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異界者の選択  作者: 百矢 一彦
第一部
18/62

100年前


 レジーナの話は、100年ほど前にまで遡った。


当時、人族の国はいくつにも別れていて、人族絶対主義を唱えるコーエン帝国も、まだ小国に過ぎなかった。

国々は競うように魔法武具を作り、覇権を争っていた。

ゴーレムの技術が進むと、さらにエスカレートしていき、より強い鋼材と動力である魔石が必要になっていった、自分達の領地の資源だけでは足らなくなり、人族ははるか竜の山にまで鉱石と魔石を求めて遠征するようになっていく。

 

初めは、税を獲り発掘を許していた龍王だったが、徐々にエスカレートする発掘は、緑をそぎ取り山の形を変えるほどにまでなって行き、ついには地元の獣人と争いが起きるまでになって行った。

それに怒った龍王は、人族による採掘を一切禁止し、それに反発する人族の国々と国交を絶つまでに至った。

人族の力では、砂漠を超えて龍の国を攻める事も出来ず、人族の国々は資源不足に陥ってしまう。


それに怒ったのが、レジーナが仕えていた工芸と武具の神ハシスアベブだった。

武具作りに熱心な人族びいきだったハシスアベブは、龍王に使いを出し、人族への発掘を許すようせまったが、龍王はそれをキッパリ断った。

龍の力は神をも凌駕すると言われ、逆に神の禁忌とされる、地上への介入を断罪したのだった。


逆上した神は、自分の私兵を竜の山に派兵する事を決めた。

この私兵部隊の隊長が、大天使レジーナ・ネイストだった。


レジーナは、この派兵に初めから疑念を抱いていた、正義は自分にあるのか、戦う大義名分が見つからなかった。

まずは話し合いをして、妥協点を探るつもりでいた。


部隊を竜の山の手前の上空に待機させると、単独で龍王に会うべく竜の山に向かった、

すると、突然、天から神の光が落ちてきた、

神ハシスアベブは、レジーナの独断に怒り、レジーナごと竜の山を吹き飛ばそうと、神力を使ったのだ。


それに気が付いたレジーナは、全力を持って空に結界を張り、最小限の被害に防いだ、

だが、怒り狂った神ハシスアベブによって、レジーナはその神によって与えられた神力を取り上げられ、上空から木の葉のごとく精霊の森に落ちて行った。


その後、神ハシスアベブの私兵たちと、竜人や山の獣人たちと戦闘となったが、隊長であるレジーナを失った私兵軍は、あっけなく敗れ引き返して行った。

そして、地上に神力を使ったハシスアベブは、他の神々に咎められ、強制休眠100年を言い渡されたのである。

この刑で済んだのは、レジーナのおかげで未遂になった事が大きかった、結果としてレジーナは主神を助けた事にもなったのだった。


「あの時は、神力も魔力も無いただの人じゃったからなあ、あのまま地上に落ちて死ぬと思っておたっわ」とレジーナは頭を掻き掻き笑いながら話す。

「儂は書物を片付けるのが間に合わず、肝を冷やしましたわい」

とホンヘイ老人も笑っていた。


そのレジーナを救ったのが、森の大精霊ラビスだった、

「でな、ラビス様に命を救われ、森で倒れている所を、麒麟に助けられたのじゃ、しばらく看病を受けたのだけれど、あいつはくどくど説教が多くてな、それも笑いながら言いよる。やれ、他にもやり方はあっただの、主を諫めるのも従者の仕事だの、人族ばかり見てるからこうなるだの、しつこいのじゃ、どうも苦手でいかん」

レジーナの言葉に、シグルはなんとなく想像がついた。


「その後は、ラビス様に魔力を分けて頂いてな、森の警護などをしておった、その間に龍王とはすっかり仲良くなっておったわ」

と、レジーナの説明が終わった。


続けて、ホンヘイ老人が後日談を話し始めた。

「皮肉な事に、この戦のあと、人族至上主義のコーエン国が頭角を現したのじゃ、その原因は技術力の差じゃった、魔石が不足すると、効率のいい魔具を作れるかどうかの差が大きかったのじゃ、それまでは、技術の差は魔石の量で埋められたのじゃがな、人族の国の内陸にあったコーエン国は元々魔石が少なかったでの、技術は上じゃったのじゃよ。その後ほとんどの人族の国を支配して帝国を名乗るようになった。最近は新しい魔法武具を開発したようじゃ、近くにおる獣人は反発してるようじゃのう」


シグルは二人の話で、だいたいのこの世界の現状は把握できた、

だが、大きな疑問が浮かんで来た。


「レジーナさん、あなたいったい何歳なの?」





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