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社畜・イン・ファンタジー ~異世界ブラック冒険譚~  作者: 揚げたてアジフライ
第五章 マーク・マルティネス
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第91話 父と子と

前回から間隔が空いてしまいすみません。

何話で完結するか未定なので、しばらくはマルティネス領での話が続きます。


※次話予定は後書き部分に…(2023.4.27)


 マルティネス領、ラティウム。

 ダルク地方において、中央都市に次いだ領地を持つ大都市である。

 代々、マルティネス家やその血族が領主を務めており、その家系からは、多くの『剣聖』と呼ばれる剣の達人を輩出している。

 また、ダルク地方を守護する聖騎士団の本拠地でもある為、聖騎士やその家族が人口の大多数を占める。


「―――とまぁ、この領地の特徴はそんなところだな」


 俺達へ向け、マークはそう言って話を終える。

 マルティネス家の執事、ジェバンニの操る馬車に揺られて数日。

 俺達は、特に問題なくマルティネス領へと辿り着いた。


「へぇ、流石に大きな街だね」


「まぁ、ダルク地方でも有数の大都市だからな。とは言え、騎士団の人間が生活するだけの街だから、大して面白味も無いのが難点だが……」


「同じダルク地方出身の私からすれば、贅沢な悩みだと思うわ……」


「そう言えば、クロエもこの地方の出身だったね」


「ええ。でも、どこにでもあるような小さな集落だったから、小さい頃は中央都市やラティウムに憧れてたわね……」


「ああ、田舎の出身だと、都会には憧れるよね……」


 俺は、クロエへ相槌を打ちながら、街の様子を眺める。

 賑わうラティウムの街は活気に溢れているが、グスタの街とは異なり、道行く人々に冒険者と思わしき格好の人物は少ない。

 その代わりとして、巡回中と思わしき騎士達の様子が多く見受けられた。

 白く輝く鎧姿に、憧れの目を向けている子供たちの姿が微笑ましい。


「―――皆様、間もなく本邸へ到着しますぞ」


 ジェバンニの言葉に視線を前に向けると、そこにあったのは純白の壁が特徴的な大邸宅だった。

本邸と思われる屋敷は、グスタの街でも有数の大貴族であったロックウェル家と比べても、そう大差ない大きさだ。

だが、高い塀に囲まれた土地に限って言えば、ロックウェル家の数倍の広さがありそうだ。

本邸に限らず、敷地内には複数の大きな建物が付設されており、その手前では騎士団員達が修練に励んでいる。

 マルティネス家の本邸は、ラティウム聖騎士団の本部も兼ねているそうなので、その騎士達の修練場と言った所だろう。

 

