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異界者の選択  作者: 百矢 一彦
第一部
17/62

見えない会話


気が付くと、外が薄暗くなってきていた。

今日はここまでという事になり、明日、また会う事にした。

シグルも、ワープ魔法と空間魔法を習得したかったので、教えを乞う事にしたのだ。


町の近くまでワープで送ってもらい、シルと二人、宿に向かった、

シルは終始無言だったが、老人の話は刺激があったようで、顔が高揚しているのがわかった、


宿は個室だったが、部屋に入るとすぐ「遅かったな」とレジーナが入って来た。

レジーナは、砂漠越えの段取をカイリルとしていたらしく、結構早く宿に戻っていたようだ。

老人と会った話をし、老人が言っていた事もかいつまんで話した。

二度転移をした経験があるらしい、と話すと、


「二度の転移?、そのような事があるのかの、いつ頃この世界に来たのか、はて、聞いた覚えはないが」

とブツブツ独り言のように言っていた。

シグルは、二度の転移の話を聞いても、然程驚かないレジーナに、この人はいったい何者なのか、と改めて疑問が湧いたが、聞いても無駄だろうと何も言わずにいた。


「ちと気になるな、明日は儂も同行しよう」とレジーナが言うので、明日は三人でホンヘイ老人の所へ向かうことになった。


途中シルが部屋に入って来て、

「レジーナよ、主の国では聖獣は神として扱われてるらしいぞ」と珍しく、ちょっとハイテンションで話している。

「そうなのか、だが神と言うのは力だけでは信仰は続かないぞ、案外辛い物らしい」とレジーナが言っている。

シグルは、うんうん、もしシルが単独で元の世界に行っても、食っていけねえだろうな、と同意していた。


次の日、三人はシグルの部屋に集合していた、

部屋から、ワープ魔法で直接ホンヘイの小屋に行こうとしているのだ。

シグルが魔導書を取り出すと、ページが開き、ワープ用の魔法陣が床に現れた、

そこに、ホンヘイ老人から教えてもらった暗号を、指に魔力を込めて書き足しいく。


「これで行けるはずだ」とシグルが言うと、

「大丈夫なんだろうな、儂はこの手の魔法に疎いからな、よく判らん」

レジーナが不安そうに言う、

「昨日の魔法陣に似てるのは確か、多分なんとかなる」とシルが言う。

「なんとかでは困るんだがな」とレジーナ

「大丈夫だよ、大部分は魔導書が描いてくれたんだ、行き場所にある魔法陣の暗号だけ書き足せばいいんだから、多分」

とシグルは初めての移動魔法に、本音では少し不安があった。

だが、徒歩で行こうにも場所が判らないので、この魔法陣に入るしかなかった。


じゃ、行こう、と一斉に魔法陣に入る、

青白い光につつまれ、光が消えると無事ホンヘイ老人の小屋の前に付いていた。


「よし、成功だ」シグルは心底ほっとしていた。

「ほう、これは便利だな、魔素魔法にもこんな魔法があったか」とレジーナは感心していた。

「よかった」とシルはボソっと呟いていた、本当はかなり不安だった様子だ。


三人がガヤガヤとしていると、小屋の中からホンヘイ老人が出てきて少し驚いたような顔で近づいて来た。

「これはレジーナ様、おいで頂き光栄です」と昨日のシグルとシルに対する態度とは全く違った様子でレジーナに挨拶してきた。

「ほう、儂を知っておいでか、随分と前からここに居られるとみえる」

レジーナは少し意外そうに答えた。

「それはもう、あの戦の時は儂もあの場に居りましたゆえ、あなたに救われた一人なのですじゃ」


なに?何の話をしているんだ、一緒に旅をしているというのに俺は何も聞いてないぞ、

シグルは、これは一体どういう事なんだ、とレジーナを横目で睨みつけた。

「わ、わかった、わかったから、後で話す、そう睨むな」とバツが悪そうにレジーナは言った。


小屋に入ると、昨日の猿が今日も小さな体で器用にお茶を運んできてくれる、

すると、今日もシグルの風防から妖精達が顔を出した、この猿が気になるらしい。

「ほう、妖精付きの猿かの、精霊の森以外で妖精付きの獣は珍しい」とレジーナが猿の様子を見て言った。

「いつからか、この小屋に居つきましてな、ククと呼んでおりますじゃ」

ホンヘイ老人が笑いながら紹介する。

シルも、今日は昨日と違いリラックスしているようで、「クク」と小さな声で猿の名を呼び、撫でたそうに手を伸ばしていた。


お茶を飲み、それぞれ自己紹介をすませると、

「二度の転移と聞いてな、ちと気になって、今日は付いてきてしまった」とレジーナが切り出した。

「いや、昨日はシグル殿に久しぶりに異界の話をききましてな、儂の方も調子に乗って色々話してしまいましたわい」

とホンヘイ老人は頭を撫でている。

「ご老人、あなたをこの世界に呼んだ神の名はわかるか、二度の転移というのは聞いた事が無くてな」

「そうですか、あの時の神の名はアマト様と言われました、余生を送るならこっちに来てくれぬかと言われましてな」

「アマト様?あの方が転移に関わったのか、驚いたな」


なんだこの会話は、これではレジーナは神様と知り合いみたいじゃないか、シグルは予想外の展開に困惑していた。


「アマト様は調和と知識の神、天界では穏健派として知られておる、今まで転移などに関わったとは聞いた事が無かった。他に何かおっしゃってなかったか?」

「特に何かせよ、ともおっしゃらず、人里離れた場所にと願うと、そのようにして下さいました」

「ふむ、そうなると召喚魔法に答えた訳では無いようだな、なにかお考えがあったのであろうな」

「はい、儂もそこが気になっておりますのじゃが、はて、何を成せばいいのか判らず、好きにさせてもらっておりまする」

レジーナはそこまで聞いて、少し考え込んでいる様子だった。



「あー、あー、あー、ちょっといいか、さっぱり会話が見えない、レジーナ、一から全部、この世界の初心者に解るように説明してもらいましょうか」

シグルは、シグルに何の説明もしようとしない二人に焦れて、苛立ちながら会話の中に割り込んだ。


「わかった、わかった、そう怒るな、今説明する・・では、改めて名乗ろう、儂の名はレジーナ・ネイスト、元は工芸と武具の神、ハシスアベブ様に仕えていた天界の大天使じゃった。」


元大天使・・・・ど、どういう事なのかなあ?






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