表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社畜・イン・ファンタジー ~異世界ブラック冒険譚~  作者: 揚げたてアジフライ
第四章 銀雪と矜恃
95/137

第88話 銀の剣閃

ごめんなさい。待たせた割に短いかもしれないです。

武豊がダービー制覇したので許してください。


新規のブックマークに加え、評価までして下さりありがとうございました。

じわじわとではありますが、数字が増えていくのを見るのはとても嬉しいです。

また、今更ではありますが、ユニークアクセスも11000件を突破していたようです。


「マーク……!任せて、良いんだよね……!?」


「ああ、俺はもう逃げない。必ず、この状況を打破してみせる!」


 そう言ったマークの瞳は、確かな覚悟に満ちていた。

 その手に構えるのは、見慣れた短刀ナイフではなく、一般的な片手剣。

 その様子を見て、不安が無いと言えば嘘になってしまうのが正直なところである。

 何せ、俺の自慢の相棒は、剣士ではなく、短刀使いの盗賊シーフなのだ。

 だが、同時に、エリカとの決闘の際には、達人級とも言える程の剣技を見せていたのも事実。

 それに、現状が手詰まりであることも事実である。

 それならば、これまで命を預けてきた相棒マークの覚悟と実力に賭けてみるのも悪くは無いのかもしれない。


「……分かった。基本的な隊列は変わらないが、ここから俺達前衛は攻撃には回らず、防御に絞って戦う。だから、マークはこの先、この部隊の攻撃の要になってもらいたい」


「ふっ、責任重大だな。だが、任せてくれ。俺も、何の覚悟も無しに剣を握った訳じゃねえ……」


「頼りにしてる。頼んだよ、相棒……!」


「ああ、任せてくれ、相棒!」


 そんなやり取りの後、俺は全部隊へと作戦指針を伝達する。

 内容は、先程言ったように、攻撃役をマークだけが担い、他のメンバーはそれを全力で助ける為に動く、ある意味究極とも言えるサポート陣形だ。

 ここからは、俺達討伐隊の全員が、マークが攻撃をする隙を作る為だけに行動する。


「全体、前衛を中心に防御陣形を作れ!中衛と後衛は、強化魔法や弱化魔法で、前衛組とマーク君のサポートをメインに行動して!」


 ベルの号令と共に、戦闘は更に加速度を増していく。

 これまでと同様に、後衛からは絶え間なく強化魔法が掛けられている。

 だが、中衛もサポートに回った分、強化魔法のターゲットは前衛とマークだけの数少ないものとなったおかげで、その効果は相乗され、更に高い効果を生み出していた。

 更に、中衛部隊の面々も、攻撃を捨て、氷獄獣ブリザードビーストへの行動阻害を中心に動いてくれているおかげで、これまで以上に戦いやすい。

 今までは焼け石に水程度の効果しか見られなかった弱化魔法も、相乗効果によるものか、相手が弱っているからかは分からないが、確実に敵の動きを鈍らせている。


 継続して氷獄獣から放たれる魔法の氷塊は後衛部隊によって的確に撃ち抜かれ、強力だった爪や牙による攻撃も、こちらへ掛けられた強化魔法と、相手への弱化魔法によって、それ程苦戦せずに受け止めることができるレベルだ。

 

