第二章 8 | 低燃費少女 ⑤ / 神様の計りごと ②
◇ narrator / 明松 練
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「俺に恋愛相談ってお前ほんきかよ……。
でなに? とりあえず清光と仲直りしたいの?
……すればぁー?」
「他人事だと思って適当に言うな!!
あんたには選定試練の時にバレてたみたいだし、ちょうどいいやって……」
「そもそも何で俺に相談すんの?
誰か友達に聞いてもらえよ……」
「──友達なんて長年の保健室登校と私の性格キツいのが尾を引いて1人も居ませんけど……?」
「──えぇ、なんかごめんね……?」
うーん、コイツ思ったよりデリケートだぞぉ…?
決めた、これから活州の事は全力で腫れ物扱いしていこう!
マジで慎重に言葉を選ばないとマズい気がする!!
「てか俺から言える事とか無いぞ? 何で喧嘩してんのか知らねえけどどっちかがサクッと謝ればいいんじゃないの?」
「それはそうなんだけど、私からは絶対謝りたくないのよね…。
それに清光が第一声で謝罪しない限りはマトモに口を効かないって決めてるのよ……」
「──お前ら一体なにがあったの?」
活州の言葉に重いモノを感じて、俺は続きを促した。
ここまで聞いた以上もう乗りかかった船だ。
活州は少し戸惑った表情を浮かべたが、直後 下を向きゆっくりと話し始めた。
「──あの終業式の日、あんた達と別れて2人で帰ってる時にね、私もっかい謝ったのよ。
『勝手に動いて、本当にごめんなさい』って、そしたらアイツなんて言ったと思う?
私の顔も見ずに『期待した俺が馬鹿だったんだ』って……」
彼女と同じ『従者』だから分かることもある。
『従者』にとって『候補者』の言葉というのはとても重い。
キスキに同じように言われれば俺はどうするだろう?
「今後は期待してくれないのか?」なんて思い詰めてしまうかもしれない。
「──なるほどそういう事か。
……それはへこむな」
あのゲームで活州は清光の指示と違う動きをし、その結果二人の合流が遅れた。
あの時間的余裕があったからこそ俺達は勝つことができたのだ。
清光はそれを許せず、活州を咎めてしまったと。
……てかそれって俺がそうなるように活州を煽りまくったからなんだよなぁ…
っべーよ責任感じちゃうよぉ…
俺も勝つ為とはいえ、だいぶ色々と言い過ぎた自覚はあった。
……だとしても、それでも、俺は後悔しない。
それが俺の『従者』としての役割なのだから。
そして俺はそれに誇りを持っているのだから。
ならばちゃんとしないと、これは俺の責任だ。
「お前らの仲直りに協力させてくれ。
あの時の俺の行動を謝りはしないが、変わりにできる限り手伝う。それでどうにかお前の失敗も帳消しにして──」
「──はぁ"!? あんたも私のミスだとか言うの?
そもそも私があんな判断をしたのは、清光に飲まされた『薬』のせいで正常な判断ができなくなってたからだからっ!
悪いのは徹頭徹尾あいつなのよ、清光の自業自得ッ……!!」
あぁ~ビックリしたぁ……
ほんとなにコイツ、俺ちょっと良いこと言ってたのに急に大声出すしめっちゃ焦ったんだけどぉ……
マジでどこに地雷があんのか分かんねぇ……
ていうか今なんて言った? 薬?
そういえば確か、清光は事前にサポート組織から何か薬を取り寄せていたと理事長が言っていた。
一つはマコトが一口だけ飲まされたという界素を乱す薬。
そしてもう一つは界素の流れを高める効能の薬だったと。
活州は清光にその薬を飲まされ、そしてその薬には副作用があったという事か。
「……薬で正常な判断ができなくなるって言うのはあれか?
あの日のお前のハイテンションというかヒステリックというか、ヒャッハー的な状態の事か…?」
「んー? もしかしてバカにしてるぅー? もっかいお腹に穴空けてあげましょうかぁー?」
「どうしてそんな良い笑顔からそんな台詞が出るの? 怖すぎるんだけど……。
あの日のテンションやっぱ薬のせいだけじゃねえだろ……」
活州はまた顔だけ笑顔でヒリついた声を出した。
怖すぎる。帰りたさハンパねぇ……
でももう決めた以上、後押ししなくては。
「つまりお前は清光に無理矢理よく分からん薬を飲まされて、そのせいでゲーム中おかしくなったと。
なのに清光はそれを謝らないどころか、負けた理由をお前に全部押し付けたって事か?
……はぁ? なんだ清光マジでクズだな……」
「ちょっと! よく知らない癖に清光のこと悪く言わないでよねっ!!」
「えぇっ!? なんかごめんねっ!?」
もうどうしろってんだよぉ……
なんで今の流れで俺が怒られるの?
流石に今の話が本当なら清光はクズ認定でよくない?
……だとしてもやっぱり好きな奴を悪く言われるのは嫌ってこと? 恋する乙女やべぇな……
「──分かったよ。
どうにかしてここに清光を呼んでやるから、お前はここで待ってろ。
で、思ってる事 全部ぶつけちまえよ、後はなるようになるだろ」
結局俺がここでやるべきは活州の話を聞く事だったのだろうか。
念の為に確認しなければと、俺はスマホを取り出してキスキとのトークルームを開く。
するとちょうどキスキからメッセージが入っている事に気付いた。
╳ ╳ ╳
彩土 )
『学園を見つけた。でも行き方が分からずに詰んでる』
──────
キスキもようやく見つけたか。
ん? でも行き方が分からないってどういう事だ……?
見つけ次第、あそこには自動的に転送される筈なのに。
……あぁなるほど。
ほんと今、この瞬間に見つけたって事か?
で、まだ転送が始まってなくて焦ってるって事だろう。
確か俺の時も、空の上の学園を見つけてから転送されるまで数秒のタイムラグがあった筈だ。
──────
練乳 )...既読
『おめでとう。心配すんな。
たぶんこのメッセージ見た時には気付いてるかもしれないけど、転送されるまでに数秒タイムラグがあるだけだ』
───シュポッ。
彩土 )
『まってくれ。
数秒? それは間違いないのか?』
───シュポッ。
練乳 )...既読
『間違いない。マコトもそうだったらしいしな。
もう始まってるだろ?』
───シュポ、シュポッ。
彩土 )
『いやおかしいぞ』
彩土 )
『そんなのありえない。だって』
───シュポッ。
彩土 )
『僕が学園を見つけてから、もう10分以上は経ってる』
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「──は? どういう事だ、それ……」
俺はキスキのメッセージを見ながら、何か嫌な予感を感じ始めていた。
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