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社畜・イン・ファンタジー ~異世界ブラック冒険譚~  作者: 揚げたてアジフライ
第五章 マーク・マルティネス

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第90話 風雲急

少し短いかもしれませんが、章タイトル本編へ向けた1話目です。

まだ決めあぐねている部分があるので何話掛かるか分かりませんが、この展開が終われば第四章完結です。


※1章分を間章であるEX①まで含め、全て加筆・修正終了しました。


 アイスジェイルから帰還して数週間が経過した、ある昼下がりのこと。

 俺は特にすることも無く、ギルドの酒場スペースで本を読みながら時間を潰していた。

 普通であればパーティの面々を集めてクエストに出かける所なのだが、今日はマークにもクロエにも私用があるとのことで、休暇日となったのだ。


(そろそろ潮時かな……)


 ドリンク一杯だけで朝から居座っていたので、流石にそろそろ店主からの目線が痛い。

 時間的に都合も良いので、今日はここで昼食を済ませようかと思っていた時だった。

 ギルド入り口のドアが勢いよく開かれ、一人の人影が転がり込んでくる。


「はぁ、はぁッ……!流石に撒いたか……!?」


 ツンツンと逆立った銀髪に、軽薄そうにも見えるが端正な顔立ちの青年。

 全体的に軽装ではあるものの、腰のベルトにはナイフが携えてあることから、冒険者、それも盗賊シーフか何かを担っているのであろうことが伺える。

 そう、息を切らしてキョロキョロと辺りを見回す男の正体は、俺のよく知る人物だった。


「……って、マーク?そんなに焦って、何かあったの?」


 何せ、ギルドに駆け込んできたのは、パーティメンバーかつ、我が相棒とも言える存在である、マーク・マルティネスその人だったのだ。

 今日は何か用事があると言っていた筈だが、何かあったのだろうか。


「ああ、ヨシヒロか。いや、まぁ、ちょっと立て込んでてな……」


 マークはそう言って、何やら答え辛そうに頭を掻く。

 盗賊と言う仕事柄、裏関係のトラブルにでも巻き込まれたのかと思ったが、マークに限ってそんなヘマをすることもあるまい。

 普段クールな彼をここまで焦らせるとは、一体何事だと言うのか。


「ついに見つけましたぞ!マーク坊ちゃまッッッ……!!!!」


 強烈な叫び声と共に飛び込んできたのは、執事服に身を包んだ老紳士だった。

 荒くれ者達の集う冒険者ギルドには相応しく無い姿の彼だが、どうやらマークを探していたらしい。

 名前を呼んでいることからも、やはりトラブルなどではなく、知り合いのようではあるが……。


「……という訳なんだよ」


「いや、どういう訳……!?」


 やれやれとばかりに首を振るマーク。

 全くもって理解の及ばないままに、俺の平和な休日は終わりを告げるのであった。




◆◆◆




「ふむ、この店なら落ち着いて話せそうですな……」


 謎の老紳士と共に移動した俺達が訪れたのは、アンティークな様相のカフェだ。

 見るからに洒落たメニューの数々は、俺が良く通っている食事処の価格よりも、明らかにゼロが一つ多い。

 周囲を見ても、きっちりとした格好の客層ばかりであることから、所謂上流階級向けの店なのであろう。

 執事服の紳士は兎も角、ザ・冒険者といった格好の俺達は、明らかに店内で浮いていた。


「マーク坊ちゃま、こちらの方は……?」


「……あー、冒険者仲間だ」


「ヨシヒロ・サトウと言います。マーク君とはパーティを組ませてもらってます」


「なるほど。冒険者として活動していると言う噂は、まことでしたか……」


 困惑する俺に、老紳士はジェバンニと名乗った。

 これまでのやり取りから薄々察してはいたが、マークの実家であるマルティネス家で執事を務めているそうだ。


「でも、なんでこんな所まで……?」


 マルティネス家があるのは、グスタの街から山を越えた向こうにある、ダルク地方であった筈だ。

 それに、家出同然で実家を飛び出してきたとのことで、ここ5年以上は家との関わりが一切無いと話していた。

 にも関わらず、こうして冒険者となったマークを、今になってわざわざ探し出す理由は何なのだろうか。


「実は、こう言う事情がありましてですな―――」


 ジェバンニが語った話はこうだ。

 まず、マルティネス家では、家督を継ぐ為の継承の儀を行う予定である。

 儀式では、家督の継承権を持つ者全員で決闘を行い、その勝者から次期当主を決定しなければならない。

 だが、現在の家長の息子であるマークが出奔してしまい、ここ数年もの間、儀式を行うことが出来なかったとのこと。

 マークの行方を捜し続けた結果、最近になってようやく、活躍している冒険者の特徴がマークとそっくりであると言う噂を聞きつけ、グスタの街を訪れたのだと言う。


「―――お父上もマーク坊ちゃまを心配しておられましたぞ」


「あの親父が俺のことを心配するとは思えねえが……。つまりは、さっさと俺に帰ってこいってことだろう?」


「無論、拒否権はありません。早々に、マルティネス領に帰ってきて頂きます」


「はぁ、気は乗らねぇが、仕方ないか……」


「うむ、良い心がけですな。明日の朝には出発するので、街の門の前で集合といたしましょう」


