表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界者の選択  作者: 百矢 一彦
第一部
2/62

魔石の精霊


魔石の精霊?・・

ゲームや漫画でも聞いた事無いぞ、いくら異世界とはいえ、いきなり難度高すぎじゃないかい?


「ふむ、その驚き様は、おぬしの生まれた世界では、儂の様な存在はおらぬとみえるな」

カボチャ石がそう喋っている。

卓は驚きの表情を隠せないまま、うんうんと顔を縦に振った。


「驚いたのはお互い様じゃ、儂も長く生きておるが、目の前に異界の者が転移してきたのは初めてじゃわい、フホホホ」とカボチャ石はいつの間にか生えてでた手で顎のあたりを擦っている。


卓はビックリしながらも、次々と質問したい事が頭に浮かんだが、さっき耳にした、妖精という言葉について質問してみた、

「あの、火の妖精とかおっしゃってましたが、いるんですか?妖精さんも」

するとカボチャ石は、少し愉快そうな顔をして語りだした。


「しばらく観察しておったが、邪悪な気配は無さそうだしの、色々教えてしんぜよう。今、お主の周りは妖精だらけじゃよ」

卓はあたりを見回すが、何も見えない。

「フホホホ、妖精はな、お互いに信頼しあわないと見えんのじゃよ、お主は妖精の存在を疑っておろう?それでは見えんのじゃ、まあ、こちらの世界の人族でも今や妖精の存在を信じておらぬからな、異世界から来たばかりのお主に見えんでも仕方あるまい」


まあ、元の世界でも同じ様なおとぎ話があったような気がするな、ここは異世界だ、本当にいるなら見てみたいもんだが、そう卓が考えていると、

「それにしても、妖精にこれほど好かれる者は見た事が無いの、ほれ、手元の肉が上手い具合に焼けておるぞ」

そう言われていつの間にか手にしていたウサギの肉を見ると、美味そうにこんがり焼けている、

焚火の方もパチパチと丁度いい具合に燃えていた。



名前を聞かれてあわてて自己紹介する、

「神崎卓といいます、卓の方が名前で神崎が名字です」

ここに来た時の状況や、まったく訳がわからない事を話すと、

「ふーむ、お主は上位神に呼ばれたのやもしれんな、天界神ならなんらかの説明や計らいはするであろうからのう」と困ったような顔つきで答えた。


カボチャ石、もとい魔石の精霊様の説明によると、

この世界には元の世界でいう神様に当たる存在が天界に複数いて、その上に幾多の世界を管理する上位神という存在がいるいらしい、雷の光の中でみた人影らしきものがそうだったのかは定かでは無い。

上位神がときおりそう言う事をすると聞いた事があるらしかった。


この世界では異界召喚魔法というのが存在していて、条件が難しく稀にではあるが儀式が行われることがあるようだ。ただ、一般的には人ではなく魔族を呼ぶためのものらしい。

人の場合、神の加護がつき、成長は早いけれど力が付くまでに時間がかかるようだ。だが、魔族の場合は初めから力が強く即戦力なので、主に復讐などの目的で魔族を召喚する輩がいるらしいとの事だった。交換条件として自分の命だったりする事もあるらしい。

しかも、魔族によっては召喚後こちらに居つく者もいるとか、駄目でしょそれ。


魔石の精霊の住処であるこの場所は、この世界に存在する魔法の動力源である魔素と呼ばれる物質の発生源のすぐ近くで、普通の人間には魔素が強すぎて近寄れないのだそうだ。

そんな場所に、突如、異界人が姿を現したので、流石の魔石の精霊様もびっくり仰天したそうだ。

卓は三日間寝込んでいたようだが、三日で動けるようになるのは、常人には無理だという事だった。


「そのスライムは、お主が寝てる間、薬草を食べては回復薬を生み出して、お主に飲ましておったよ、やはり妖精のせいかのう、魔物にも妖精付きの魔物がおっての、そのスライムにも付いておる。そしてあの蜘蛛にもな、不思議なもんじゃて」


妖精付きの魔物とは、まれに妖精に気にいられ、妖精が付いて回る魔物の事だそうで、その魔物が一度体内に入れて出す魔素と妖精の相性がいいのだろう、との説明だった。


どうやら、それに加えて卓には従魔獣を持つ能力があるとの事だった。かなり特殊な能力なのだそうだ。

「ほれ、二匹ともお主の仲間になりたがっておる、契約してやるがいい」

そう言われてスライムと蜘蛛をみると、なるほど何となく親し気にこちらを見てる様な気がする。

これは、ゲームで言う所のテイムでいいのだろうか? どうすればいいのかと考えていると。


「自分の魔力と相手の魔力を少量交換するのじゃ、なあに、手をかざせば相手が勝手にやってくれるじゃろ」

と卓は精霊様に言われるまま、スライムに手をかざす。

すると、嬉しそうにスライムが寄って来て、手の平にわずかな圧を感じた。

これでいいのかな、蜘蛛君もやってみる?

蜘蛛の方も寄って来て前足をもぞもぞさせている、やはり手の平に圧を感じると満足そうに自分の住処に帰っていった。


魔力とか魔素とか怪しい単語がでてきたので、異世界の代名詞、魔法について聞いてみると、

魔素を用いた魔法と精霊魔法は別物らしく、魔素を用いた一般的な魔法についてはあまり詳しくないとの事だった。

「お主の魔力は駄々洩れのようじゃからのう、魔力の制御ぐらいは教えてやろう、今日はもう遅い、後は明日じゃ」

そう言うと、魔石の精霊は目を瞑って石に戻ってしまった。


情報量の多さに戸惑っていた卓も、性格なのか、深く考える事を辞めにして眠りにつくことにした。

いい具合に焚火が燃えている。

その炎を見ながら、妖精ねえと見えぬ姿を想像しながら目をつぶった。

すると、スライムが頭の下に入り込み、丁度いい具合の枕になってくれている、これがなんとも心地よくすぐ眠りについていた。


魔石の精霊は、卓が寝入ると、薄目を開けて改めて目の前の人族を観察していた。

(特別変わった者のようには見えんな・・・、さて、上位神の仕業として、なぜここに送り込んだのかのう。

天界の使者が現れぬという事は、天界の住人はこの事に気づいておらぬのやもしれん、どう扱ったものやら)

少しの間思案した後、今度こそ本当に石に戻っていた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