20.
「……応急処置はこれで済んだな」
ゴダマの声に頷いて返す。目の前で倒れるリスティの身体は、先刻のマグニコアに受けた凄惨な暴力を影も残していなかった。
小さな傷跡は勿論、大きな外傷すらも癒えている。光教のトップである最高司祭の名は、どうやら伊達では無いようだった。
幾分か穏やかに見える顔つきで眠るリスティを確認したゴダマは立ち上がり、俺へと厳しい視線を投げかけた。
「して、勇者ソレイユ。お前を取り巻く状況は理解したが、お前は一体どうするつもりなのだ。魔王の呪いは解呪出来るのか?」
「不可能じゃない。ただ、色々と制約がある」
俺はゴダマに、自身で作り上げた魔王の呪いの解呪方法を説明する。
一つは、「解呪の為の魔方陣を生成する」という事。これは地面や壁に描けば良いだけなので、さほど難しくは無い。
しかしもう一つ、厄介なのは「無抵抗の相手に、一時間ほど魔力を送り続ける」という事だ。単純に時間が掛かる上に、更に面倒な制約が着いている。
「……無抵抗?」
ゴダマの顔が、更に険しい物となる。
無抵抗。即ち俺の送る魔力に一切の抵抗を施さない事。ある程度魔法の力を扱える者であれば、自分に向けられた魔法の作用に対し抵抗を試みる事が可能だ。熟練した魔法使いは、相手の放った魔法を打ち消すような事も出来る。
呪いを解呪する為には、本当に微量な魔力といえども抵抗されるわけにはいかない。魔法の扱いを知らない一般人や戦士ならともかく、“姫巫女”と称されるリスティならば確実に魔法を打ち消しにかかるだろう。
「俺は自分の汚名を晴らす為にこの場所に来た。まずは仲間を、そして最後には世界の人々を呪いから解放したい」
「何故、リスティリアを?」
「リスティは俺にとって掛替えの無い仲間だ。呪いさえ解除すれば、俺に協力してくれると思ったんだ」
ゴダマの気迫に負けぬよう、俺も思いの丈を正直にぶちまける。
全く表情が動かないゴダマは、まるで試すような視線を投げかけ、続けた。
「貴様とリスティリアは、所詮一年間共に学んだ程度の仲だ。」




