【5】世界最強の戦士ワルキュリア=ドラクルス
エリナはまだ子供だと言っても。ここで甘えた返事をすれば数日はお金が浮くかも知れない。そんな事も考えたその時
(ハッキリと言うわ。あなたには全然!将来性を感じない!別れましょ。ここのお代は払ってあげるから。)
向こうの世界でフラれた彼女の言葉が頭を過った。もしかしたら、誰かに甘えて生きてきた。そんな考え方がだらしないぼくの貧しい原因だったかもしれない。その考えがぼくの心で小さな炎を灯し。ぼくはエリナに向けて
「違う!ぼくは自分の手でお金持ちになるんだ!絶体に!」
感情のままに大きな声を出してしまった。エリナは固まってぼくの事をポーッと見ている。すると宿屋のドアがバタンっと激しく開く音がした。ぼくの部屋のドアの前に立つエリナは振り返り
「いけない!世界最強の戦士ワルキュリア=ドラクルスが帰ってきた!」
ドアの音に我を取り戻して口から出た言葉に、ぼくは気持ちが引っ張られた。
「エリナ。世界最強って。そんな凄い人が居るの?」
「世界最強は本当だけどワルキュリアは凄くは無いわ。」
そう言いながらエリナはドアを開けると。靴を脱いで音を立てずに身を屈めて歩く女戦士の姿が有り。ドアを開けたエリナと目を合わせるとその女戦士は立ち止まり動きが固まった。
「ワルキュリアさん。コソコソしてるって事は今日もダメだったんですね。今日お支払い頂かないとご飯は出て行ってもらいますよ。」
「わーっ!ゴメンナサイ!ゴメンナサイ!エリナ様!明日には支払いますので!」
「昨日もそう言ってたじゃないですか!」
大きな身体を床に付け。ウソ臭いが、泣きながら土下座をしている。ぼくはそんなワルキュリアを見て、エリナに
「ねぇ?この人、本当に世界最強の戦士なの?」
エリナは呆れた顔でぼくに
「ワルキュリアは世界最強で有名よ。ただし見ての通り凄くは無いの。1つは強過ぎて魔王すらワルキュリアから逃げて回るの。だからハンターの仕事をやっても魔獣や魔物は逃げ出して収入が得られないの。」
「それだったらお城で衛兵とかやれば良いじゃん。」
「それは2つ目。ワルキュリアは世界最強だけど、物凄くアホなの。衛兵になっても規則や軍略を覚えられずに、剣術になると手加減も出来ずに他の兵士を怪我させたり。王族の人を捕らえたりして直ぐにクビになっちゃったの。」
「勿体無いにも程がある......。」
そう話しているエリナの足にワルキュリアはしがみ付いてお腹をグーーッと鳴らしながら支払いの延期を嘆願している。
エヴァンス(10才)
銀貨30枚
銅貨13枚
木綿の服×2
柔らかい靴×1
青い布×1
皮の袋×1
パン×1
【人脈】
露店商人の男 ジダン
宿屋の娘 エリナ