顔合わせ2
レブラ、ミラ、グランと獣人組が自己紹介していく、
ステラの後では、もはや驚くことは何もなかった。
タリルは、シグルと話し合い、自分が異界人で有る事を話し、帝国にもう二人異界人が居る事を打ち明けた、いま、帝国が新しい魔具を続々開発しているが、それがタリルと同じ、異界人の仕業と言う事も話していた。
メグも同じく異界人である事を話した、こちらはタリルとは違って、向こうにある商品を参考にすれば、こちらで売れる商品をいくらでも開発できると力説し、ほぼ商売の話に徹していた。
ルイナは、フェルダーンの責任者補佐だという事だけ言って終わり、
シルは、「精霊の森の聖獣、シル」とそれだけで終わりだった。
レジーナは、「儂は基本自由人だ、森の精霊の加護を受けている」とだけ話し、新入りの三人の元部下を宜しくと言って自己紹介を終えた。
そしてシグルは、自分も異界人だという事だけを話し、その後は、今後の方針について話を始めた。
「まず、新たに傭兵部門を作った、まあ、これは、傭兵という形にして帝国内のいざこざに介入する為の隠れ蓑だな、どうやらコーエン帝国は、中央と地方では考え方に齟齬があるようだ、これから小さな争いが増えそうな気配がある、それに対処するための物だ」
シグルがそう言うと、またガヤガヤと騒がしくなる。
「まあ、これは、俺とグランが担当する、他の者はあまり気にしなくていい、他の者は、当面、回復薬の製造と販売に力を入れてくれ、最終的には、帝都に店を持つことを目標にしている、よろしく頼む、では後は食事しながら話そう」
そう言ってグラスを掲げ、乾杯の音頭を取った。
ガヤガヤと場が賑やかになる、
「しかしなあ、あまり派手にやると、中央に目を付けられんか」
レジーナが傭兵の話を受けて、シグルにそう言って来た。
「なに、その時はその時さ、なんなら反乱国を作ったっていい、そうすればフェルダーンに向いてる戦力を分散できるだろ」と肉をかじりながら言う。
レジーナは、一瞬呆れた表情をして、
「お主は、そんな事を考えていたのか、案外過激な男なのだな」と言った。
「いや、いざとなればの話さ、今の人族にそんな度胸のある奴はいなさそうだしな」
そう言って、肩ををすぼめる。
「私は大賛成だ」そう言ったのは、レジーナの向こう側にいたルイナだ
「とにかく、我が主を本気にさせない事が肝要だ、結局それが人族の為にもなる」
そう言いながら、ルイナの目線は元天使の美女三人に向けられていた。
「あの三人は、シグル殿のお側に置くつもりかな、シグル殿の好みが掴めぬのだが、今日は二人ばかりタイプの違うものを連れてきた、良ければそば使いに使って欲しいのだが」
ルイナがそう言うと、後ろに控えていたグラマラスな兎人と、モデルの様なスタイルの豹人の女性がシグルに会釈をする。
え、何言ってるのこの人、元天使に対抗心燃やしちゃってるのか?
シグルには、シルとレブラ、それにミラの冷たい視線が突き刺さっていた。
「いや、あの三人には、帝都に先行してもらい、出店の下準備をしてもらうつもりじゃ」
そう言ったのはレジーナだ、
「ああ、それはいい考えだ、これ以上大所帯で移動は目立ちすぎる、その二人にも、店を開くようになったら、手伝ってもらうかもしれないな」
シグルは、心の動揺を悟られないようにそう言った。
「そう言う事なら」とルイナは少し笑って、持っていたグラスをテーブルに置いた。
その、元天使三人は、
「あのレジーナ様の脇にいるのは、竜人であろう?」とイールが言う、
「どうも、魔力の使い方が慣れず、はっきりしないが、竜人であろうな」とエクシア、
「なんか、さっきから睨まれてる気がします、ちょっと怖い」ミシエルがそっちを見ないように言う、
「ミシエル、気にしすぎだ、あの人は誰を見るのもあんな目つきだ、さきほど魔族を見てた時はぞっとしたわ」そうイールがいった、
「気になると言えば、あの主殿の服は従魔なのかえ、気が伝わってくるが」とイール
「あれは、多分スライムの上位種ですわ、それよりも、蜘蛛ですよ、蜘蛛」エクシアが続く
「ああ、それに姿は見えぬが、天井にトカゲの様な物が要るのが判る、これも従魔なのであろう」
とイールが言う、
「では、この地下から伝わる巨大な気も、主殿の従魔なのですか?」ミシエルが怯えた声で言う、
「蛇だな」とイール
「蛇ね」エクシアも続く
「主殿、どんな趣味をお持ちなのか・・・」ミシエルは心配そうな顔でシグルの方を見ていた。
ピテシアは、そんな三人に、シグルの従者になってどのくらい魔力が増えたのか聞きたくて仕方なかったが、美女三人の集団は近寄りがたく、話しかける事さえできずにいた。
そんなピテシアを呼んだのは、メグだった、
メグは、ピテシアとターシアに、自分の仕事の補佐をさせるべく、給与の仕組みや代理店の利益配分などを、試案を基に意見を求めていた。
「製造部門は単純に時給計算でいいと思いますが、販売部門は実績に合わせないと不公平感が出るかもしれません」そうターシアが言う、
「そうね、こちらでの方法を元に考えましょう、あ、傭兵部門は別扱いでお願いするわ」
そうメグが言う、
「わかりました、ところで、薬草の栽培なのですが、あの薬の効果なら作りすぎるという事は無いと思います」とターシアが言う、
「そうなのだけれど、畑を作る場所がそろそろ無くなって来てて」とメグ
「畑を作る必要はありません、畑を作るのは帝都など街中での栽培方法です、森があれば、適当に木を間引きして、そこに苗を植えた方が効率的です、薬草は日陰を好みますし、森の栄養をたっぷり吸って、より効果の出る薬草が取れます」
ターシアの助言に
「え、そうなの?、目からうろこだわ」
とメグはターシアの手を取って感謝した。
「人工的に森を管理するのはそれなりに手間ですが、畑を作るよりは効率的です、田舎では昔からやられていた方法です」とターシア、
「そうなの、詳しいわね」とメグが聞くと、
「我が家は、聖職者の血をひいていますので、祖父の代まで薬も作ってました、魔力が足らず父は諦めてしまいましたが」とターシア、
「そうなの、魔力が足りなくて・・、だったらあなた、うちの薬工房を見たら驚くわよ」メグはそう言って、ニコニコ笑った、
その脇でピテシアは、二人の話を上の空で聞いていた。
「ピテシアったら、まだ、自分も従者にしてもらおうか迷ってるみたいね」その様子を見て楽しそうにステラが言う、
「まあ、今より強くなれるのは確か、問題は主に付いていけるかどうかだけ」
シルは無表情でそう言う、
「私も興味があるわ、今より魔力が強まり、そして従者となればきっと・・・ルイナ様に相談してみようかしら」レブラは小声でそう言っていた。
「え、なになに、何の話?」そう割り込んできたのは山猫族のミラだった、
「実はね・・・」楽しそうに従者の話を言って聞かせるステラだった。
「知らない間に、凄いメンバーが集まってたんですね」そうタリルが言う、
「ああ、こりゃ、俺も少し鍛えないとまずいかもなあ」とグラン
「俺達、仲よくしような」そうシグルが言う、
「ああ」と言いながら、片隅で酒を酌み交わす男三人だった。
その様子を、マーレが笑いながら見ていた。




