彼女は彼にそう言った。
やっと出会います。ヒロインっぽい女の子!あさひは小さいのでヒロインにはならないかも?まあ私の気分でそれは変わりますが(笑)。つまらない初投稿作品ですが少しでも楽しんで読んでいただけると嬉しいです。
ただ立ち尽くしていたおれはふと我に返った。気にしても仕方ない。終わってしまったものはどうにもならないのだ。
そうやって気持ちを切り替えて、学校に向かおうと振り返るとそこには1人の女の子が立っていた。今度は小さくない、しっかり成長している女の子。おれと同じ学校の制服を着た彼女は肩にカバンをかけ、スマホ片手におれを茫然と見ている。
ほんのり青みがかったロングの黒髪はとても細く光沢を感じさせる。強く風が吹くとなびいて柔らかさと細さを強調させる。
これ一部始終見られてたか…………。
ちょっと待てよ。いつから見てた?これ初めから見られてたらおれ小さい女の子に話しかけて連れまわしてたヤバいやつみたいじゃん。学校で言いふらされでもしたらもう残りの2年間ロリコン呼ばわり。おれの高校生活終了のお知らせアナウンスされちゃうよ。
おれがそうやって頭を悩ませていると彼女はこちらに歩みを進めてきた。
そしておれの前で立ち止まりこう一言。
「あなた、子供は好きなの?」
はいっ!アウトォオオおおお!
おれの高校生活ゲームセットしました。ロリコン認定確実じゃん。どうしよっかなもう今日は帰ろっかな。そんで引きこもっちゃおうかな。
子供好きなのとかそれはもう一部始終見てた人の質問だろ。好きって言ったらもうおれ確信犯になっちゃうよ。
でも子供が嫌いな訳では決してない。妹もいるし小さい子の世話にも慣れてるからどっちかって言えば好きかも────ってそうじゃない。
でもどうやって答えればいいの?好きって言ったらロリコン認定。嫌いって言ったら薄情なぼっちニートの称号が与えられる。
「ねぇ、わたしが聞いてるんだけど。あなたに話しているのよ。無視はあんまりじゃないかしら」
おれがアホな考えを巡り巡りしていると彼女はもう一度口を開いた。はきはきと話す彼女は少し腹立たしげだ。これは答えなきゃいけない案件らしい。どうしても前の二つの称号からは切り抜けなければならないおれは回答を濁した。
「嫌い……ではない」
「そう」
意外と彼女の反応は素っ気なかった。その声音からは納得したのか疑問に思ったかは読み取れなかったが、変な誤解はされてないようだったので安心した。
「じ、じゃ、じゃあおれはお先に失礼します。遅刻したら面倒なもんで」
女の子と話すというのはまだおれにはあまり耐性が付いていない。少々噛みながら話すおれ。一番最後に女の子と話したのなんか中学二年の冬だ。
ふと蘇る過去の記憶。
ねえ、次の移動教室どこだっけ?
それは背後からかけられた言葉。近くに自分以外の人間はいないと察知したおれは声の主である女子に振り返って。
あっ、ええっと。か、家庭科室じゃなかったかな?
えっ
今思い出すだけでも寒気がする気まずい空気。目があったときのあの女子の「どうしたんだろこの子」みたいな視線。そして背後からやってくる女子の友達とのなんとも言えん無言の異空間。その日の夜は恥ずかしすぎてベッドの上を枕抱えて転がりまくった。
それは置いといておれは足早にその黒髪の彼女との気まずい場所を立ち去ろうとすると彼女はつぶやくように言った。
「わたしは好きよ。こども。」
彼女からひっそりとだがしっかりと放たれたその言葉。そう言った彼女の目をおれは綺麗だと思った。
何か実体のあるものを見ている訳ではないがしっかりとまっすぐ空に向けられた視線。髪の色によく似たその優しい瞳の可憐さはおれには文字にも言葉にも表せなかった。
よく見てみるとめちゃくちゃ美人で可愛い。目鼻立ちもくっきりとしているし、すらっとしたスタイル。滑らかな肌はどれだけ拡大しようと凹凸がわからないほどにきめ細かい。制服はきちんと着こなされており、真面目さが感じられる。もう少し胸があれば完璧といった見た目だろうか。
胸元のリボンが赤色ということはおれと同じ二年生。でもこれだけの美少女の存在に1年間も気づかないとはおれの美少女センサーはまだまだだなと思う。
彼女は満足したのかそれともおれとこれ以上話したくなかったのか、何もなかったように学校に向かって歩きだした。おれも少し距離を開けて学校へ向かった。
今日はやけにみんな気になることを言い残してく日だな