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異界者の選択  作者: 百矢 一彦
第一部
20/62

キャラバン隊


次の日、シグル達三人は、カムマラの町よりさらに麓の荷物の集積所に来ていた。

想像より大人数の獣人達が、忙しそうに作業をしている、その中を進み、他の建物より小綺麗な役所風の建物の中に入って行った。


建物の中も、慌ただしく人が行き来していた、

「なんだか、忙しそうですね」とシグルが言うと

「ふむ、事情はカイキルが説明する、砂漠の向こうの町がのっぴきならない状態らしくてな」

レジーナはそう言って、奥にある扉を開いて会議室らしい部屋に入って行く。

シグルとシルもレジーナの後に続いて部屋に入ると、龍王の側近カイキルと数人の獣人の姿があった。


「この度はご無理を言って申し訳ない」とカイキルが言って来るので、

シグルは、いや、無理言ってキャラバンに同行させてもらうのはこっちのはずだが、と

「いえいえ、キャラバンに同行させて頂ければ、こちらも有難いです」と答えた。


シグルは、なんか様子がおかしい、と思いながら勧められた椅子に腰かける、

カイキルの後ろに居る獣人達が、値踏みでもするようにシグル達を見ていた。


「実は、砂漠の向こうにフェルダーンという町があるのですが・・・・」

カイキルはそう切り出すと、説明を始めた。


砂漠を超えた所に、獣人達が拠点としているフェルダーンと言う町に、コーエン帝国に滅ぼされたクミラギ国の難民が押し寄せているのだそうだ。

その数が万を超え、今も増え続けているのだとか、城壁で囲まれている町なのだが、今や城壁の外はテントで暮らす人々であふれかえってしまっているという事だった。


「このままでは、収拾がつかなくなりそうです、既に食糧が不足し飢餓や疫病の心配もあります。龍の国では出来る限りの支援はしてきたのですが、この際、町を拡張する事になりました」

そうカイキルが言う、かなりのスケールの事業のようだ。

「拡張、ですか」そんな簡単に出来る話じゃ無いのは、シグルにも判った。


「これには、砂漠の民、クエン族の協力も取り付けてあります、彼らにとっては砂漠を守る要の町でもありますから」

砂漠に住んでる人からすればそうなるのか、という事は帝国から見れば邪魔な町という事では。


「おそらく、帝国の妨害工作、最悪、軍による侵攻もあるやもしれません、それに備えながらの工事になります、シグル殿は人族、帝国に反感は無いやもしれません、しかしながら、これは同じ人族であるクミラギの民を救う事にもなります、どうかご協力いただきたい」

そう言って頭を下げるカイキル。


いやいやいや、一体俺に何を期待してるのかなこの人、そりゃあ多少、魔法は覚えましたけど、そんな大事業で大した役に立つとは思えないけどなア、そう思いながらレジーナの顔を見る。

レジーナは当然受けるんだろうな、という顔で頷いている。

シルの方を見ると、いつもの通りの無表情で、(主の好きにすればいい)と思念を送って来た。


「お役に立てるか判りませんが、俺に出来る事ならしましょう」

と、結局今回もそういう答えになった。


計画では、今回のキャラバンでは、技術者や職人、各分野の専門家など、人を運ぶのが中心だった為、物資は少な目だった。だが、シグルが空間魔法で物資を運んでくれれば、それだけでも大変ありがたいとの事だった。


後ろに控えていた獣人達の紹介を受ける、

「キャラバン隊の隊長を務める虎人のマルディンだ、よろしく頼む」

「警護隊の狼族、ウシャル、我らはそのままフェルダーンの町の警護も担当する」

「救護班の兎人 メルビナです、よろしくお願いします」

「建築技師の亀人、コウラルですだ、土魔法と水魔法を少々使えますだ」

それぞれと握手する。

獣人達は、見た目は普通の人種とそれほど変わらなかった、メルビナさんにウサ耳は無かった。


「そして、総責任者は私、カイキルが仰せつかった、こっちに居るのが私の補佐をしてくれるルイナ、竜人だ」

責任者とその補佐が竜人というのは、龍の国の本気を示していると言えた。

「ルイナです、お噂は伺っております、よろしくお願いします」

ルイナは、出来る女、というオーラが漂っていた、黒のショートカット、背筋を伸ばした立ち姿に隙は無い、

シグルは、この手の女性はちょっと苦手だった。

「よ、よろしく」と緊張気味に挨拶した、握手は無かった。


「三人には物資運搬担当となって頂く、詳しくはコウラルに聞いて欲しい」

とカイキルは凛としたゲームのキャラ顔で閉めた。


その後、早速コウラルの案内で物資が集められた倉庫に案内された。

「今朝になって、もっと物資が運べそうだと聞きましてな、本当に助かりますだ、現地で調達できる材料がまだ把握できてないもんですから、こっちからなるべく多く持って行きたかったのですだ」

コウラルはそう嬉しそうに話す、気さくなおっさん、という雰囲気だ。


「今はここにあるだけですが、もう二日あるので、もう少し増やすつもりですだ、大丈夫ですかのう」

少し心配そうにシグルに聞いてくる。

そう聞かれても、シグルも初めての事なので答えようが無かった。

「はあ、とりあえず試してみます」と答えて大量の物資を振り返った。

その脇で、レジーナはなぜか腰に手を当て自信満々で立っていた。


袋のイメージではこの物資の量は無理そうなので、シグルは、巨大なコンテナをイメージする、

そこに物資を入れようと思うのだが、当然でかくて重いので動かせない。

それじゃーと、物資を丸ごと囲うさらに大きなコンテナをイメージして物資を覆ってみる。

すると、物資がスーと見えなくなった、

「なんとかなりそうです」とシグルはホッとした顔をする。


コウラルはポカーンとした顔をした後、真顔に戻り、

「シグル殿、今の魔法は、人前ではあまりお見せしない方がいいですだ、これを利用したい者はいくらでも居るだべ。いや、空間魔法とは聞いていただが、まさか、一度にあの量を消せるとはたまげましただ」

そう言って来た。

「あっ、そ、そうですね」とシグルは、目立たないようにするつもりだったんだっけ、と反省していた。


レジーナは、それを見ると、フンと鼻を鳴らし、ドヤ顔をしている。

やったのは俺なんだけどな、まあいいか、これで役に立てるだろう、そう思ってシグルは少し安心していた。


シルは、なぜか荷物の無くなった倉庫で、くるくる楽しそうに回っていた。




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