お金が有れば!
(世界が大きく見える。しかも何だか古臭い。煉瓦造りや、木で作られた建物。そして街を歩く人々も大きいし見たことが無い服を着ている。)
ぼくは不思議な状況に窓ガラスに映る自分を覗き込んだ。
そこには金髪に青い目の子供の姿が映っている。右手を動かすと窓ガラスの子供も右手を動かす。顔を触れば子供も顔を触る。
(僕だ!僕はこの金髪で青い目の可愛らしい10才ぐらいの男の子になったのだ。)
▽▲▽▲
僕は昨日の夜まで『大野タケシ』35歳の窓際サラリーマン。彼女は居るけど結婚は出来なくて。独身のアパート暮らしであった。
僕は昨日、彼女とデートをしていた。雨の日に二人でハンバーガーショップへ入り。行列に並んでチキンチーズバーガーセットを2つ頼んだ。
この後に二人で映画でも観に行こうと僕は考えていたのだが、彼女の言葉で僕の1日は変わった。
「付き合って半年だけどさ。35歳でデートにハンバーガーショップって無くない?」
「えっ?そうかな?」
「社会人に成って10年以上だよ?タケシってさ貯金って幾ら有るの?」
「あー...。ちょっとは......」
「ヒロミの彼氏、車買ったらしいよ。今度結婚して家を建てるんだって。」
「そうなんだ......。凄いね......。」
「『凄いね』じゃないわよ。ハッキリと言うわ。あなたには全然!将来性を感じない!別れましょ。ここのお代は払ってあげるから。」
僕の彼女はそう言うと、千円札を置いて帰って行った。僕は追いかける事も出来ずに一人でチキンチーズバーガーに噛り付いた。
気が付くと周りの人達は僕の事を見ながら、ヒソヒソと何かを話している。視線が痛い......。ぼくはサッと千円札をポケットに入れた。
それから何回か彼女に電話をしても着信拒否。メッセージもブロック。本当に終わっちゃったのだ。
「チクショー!何だよそんなにお金が大切なのかよ!そうさどうせ、ぼくは貧乏なうだつの上がらない男さ......」
自分で言っていて悲しくなりながら。ぼくは雨の中を傘もささずに濡れながら駅へと向かった。
その途中に本屋が在り。ぼくは雨宿りがてらに中へと入った。そこで
『誰でも解るお金のひみつ。』
と書かれた本が目に入った。ぼくは
(そうだ!お金持ちに成って見返してやる!)
そう思い。お金に関する本をぼくはしこたま買ったのだ。
ぼく
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