 広大な敷地内を馬車でしばらく進むと、俺達はようやく本邸へと辿り着いた。

 城と見紛う程に大きな屋敷の手前には、メイド服や執事服を着た従者たちが出迎えている。

 だが、その従者たちの真ん中、ちょうど屋敷の大扉の前の辺りに、騎士鎧を着た人物が立っているのが目に映った。


「待っていたぞ、マーク……!」


 屋敷へ辿り着いた俺達を迎えたのは、白い騎士鎧に身を包んだ男だった。

 聖騎士団の関係者なのだと思うが、身に纏う鎧は他の団員達よりも意匠が凝らされており、その男が、恐らくは騎士団の中でも上官にあたるのだろうということが伺える。

 白銀の髪をオールバックにした彼は、剣呑な雰囲気でこちらを見つめていた。

 アイスジェイルで出会ったモリス老と同じく、強者特有のオーラのようなものすら感じられるが、一体何者なのだろうか。


「親父……!」


 どうやら、目の前の男は、マークの父親だったらしい。

 つまりは、この男が、聖騎士団の団長でもあり、領主を務めると言うロムルス・マルティネスと言うことだ。

 今回の一件のきっかけになったとも言えるロムルスは、一体どのような感情を持ってマークのことを出迎えているのだろうか。




◆◆◆




 ロムルスより屋敷の中へと通された俺達は、屋敷の大食堂へと連れられた。

 とは言え、とても歓迎の食事会が開催されるといった雰囲気ではなく、ただひたすらに緊張した空気が部屋に漂っている。


「お前が家を出奔してから5年。一体どこで何をしていたのか、聞かせて貰おうか」


 最初に口火を切ったのはロムルスだった。

 どうやら、何年もかけて捜索をしてはいたものの、マークの近況については知らないようだ。


「どうもこうも、家を出て数年は金を稼ぐために傭兵のようなことをしていた。その後は、最近になって、グスタの街で冒険者になった。それだけだ」


「グスタの街と言うと、お前が活動していたのはアルクス地方だったという訳か。どうりで、ダルク地方を中心に捜索しても見つからない訳だな……」


「ふん……。捜索なんて言うが、この継承の儀に参加させることだけが目的だろうが……」


「……当たり前だろう。私には、領主として、聖騎士団長として、マルティネス領の未来を担う後釜を選抜する為の責務がある」


 思いのほか、双方とも冷静な様子で話し合いは進んでいる。

 とは言え、ロムルスとマークが放つ独特な空気感に、俺の胃がキリキリと痛んだ。


「剣を捨てたお前であっても、本家に連なる者として、継承の儀には参加しなければならない。とは言え、傭兵や冒険者として過ごしてきたお前では、兄達どころか、分家の者にすら勝てんだろうがな……」


 ロムルスは、ぴしゃりとそう言い放った。

 確かに、マークはこの土地で騎士や領主として生きるのではなく、冒険者として活動する道を選んだ。

 だが、マークの選んだその道が、他の候補者達の進んできた道に劣るとは、俺は思わない。

 傭兵で培った経験、冒険者として活動してきた経験、そして、この地でかつて修練に励んでいた経験の全てがあって、今のマークを形作っている。

 そんなマークの実力を知らず、ある種の決めつけで否定することに、俺は無性に苛立ちを覚えていた。


「……安心しろ。次期領主なんて、こっちから願い下げだ。ただし、この継承の決闘だけは、俺が勝たせてもらう」


「何を言い出すのかと思えば、馬鹿馬鹿しい。分家の二人は兎も角、聖騎士として真っ当に修練を積んだ、ユリウスやネロに、冒険者上がりのお前が適う筈がないだろう……!」


「そう思うなら勝手にしろ。油断したあいつらの鼻っ柱、きっちり叩き折ってやるぜ」


 それだけ言い放つと、マークは静かに席を立ち、食堂を後にした。

 そんなマークの姿を、ロムルスは何も言うことなく静観している。

 そして、大食堂には、ロムルスと、俺と、クロエの三人だけが残された。


「……すまないな。せっかくの客人に、恥ずかしい所を見せてしまった」


 意外なことに、張り詰めた空気を破ったのは、ロムルスのそんな言葉だった。

 先程までの険しい表情とは打って変わり、温和な笑みすら浮かべている。

 こちらが彼の素顔なのだろうか。


「いえ、そんなことは……。そもそも、ご家庭の事情に突っ込んでいくべきではないでしょうし……」


「そう言ってもらえると助かるよ。君達は、マークの友達なのかい?」


「関係性としては、パーティの仲間ですね。一応、俺としては、マークの事は相棒だと思っています」


「そうか……。上手くやっているようで安心したよ。あいつは、冒険者としてやっていけそうかい?」


「ええ、マークは一流の冒険者です。いつも助けられていますよ」


 ロムルスの様子に毒気を抜かれながらも、俺はそう答える。

 どうにも、この男の真意が掴めない。

 マークとの対話で見せた表情より、今の方が素顔に近いような気がするのだが、一体何を考えているのだろうか。


「……マークの事、一体どう思っているんですか?」


「一人の父親として言わせてもらうなら、可愛い息子だよ。生憎、騎士には向いていない性格だが、剣技に関しても申し分ない実力だ」


「なら、さっきは何故あんな態度を……?」


 マークのことを大切に思っていることは、間違いないように思える。

 だが、そう思っているのならば、どうしてそれを伝えないのだろうか。

 実力を正当に評価されていれば、マークもこの家を出奔しなかったのではないかと思うのだが……。


「マークから聞いているかもしれないが、私はこの地方を守護する聖騎士団の団長も務めていてね……」


「ええ、伺っています」


「そこが中々に難しい部分なんだ。彼の戦い方を、父としては評価したいのだが、私にも騎士団長と言う立場がある。騎士道から外れるようなことを、おいそれとは容認できない」


