【33】ゲイルーク商会
ぼくはクリストフにエヴァンス商会を乗っ取られ。知恵を借りようとフロイツ商会へと足を運んだ。
フロイツの事務所のドアをノックし。戸口てフロイツから
「どちら様でしょうか?」
その声に
「ぼくです。エヴァンスです。フロイツ様。」
「やあ、エヴァンス君。君が私に話せる内容はもう無いでしょう。エヴァンス商会が君の物では無くなったと言う事はそう言う事です。」
戸口越しで放たれた言葉は、ぼくには耐えられる言葉では無かった。ぼくはもうフロイツさんと仕事の話をする事も出来ない。
ぼくは色んな物を油断から奪われてしまったのだ。そう自分に言い聞かせるが納得出来ない心のざわつきがいつまでも燻った。
いく宛も無い。頼る宛も無い。そう気付いてしまった。
今までの商売の事を思い出しながら。ぼくに残った自分の家へと帰った。ぼくはベッドに横たわります。ポケットから名刺入れを取り出して壁に投げ付けた。
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ぼくは特にやることも無く。何日も過ごした。郵便受けを見ても新聞がかさばるばかりで誰からの便りも無い。
「ほら、ぼくなんか居なくても世界は回るよ。」
そう呟いて。1番新しい新聞を広げると、目を疑う記事が有った。クリストフ=アルケミアが一昨日にドルトリア川で水死体で発見されていた。そしてエヴァンス商会は副社長のゲイルーク=ゲシュテルが社長に就任し、社名も『ゲイルーク商会』と変更するとの事であった。
この数日の間に世の中は激しく動き。ぼくのエヴァンス商会は完全に消えてしまった。ぼくはテーブルでお茶を飲み。
「もうぼくは働かなくても生きていけるから良いや。」
そう自分に言い聞かせる様に呟いて。趣味でも見付けようと町の本屋に出掛けた。
【完】