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異界者の選択  作者: 百矢 一彦
第一部
6/62

レジーナ


 卓達が出発してしばらく後、洞窟に残った魔石の精霊は薄目を開けて外を見ていた。

「神託の転移者か・・・、上位神様は何をお考えなのか、・・しかし、久しぶりに楽しかったのう」

そう呟いて目をつむる、

「ふむ、堕天使もついて行くか・・・、この波紋、どう広がるのかのう、次に目覚めるときが楽しみじゃ」

精霊は石に戻り、三カ月前までそうであったように静かにその場所にあった。

・・・・・・・・・



卓はウキウキ気分だった、これから行く場所はどんな所なのか、ゲームや漫画の異世界を思い浮かべながら妄想していた。

何処か小さめの町をみつけて、道具屋を開こうかなあ、錬金や加工もおぼえたし、危ないのはいやだから冒険者より生産職がいいよな。

獣人とかいるのかなあ、エルフなんかもいたりして・・・


そんな卓の様子を横目で見ながら、不機嫌な顔で先頭を歩いていたギンコが突然足を止めた。

警戒しながら前方を見つめている。


ん、どうした?

ギンコの様子に気が付いた卓も前方に注意を向ける。

そこには、木に寄りかかりこちらを見ている女性の姿があった。


この森は魔素が濃すぎて普通の人間は近寄れないと魔石先生が言っていた、つまりあの女性は普通では無いという事だ。

警戒して様子を窺っていると、向こうから近づいてくる。

髪の色は濃い赤、肌の色は褐色、女性にしては大柄な、美しいというより精悍な顔立ちの筋肉質なプロポーションバッチリの女性だった。

いで立ちも、露出多めの鎧を身に着け、大きめの剣を差している。

まさに異世界の女性戦士そのものという格好だった。



「&#、%=”#’&%*~#」

見た目とは違う和やかな笑顔で何か話しかけて来るが、卓には何を言っているのか全く判らなかった。


「こいつには念話じゃ無いと話が通じない」とギンコが女性戦士に向かって言う、

「まじか?」女性戦士はちょと驚いた顔をしたが、すぐ笑顔に戻りポンポンと卓の肩を叩いている。


卓は女性の態度にもビックリしたが、ギンコがこちらの言語らしき言葉を発したのにも驚いていた。


(同じ方向だから一緒に行こう、何かあったら守ってやる。)の様な意味の思念が女性から送られてきた。卓がギンコの方を見ると、肩をすくめて(仕方ないよ)的な思念が帰ってくる。


「はあ、じゃあよろしく」と卓は声に出して答えた。


女性戦士から名まえを訪ねる思念がきたので、「すぐる」と答えた。

「シグル」と女性が声に出す、「いやシグルじゃ無くて、すぐる」と返すが、

「シグル」と帰ってくる、何度か発音を直そうとしたが全く治らず、もうシグルでいいやと開き直った。


「シグルであっているだろう?」と女性戦士がギンコに訊ねる、「あってる」とギンコが答えるが、卓改めシグルにはその会話は判らなかった。


女性の名前は「レジーナ」と言った、

レジーナはシグルそっちのけでギンコと何やら話しながら前を歩いて行く。


「フフ、狐よ、よく人族の従魔になったな、ビックリしたぞ、」

「あ、あれは、流れで仕方なかった」

「いやいや、それでもお主なら拒否できたであろう」

「・・・・それが、あの人族の魔力は強大だった、ちょっと触れただけだけど、まるでラビス様のようだった」

「なんと、森の女王と同等か」

「そ、そんな気がしただけ、同じであるはずがない」

「ほーん」

レジーナは横目でギンコの顔を覗く、

「では、なぜ人型にならない?人型ならば従属せずにすんだろうに、長い付き合いになりそうなのに、ずっと狐の姿でいるつもりなのか?」

「人族の男と人型で二人きり、考えらない」

「従属よりもいやなのか?、ははーん、お主、生娘か?」

「ば、馬鹿な事を言うな、関係無いそんな事」

「そうかそうか、フハハハハ」


何やら楽しそうに話しているが、シグルにはさっぱり判らなかった。

いきなり賑やかになったなあ、それにしてもギンコがしゃべれるのにはびっくりしたな、

はやくこちらの言語を習得したい、ギンコと俺もしゃべりたい。


新たな楽しみができたシグルの足取りは軽かった。



途中、大きなトカゲに襲われたものの、いとも簡単にギンコとレジーナがかたずけ、小川の近くで野営となった。

食事の用意をしながら、手ぶりと念話でコミュニケーションをとるが、細かいニュアンスは伝わらなかった。

シグルは、うーん、三カ月も一緒にいたせいか魔石先生の思念は判りやすかったんだがなあ、やっぱりあの精霊先生は凄かったんだな、と改めて思っていた。


ギンコとレジーナは、シグルが言葉が判らない事をいい事に、好き勝ってに喋っていた。

「レジーナ、気が付いている?、あの人族に付いている妖精は、一つや二つでは無い、まだ幼体だが六体も付いている」

「六体?、いやいや、いくらなんでもそれは無かろう、それではすべての力が付いてしまうではないか」

「本当だ、我はこの目でみた、しかもあいつ感謝もせずに、ペットのごとく扱っている。いったい何者なのか」

「本当なのか?、連れている従魔が妖精付きなのは判ったのだが、規格外だな」

「ラビス様が、なぜあいつの世話を言い付けたのか、あれを見て初めて納得がいった、でも、どうにもあの貧相な顔と姿は耐えられない」

「そうか?、案外かわいい顔をしているではないか、儂は気に入ったぞ」

「まったく、あんたの趣味はよくわからない、レジーナの方がよっぽどたくましいではないか、男であれは無い」

「いやいや、そこが良いのではないか、傍らに置いて、なでなでしたい」


そんな事を話してるとはまったく知らないシグルは、レジーナがなぜ一緒に来るのか気になりながらも、見張りはギンコとレジーナがするので気にするなと思念を送られ、蜘蛛子が作ったハンモックで、スラジューを枕に安らかに眠りにつくのだった。


シグルの周りに飛んで来た虫は、蜘蛛子が糸を飛ばし捕まえて食べていた。




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