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異界者の選択  作者: 百矢 一彦
第一部
19/62

天族


シグルの問いに、レジーナは少しだけ大天使の面影のある笑みを浮かべて言った、

「フフフ、儂らに歳を問うのは、星に歳を問うのと同じよ、詳しく地上の民に語るのは禁じられている、だが、儂はもう天族では無いのでな、少しだけ教えてやろう」


シグルの素朴な疑問は、天族の核心に近い物だったようで、聞いたシグルの方が面食らっていた。


「地上の生き物はの、長く生きすぎると体が丈夫でも活動をしなくなる、長寿で知られるエルフもな、個体差はあるじゃろうが、活発に動くのは300歳ぐらいまででな、それより年長の者は木の室に入って、瞑想ばかりしているようじゃ、あの里の長老は活発な方じゃったよ」

シグルは先日のオーク騒ぎの時の口数の少ないエルフの長老を思い出し、あれで活発なのかと思っていた。


「神を含めた天族は、それよりは長く活動するがな、似たような事は起こる、あまり長く起きていると何もしなくなるのじゃ、それで休眠に入る、数百年単位でな。一度休眠するとそれまでの記憶は薄れ、記憶というより記録という感じで頭に残るのじゃ、それで新たに活動する活力が生まれる、それを繰り返しておる。儂が前回目覚めたのは180年ほど前じゃ、まだまだ若い方じゃぞ、フハハハ」


うーん、そのままの姿で、生き死にを繰り返してる、って感じなのだろうか。

シグルなりに理解しようとするが、今一よく判らなかった。


「中にはの、完全に自分の記憶を無くし、体も幼子にして自分の成長を楽しむ神もおられる、こう言っては何だが、長寿者は、基本暇なのだ。常に暇つぶしを探しておられる。良い事なのか、悪い事なのかは判らぬがな」

歳を聞いただけなのに、なんかとんでもない事を聞かされた気分のシグルは、それでも、天族の存在を少しだけ身近に感じる事は出来た気がした。


ふと隣を見ると、ホンヘイ老人が目をキラキラさせて、アイーダの話に聞き入っていた、

なんか、若干若返ったようにも見える、というか、あんたも何歳なんだよ。

「儂は、全ての世界の時間を合わせると、300歳を超えておるが、今日の御話を聞いてまだまだ知りたい事が沢山あると、再認識いたしましたわい、まだ、木の室に籠るつもりはありませんぞ、」と聞く前に自分の年を言って笑っていた。


シグルはあまりに途方もない話に、頭が追い付かず、顔が虚ろになっていた。

シルに向かって、

「シルは何歳だっけ?」と聞くと、

「18歳」とシルは答える

「良かったよ、近くに年下がいて、仲よくしような」と言うと

「うん、我も少しそう思った」と答えたシルの目も、遠くをみていた。





その後、シグルはホンヘイ老人を老師と呼ぶ事にし、空間魔法のコツを教わった。

くうに物を入れようとするから難しいのじゃ、なに簡単な事じゃ、空中に袋があると想像してみよ、その袋に物を入れようと思うのじゃ」

老師に言われるままやってみる、

「あ、出来た」

シグルは、あまりにあっけなく空間魔法を習得したのだった。


「後は魔法陣を正確に頭に浮かべられるようにする事じゃな、それまではそなたの持っている魔導書に頼るしかあるまい、しかし、その魔導書、儂の知らぬ陣まで乗っておる、先ほどの話と言い、麒麟の賢人カイル殿には、是非一度会ってみたいもんじゃて」

ホンヘイ老師は、初めて会った時より、生き生きとした口調でそう言った。


「カイルさんが麒麟の賢人と呼ばれていたとはな、老師に聞くまで知りませんでしたよ」

「知らぬとは恐ろしい物よの、賢人に教えを施されるのがどれほど名誉な事か、ただの人族には夢の様な話じゃろうて」

「いやあ、知らなくて良かったかも、知ってたら緊張で頭に入らなかったかもですよ」

シグルはこの時、まだ勘違いをしていた、

シグルが老師と呼ぶ事にしたこの老人も、人族の知識人の間では竜の山の仙人と敬われていたのだ。


「空間魔法も出来るようになったし、砂漠越えの時の荷物の心配は無くなったぞ、後は乗り物だな、この世界にはラクダっているのか?」

シグルは、レジーナの正体が分かっても今までの口調と変わらずに聞いた、これはシグルの性格というより、レジーナの性格と雰囲気がそうさせていた。


「その事だが、飛竜に乗れば一番簡単なんだが、ここから先はなるべく目立ちたくない、三日後にキャラバンが出る、それに同行しようと思うのだがな、どうであろう?」

とレジーナが提案してきた。

目立ちたくない、というのはシグルも同意見だったので、

「キャラバンが出るなら、それが一番良さそうだ、そうしよう」と答えた。


「それでな、シグルが空間魔法を覚えたのなら、頼みたい事があってな」

とレジーナが言う、シグルは何となく察しがついた、

「荷物ならいくらでも運べそうだから、俺に出来る事ならやるよ」と答えた


「そうか、では、明日カイキルと打ち合わせをするとしよう」

なにやら、事情がありそうな雰囲気だった。


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