「ああ、問題ない。だが、俺が帰るのに一つ条件がある」


「条件、と言いますと……?」


「パーティメンバーであるヨシヒロと、もう一人のクロエも同行させてくれ」


「えっ、俺達も一緒に……?」


 マークが提示した条件は、俺達二人の同行。

 はっきりとは分からないが、家督の継承の儀など、血縁関係者だけで完結させるものではないのだろうか。

 俺として、別に同行することに問題がある訳ではないのだが、マークの意図が読めない。


「ううむ……。別に、血縁者以外が参加してはならぬ決まりでは無いので、恐らく問題ないとは思いますが……。一体、どういったお考えで?」


「決まってるだろ。継承の儀で行う決闘で、あいつらに勝って、実力を示す。そこで俺が継承権を放棄すれば、儀式は台無し。正式にマルティネス家と縁が切れるだろう?」


「なっ……!?そんなこと、お父上が到底認めてはくれませんぞ……!」


「ああ、そうだろうな。だが、この条件を認めないなら、俺は梃子てこでもここを動かないぜ?」


「ぐっ……!流石に、坊ちゃまが見つかったと言うのに、手ぶらでは帰れませぬ。ですが、他の継承者達も実力揃い。マーク坊ちゃまの思惑が、そう簡単に通るとは思えませんがな……」


「ふん、どうだかな……」


 ジェバンニが話すところによると、継承の儀には、マークの他に4人の参加者がいるそうだ。


 まず、次期当主の最有力候補でもあり、マルティネス家の長兄である、ユリウス・マルティネス。

 次に、マルティネス家の次男であり、ユリウスには劣るものの、戦場で数々の武勲を上げているネロ・マルティネス。

 更に、繊細かつ鋭い剣技を持ち、女性ながらに継承者に選ばれた、分家筋のエリス・アーレウス。

 最後に、暗い噂が絶えないものの、実力は折り紙付きである、分家筋のダイモス・アーレウス。

 個々で実力差はあるものの、それぞれ4人共が高い技量を持つ剣士なのだと言う。


 ちなみに、現当主はマークの父であるロムルス・マルティネスで、マルティネス領で聖騎士団長を務めているそうだ。


 実際に対峙していないので詳しくは分からないが、確かに一筋縄ではいかない相手に思える。

 とは言え、マークとて、氷獄獣ブリザードビーストとの戦いで見せた剣技は一級品であった。

 それに、彼の性格からして、恐らく、普段は使わない剣であっても鍛錬を疎かにはしていない筈だ。

 純粋な剣技では他の継承者に一歩劣るかもしれないが、そこに彼の最大の強みである知略を合わせれば、十分に太刀打ちできるのではないだろうか。


「何にしても、油断だけはなさらぬよう……。では、また明日お会いしましょう」


 そう言い残すと、ジェバンニは店の代金だけ支払い、早々に立ち去った。


「……すまないな、ヨシヒロ。俺の家の事情に巻き込むことになっちまった」


「いや、俺は大丈夫だよ。クロエも、きっとなんだかんだ言いながら許してくれるんじゃないかな?」


「ああ、そうだな。それにしても、俺が再び剣を持った途端にこれだ。まぁ、いずれは向き合わなきゃいけない問題だから、丁度よかったのかもな……」


 どこか遠い目でマークはそう言った。

 だが、俺としては一つだけ気になる部分がある。


「でも、もし勝ち抜けたら貴族家の当主になれるのに、その権利を放棄しちゃっていいの?」


「そこは何も問題無いな。あんな堅苦しい家に縛られるくらいなら、お前らと旅をして、馬鹿やってた方がよっぽど楽しいぜ」


「はは、そう言ってもらえるのは嬉しいな。儀式までに手伝えることがあったら何でも言ってよ」


「ああ、是非ともサンドバッグになってくれ」


「それは流石に酷すぎない……!?」


「冗談だよ。何か思いついたら頼ませてもらうさ……」


 そう言ったマークは、どこか遠い目をしていた。

 それも当然のことだろう。なにせ、縁を切ったつもりだった生家から急に連絡があり、自分も家督の継承の為、儀式に参加することを強制されたのだ。

 あの戦いで、再び剣を取る事を決意してくれたとはいえ、一度剣の道を外れた立場からすれば、マークの心境は複雑この上ないものだろう。

 儀式の内容が決闘であるだけに、手伝えることは少ないとは思うが、何かマークの助けになることが出来ると良いのだが……。


「後は、クロエにも知らせてやらないとな」


「ああ、そうだね。どこにいるんだろう?」


「杖の調整がしたいとか言ってたから、大方どこかの魔道具店だと思うが……」


 そんなこんなで、俺達は店を後にする。

 凄絶極める継承の儀が行く末は、まだ誰も知らない―――

 

次話、来週中に投稿しますが、仕事と私用で忙しいのでいつになるかは未定です。

詳細決まり次第、こちらの後書き欄に追記します。


また、少しでも面白いと思って頂ければ、感想、評価、ブックマーク等頂けると励みになります。

よろしくお願いします。


6/14 追:今週、仕事関係がかなり忙しくなりそうなので、投稿は土日どちらかに一話のみになりそうです。来週以降はコンスタントに週1~2話ずつ投稿できると思います。

6/18 追:思った以上に忙しいので今週は投稿が難しいかもしれません。可能であれば19日の夜か20日に投稿できるように努めます。

6/20 追:6/21or6/22と土日どちらかの二話投稿します。


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