「それが、マークへの態度の理由だと……?」


「そんなの、流石にアイツが可哀想だわ!」


 ロムルスの言葉は、上に立つ者としては正しいのかもしれない。

 自身の息子であるからと言って、偏った評価をしてしまえば、それは周囲からの反発を生む結果につながりかねない。

 騎士団長という立場のロムルスであるからこそ、その一線を超えることは難しいのだろう。

 だが、マークの友人として、相棒としての俺の意見は、やはりクロエと同様だった。


「私も、親としてどうなのかと思うよ。だが、先程も言ったように、マークのことは評価しているんだ」


「と、言うと……?」


「策を弄し、相手の裏をかくような戦法は、この領地では好まれない。だが、そんな意見すらも跳ねのけて、マークが実力を示す機会があったら、どうなると思う?」


「マークの力が、大々的に評価されることになる……?」


「ああ、その通りだ。私は、その機会こそが、この継承の儀であると考えている」


 なるほど、そう言う理由があったのか。

 確かに、強者揃いのこの決闘を制し、マークが勝ち抜くことができれば、周囲の人間としても、その実力を評価せざるを得ないだろう。


「でも、そんな理由があるなら、それをアイツに伝えてあげればいいんじゃないの……?」


 そう声を挙げたのは、他でも無くクロエだった。

 不思議そうな表情を浮かべるクロエに、ロムルスが口を開く。


「勿論、それも一つの手段だとは思う。だが、それがマークの為になるのかどうか。それに、聖騎士として修練を積んできたユリウス達の手前、彼だけを評価するわけにもいかなくてね。色々と考えた結果、こんな遠回しな手段を講じているという訳だ」


「そういうものなのかしら……」


「騎士団長などと言う立場で無ければ、もう少し真っ当な対応をしたいところではあるのだが……。そういう事情なので、このことは、できればマークには内密にして欲しい」


「ええ、勿論です。きっと、それがマークの為にもなるんでしょうし……」


「ありがとう。恩に着るよ。実は、冒険者になったと聞いた時は、流石にどうしたものかと思ったんだが、彼は良い仲間に恵まれたらしい」


 そう言ったロムルスは、感慨深そうに目を細めた。

 最初の印象は気難しそうにも見えた彼だが、どうやら、しっかりとマークのことを考えているらしい。

 元はと言えば他人の家庭事情のことなのだし、ここはマークの父であるロムルスの考えを尊重して良いだろう。

 マークの性格上、きっと今の状況の方が力を発揮できるだろうしな。


「では、私は執務があるので失礼するよ。こうして直接会う機会は中々取れないと思うが、もし何かあれば執事長のジェバンニ辺りに伝言でも頼んでくれ―――」


 そんなこんなで、俺達とロムルスの顔合わせは幕を閉じる。

 最初はどうなることかと思ったが、ロムルスは、マークのことを想う良い父親らしい。


 そして、数日もすれば、いよいよ継承の儀の当日が訪れる。

 強者揃いの決闘は、きっと白熱した戦いになるだろう。

 何事も無く、順調にマークが勝ち抜くことができれば良いのだが……。

 そんなことを考えながら、俺達は大食堂を後にするのであった。


次話は土日どちらかを予定していますが、執筆状況によっては投稿が遅れる可能性があります。

詳細が決まり次第、こちらに追記しますので、気になる方は確認お願いします。


また、少しでも面白いと思って頂ければ、評価、感想、ブックマーク等頂けると励みになります。

よろしくお願いします。


※2023.4.27追記 

約一年お待たせしており申し訳ありません。

放置しているにも関わらず、継続してブックマークして下さっている皆様、新規で登録して下さった皆様には改めて感謝申し上げます。

次話ですが、私事が落ち着いてまいりましたので、書き終わり次第投稿したいと思います。

GW期間中に1話、筆が進めば2話、3話と投稿させて頂きます。

(PCの調子が悪いのでもしかするとケータイからの投稿になり、読みにくいかもしれません)

※2023.5.8 追記

結局GWも殆ど仕事になってしまい、書く時間の確保が難しかったです。とりあえず木曜日が休みなので、それまでに投稿できるように善処します


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