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異界者の選択  作者: 百矢 一彦
第一部
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魔法習得


魔法の話は明日という事になり、この後三人で夕食をとった。

「人型の方が、食事だけは美味しく感じていい」と少し笑いながらシルが言ったのが印象的だった。

「シル、ここまで案内してくれてありがとう、助かったよ」とシグルが言うと、

「役目だから」とつっけんどんながら顔を赤らめて答えていた、狐のままだったら表情は判らなかったな、とシグルは思った。


そして、気になっていた従魔の契約の件について尋ねた、

「従魔の契約なんだが、あの時は俺は何も知らなくて強引にしてしまった、解除の方法があるなら教えてくれ」

シグルがそう言うと、

「その事は今のままでいい、契約があるとあるじの経験値が我にも反映される、地蛇で私の経験値もかなり上がった、嬉しい誤算だった」

そうシルがそう言うので、契約はそのままにする事になった。


後から聞いた事だが、人型から狐になるのは何処でもできるが、狐から人型になる時は裸なので、隠れる場所が無いとできないらしい、

それと、人型の姿は天界の住人の姿を模しているそうで、人の形を模している訳では無いと念押しされた、結果として人の形になってしまうので人型と呼ばれているらしい。

人族や獣人に紛れるときは便利なので、人型でいる時の方が多いくらいだそうだ。

尚、獣人には人型で生まれ、獣に変化へんげする者がいるそうで、混同するな、と言われた。


カイルは、微笑みながらそんな二人の様子を窺っていた、就寝は二部屋しかない小屋なのに、一部屋ずつ使ってよいと言って来た、自分には秘密の場所があるから気にするなと言う。

シグルは妖精が作るという亜空間の話を思い出し、何となく察した。

そして、カイルに教われば、自分も色んな魔法が使えるかもしれないと期待を膨らませていた。


次の日から、カイルの魔法の指導が始まった、

基本的な魔法は一通り合格点をもらい、錬金魔法の鍛錬のおかげか筋が良いと褒められた、

カイルは身を守るための魔法を重点的に教えてくた、

身体能力を上げるのは、シグルも少し出来ていたが、シグルが思いつかない魔法もあり、成程と魔法とは想像力だなと無限の可能性を感じていた。もちろん、バランス感覚を上げる魔法も出来るようになり、河を渡った時のシルとレジーナの動向も納得したのだった。

特に瞬間移動の魔法は、攻撃を避けるにも仕掛けるにも便利だという事で熱心に教えてくれた。


その間、シルは久しぶりの人型に慣れる為か、ものすごいスピードで走り回ったり、ジャンプして木から木へ移動したりと、一人で鍛錬を続けていた。


二日目は、色々と生活や旅をするのに便利な魔法と回復魔法を教わっていた、

自分の汚れを落とすクリーンという魔法や、気配を消す方法、雨に降られても濡れない撥水の魔法なんかも教えてくれた、どれも便利な物ばかりだ。

シグルが期待していた、空間魔法も教えてくれたが、これはすぐには出来なかった、慣れと鍛錬が必要だと言われた。


そして、検索、という魔法を教えてもらった。

様々な物の用途や材質迄わかる便利な魔法だ、生き物にも効果があり、相手の魔力の強さや、魔法の系統などがわかり、力の差があれば職業やスキルまで判る場合があるという、ただ力が自分と同等や上の存在には効かないし、検索魔法を避ける魔法も存在しているらしかった。

他人の事は判らない場合があるが、自分の力を客観的に見れるのはとても便利だった。


試しにと、自分を検索してみる、

頭の中に、まるっきりゲームのステータス画面のような物が浮かんで来た、

これは、術者によって様々なのだそうで、シグルの場合、元の世界で馴染みの画面が出てきたようだ、

カイルに見えるのは、巻物を開いた物らしい。

強さや魔力量は基準を設けないと判らないが、色々な項目に色んな名前が出てきた。

普通に名前が、シグル・コウザキとなっているのが微妙に悲しい、年齢が26才になっている、二歳若返った?、案外いい加減だなと思いながら他の項目も見てみる、


錬金術師、従魔使い、魔術師、魔石の精霊の弟子、妖精の保護者、と色々書いてある中に、神託の転移者、と言うのがあった。

なんぞやこれ?、俺は神様には会ってないんだがな、と違和感を感じたが、例のごとく深く考えるのは辞めておいた。



その夜、夕食を済ませた後、

「して、シグル殿はこれからいかがなされるおつもりかな?」

とカイルが訪ねてきた。

そう、ここに来るのは魔石先生の勧めで決まっていたが、この後は全くの未定だった。


「まずは、この世界がどのような所なのか見て回り、俺の他にも転移者がいるか探すつもりです。その上で従魔もいるので何処か小さな町のはずれで道具屋でも開き、暮らしていければと考えています。」

とシグルにしてみれば、至極無難な答えをした。


「ふーむ、実は、今、人族の済んでいる地域は少々荒れているようでしてね、私もここからしばらく出て無いので、人づての話になりますが、獣人と協力的だった国が滅びたと聞き及んでいます、獣人と人族の間が険悪になっているとの事、それに人族の間では従魔使いは疎まれているようです、人族の国に入るなら従魔使いのスキルは隠蔽した方がいいかもしれません、方法は後で教えましょう。なので、人族の国に入れたとしても、お望みのような暮らしはちょっと難しいかもしれません」

とカイルは腕を組んで難しい顔をした。


人族は、元はいくつもの国に別れていたのだが、コーエン帝国と名乗る国が人族絶対主義を唱え、頭角を現し、他国を吸収する形で拡大していったのだそうだ。人族絶対主義では従魔は穢れたものとされ、ゴーレムが重宝されているようで、従魔使いは疎まれる存在のようだった。


コーエン帝国は元々魔道具を作るのが得意な国で、人族ならではの様々な魔道具を使い、国は繁栄していったのだが、最近、その動力源である魔石が不足してきていた、そこで魔石を求めて獣人たちが支配している地域に遠征を繰り返すようになったようだ。

そのコーエン帝国と獣人たちの国の両方に接する形でクミラギ国という小さな国があり、両国をとりなす形で成り立ってきたのだが、その国が最近コーエン帝国によって滅ぼされてしまったようだ。


「クミラギの民は、人族と獣人との調停役の役目を果たしていたのですが、それが滅んだとなっては両者の対立は深まるばかりでしょう、まあ、実際に現地で見てみないとどのような状況なのかわかりませんが」


あれえ、もしかして田舎でのんびりとか、そういう雰囲気じゃ無い?

これは予定が狂った、とシグルは頭を掻いていた。


とにもかくにも、転移者がいるとすれば人族の住む町だろう、明日ここを出て、人族が住むむ地域に向かう事にした。



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