【30】思いもよらぬ商談
フロイツは翡翠で出来たグラスを手に取り
「素晴らしい調度品でしょ。まあ、売り物なんですがね。それよりもそこに座ってください。」
そう四角いテーブルに案内された。ぼくが椅子に座ると、フロイツはティーカップにコーヒーを淹れて持って来てぼくの前に置くと。自分でも飲みながら
「これはコーヒーと言う物です。慣れないと少し苦いですが、どうぞ。」
そう言いながら向かい側に座った。僕はカップを両手に持って、少しコーヒーを口に含んだ。少し酸味が強いが懐かしい味が口の中に広がった。そしてフロイツは
「私としてはあの『シチリン』と言う移動式の焜炉を3,000台は欲しい。君は1台を銀貨1枚で売っていたらしいが。どうだろう、銅貨10枚で私に譲ってくれないか?」
「フロイツ様、お世話になっている身ではございますが。1台を銅貨10枚は採算を割れてしまいます。最低でも銅貨25枚は欲しい所です。」
「いやいやエヴァンス君。見た所、材料のほとんどが土で出来ている。それは私達が思っているよりも安く作れるのでは無いですか? 出せても銅貨12枚ですよ。」
「いえフロイツ様。あの土は耐熱性が有り加工に適した土で無いといけません。それに通風孔を開けた状態で耐久性を保つ為の特殊な技術を要しますので、その様に安くもございません。今後の事を考えれば、ぼくも銅貨22枚までは。」
「と言う事はエヴァンス君の妥協点は銅貨20枚と言う事ですね。判りました。銅貨20枚で決定と行きましょう。それではこのシチリン3,000台を銅貨20枚で発注いたします。この契約書にサインをお願いします。」
フロイツは微笑み。ぼくに契約書を差し出した。ぼくは契約書を受け取り目を通し、そこには間違いが無い事を確認した。そしてフロイツへ
「こんな契約書を準備出来ている。と言う事は全てがフロイツ様の計算通りだったみたいですね。」
そう笑いながらサインをすると。フロイツはぼくに
「君が優秀で有る事を見越しての計算です。誇ってください。」
と笑いながら契約書を受け取った。そして契約を締結すると、ぼくはフロイツの事務所を後にした。その時にぼくを見送るフロイツは
「エヴァンス君。商人の世界へようこそ。」
そう呟いて。優しい笑顔でぼくを見送っていた。
ぼくはフロイツから見送られて、宿屋への帰り道に
(銀貨にして2,000枚、金貨にして40枚だ。これでドルトリア王国の営業許可も取れる。)
と計算しながら帰り。宿屋でやっと回復したワルキュリアとポポロを連れてマリシア領でお土産にカツオダラの干物を15枚とお酒を銀貨2枚で買い。もう一度ドワーフの村へと飛んでもらった。
エヴァンス(10才)
銀貨85枚
銅貨12枚
木綿の服×2
柔らかい靴×1
青い布×1
皮の袋×1
紙×10
ペン×1
インク×1
白いシャツ×1
紺色のジャケット×1
七輪×1台
【人脈】
露店商人の男 ジダン
露店商人の男 トルポ
宿屋の娘 エリナ
宿屋の親父 ガルボ
世界最強女戦士 ワルキュリア
フロイツ商会会長 フロイツ
旅芸人ピストリオ一座
モンパカ車屋 ポポロ
ドワーフ ヨサーク、ゴサーク




