いながら理不尽に怒られても怖いのでやめておく。
「……貴方だって随分とやらかしてくれたじゃないか。
今の僕の状況は貴方の『計略』ってやつのせいなんだろう? ……今すぐ僕を空の上に送れよ」
「……ふん、気付いたか。
あの時言っただろう?『お前の都合など知ったことか』と。
それにこうも言ったよな?『今すぐという訳ではないし、今日のところは引き下がってやる』と。
嘘ではないからと深く考えず、思考を止めたお前の考えが甘かったのだ。そもそも──」
「──ゼウs」
「貴様ァ! 人の話は最後まで聞け!! 私も流石にそろそろ怒るぞこらぁッ……!!」
「貴方 人じゃなくて神様だろうが!
それにこっちはもうとっくに怒ってんだよ!! 今すぐ僕を上に送れ!!!! 次は言い切るぞっ!!!!」
取り合っていてはダメだ。
この機を逃しては次に会うことができるかも分からない。
なりふり構わず問答無用で、使える手は使わなくては。
「……背に腹は変えられん。言いたいならば言えばいい。
お前をこの試験に通過させるよりはマシだ」
そういうヘルメースの表情は真剣だった。
そしてその言葉にも嘘は無い。これはマズい。
僕の試験通過を阻止する方が大事だというのなら、僕にはこれ以上打てる手はない。
それにこの神様にも考えがある筈だ。
なら先にそれを聞き出すべきか……?
「……理由を聞かせてください。
僕はまだ貴方を良い神様だと思ってます。
どうして僕の邪魔を? 僕を通過させないようにする理由はなんですか…?」
「ふむ理由か、理由ね。……いいだろう話してやる」
言うと、ヘルメースは僕の方を向き、マイクから離れろと首を振ってジェスチャーをしてきた。
最初の一言を放送してから当然マイクのスイッチはOFFにしてあり、ヘルメースもそれは分かっている筈。
それなのに念を押すという事は、これは本当に聞かれるとマズい話だと言うことか……?
「……来次彩土、お前も既に気付いてるんだろう?
この試験に通過できなかったとしても、願能も記憶も消えはしない。
そこは間違いなく嘘だ。更に言えば、別に通過出来ずとも神様になる為の授業は受けられる。
……ならばどうしてそんな架空の説明をした上で、この試験が行われていると思う?」
やっぱりそこは嘘なのか……
でも急に言われても、僕には──
「この試験には別に明確な目的があるということだ。
それが私にとっては都合が良かった。
だからお前を脱落させようとしたのだ」
「──目的って?」
僕はヘルメースの言葉を左手で把握しながら、短く続きを促す。
「この試験の目的は生徒の中の危険分子を探し出す事にある。
そして私は試験に脱落し危険分子と認定された生徒を受け持つ事になっている、2年G組の担当教師だ。
……ここまで言えば分かるだろう?」
──Gだと? いや、そんなクラスは告知用紙に無かった。
そうか。僕は最初、願能と記憶が消えればEかFの未発言者のクラスに振り分けられると思っていた。
しかしそれが嘘で、どちらも消えないというのならそんな筈はないのだ。
脱落者を囲う為の受け皿としてGクラスが存在するというのなら。
ということは──
「──ヘルメス。じゃあ、貴方の目的っていうのは……」
「そうだ、お前には私の配下に入ってもらう予定だった。
だが仕方ない。穏便に行きたかったが、こうなった以上 正面から直接交渉といこう。
──私の下で次のヘルメスとなるべく学ぶがいい、来次彩土」
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