「蛮族よ、我が盾を見よ……!【挑発タウント】ッ!」


 【挑発】を発動し、攻撃の的を俺だけに集中させる。

 これまでなら兎も角として、今の状況であれば、俺一人でもどうにか敵の猛攻ラッシュを凌ぎ切ることが可能だ。

 襲い来る爪の連撃を、盾で受け止め、時には硬化させた腕で弾き返す。

 絶えず放たれる弱化魔法が、長時間の戦闘による疲労が、そして、これまで俺達が決死で与えて来たダメージが、氷獄獣の攻撃から、その威力を失わせている。

 この好機、見逃す訳にはいかない。


「これでも、喰らえッ……!」


 流石の氷獄獣も、不意の一撃で脳を揺らされれば、動きを止める筈だ。

 連撃の隙を縫って、俺は硬化させた拳による一撃、【鉄拳】を顎の辺りへと撃ち込む。

 唐突に襲い来た衝撃に、氷獄獣がその連撃の手を緩めた。

 だが、ここでは終わらない。ここからが、俺の本気の攻撃だ。


「まだまだぁッ……!」


 一撃、二撃、三撃……。

 生物であれば抗うことの出来ない、頭部という弱点への連撃。

 右から、左から放たれ続ける全力の殴打は、氷獄獣の脳を大きく揺らす。

 そして、絶え間なく続く猛攻によって、ついに氷獄獣がその動きを停止させた。


「今だ、マーク……ッ!!!」


「ナイスだぜ、相棒……ッ!」


 俺の掛け声と共に、これまで静かに隙を伺っていたマークが一気に駆け抜けた。

 元よりこの部隊でも随一の敏捷ステータスを強化魔法によって更に上昇させたマークが、白銀の風となって、氷獄獣までの距離を一気にゼロにする。

 そしてマークは、未だ気絶スタン効果の続く氷獄獣へ向き直り、腰の剣に手を掛けた。


「壱の型、新月……!」


 そう呟いたマークの姿が一瞬にしてブレる。

 そして、次の瞬間には、剣を収めたままの姿で、氷獄獣の後方へと移動していた。

 気絶効果に悶える氷獄獣の様子には、一見してなんの変化も見られない。

 壱の型と言っていたが、ただの高速移動だったのだろうか。そう思った瞬間だった。


『グ、グルルルアッ……!?』


 突如として、氷獄獣の右脚へ大きな刀傷が現れる。

 そう、マークはあの一瞬にして、高速の移動と居合斬りをやってのけたのだ。

 困惑の声を上げた氷獄獣に向け、マークは更なる追撃を加える。


「まだまだ行くぞ!参の型、三日月ッ……!」


 瞬間、目にも留まらぬ速度で剣が振るわれる。

 そして、氷獄獣へと、全く同時に(・・・・)、三つの傷が刻まれた。

 これまで、どうして短刀を使っていたのかと疑問に思う程に、研ぎ澄まされた剣技だ。

 疾風はやての如きマークの猛攻は、更に続く。


「次ッ!伍の型、雨月うげつッ!」


 マークが繰り出した次の技は、突きの技だった。

 だが、それもただの突きでは無い。

 神速で放たれる鋭い突きは、分厚い毛皮をも容易く貫き、無数の傷跡を生み出す。

 不規則に放たれた剣戟は、ついぞ氷獄獣の片方の視界まで奪い取った。


『グルルルオオオォォォォン……ッ!』


 しかし、氷獄獣もただやられたままではいられない。

 流石に気絶効果が薄れてきたのか、動きに冴えが戻り始めているのだ。

 だが、それでもなお、マークは俊敏な動きで氷獄獣を翻弄する。


「これでも、喰らいなッ……!肆の型、上弦の月ッ……!」


 その言葉と同時に、マークは一瞬にして高く飛びあがった。

 そして、その勢いのまま、高さを活かした上段からの一撃。

 銀色の剣閃が氷獄獣の胴体へと吸い込まれ、辺りに激しい血飛沫が舞う。

 恐らく、ここまでの攻撃で一番のダメージが入った筈だ。

 普通の魔物が相手ならば、そのまま胴を両断していてもおかしくない。


『ゴアッ……!グルルオアッ……!!!』


 マークによって放たれた神速の四連技は、確実に氷獄獣へと大きなダメージを与えた。

 しかし、それでもなお、氷獄獣は立ち上がる。


 強化魔法も加わり、マークの剣技の数々は、それ単体が必殺と言える程の威力だった。

 並の魔物であれば、単純に考えて四回は命を落としている。

 だが、俺達が相手をしているのは、伝説に謳われる魔物だったのだ。 


『グルッ、ガアアアアアアアアアッ……!!!』


 氷獄獣が、これまでとは比べ物にならない程の怒りが籠もった唸り声を上げる。

 そして、その怒りに身を任せるかのように、一瞬にしてマークへと飛び掛かった。

 白銀の毛皮を持つ獣と、白銀の髪の剣士、二つの影が交差する。

 瞬間、俺達が庇う間も無い程の一瞬にして、凶悪な爪の一撃がマークを切り裂いた。


「マーク……ッ!?」


 ここまでの攻防を静観していた俺の口から、悲鳴にも似たそんな声が漏れる。

 だが、心配も束の間、氷獄獣の攻撃によって巻き上げられた雪の中から、一つの影が飛び出した。


「―――こっちは、まだ終わりなんて言ってねぇぞ!弐の型、朧月ッ……!」


 そう、マークは、確かに切り裂かれた筈だった。

 だが、その爪が振るわれたのは、マーク自身ではなく、神速とも言える程の高速移動によって生み出された残像だったのだ。

 直前まで氷獄獣と向き合っていた筈のマークは、一瞬にして氷獄獣の背後にまで回り込み、その無防備な背中へと、強烈な一閃が放たれる。

 恐らく、弐の型とは、高速移動によって生み出した残像を囮にして放たれる剣技なのだろう。


『グッ……グルルルアッ………!』


 これまでとは違い、弱々しい鳴き声が辺りへと響く。

 そして、ついに、氷獄獣は力尽きたかのように、大きな音を立てて地に伏した。

 倒れ伏す白銀の巨体に刻まれた無数の傷跡は、今度こそ俺達が勝利したのだと言う確信を与えているようであった。


「やった……!やったぞーッ……!」


 未だに騒然とする空気の中、部隊の誰かが喜びの声を上げる。

 その感情は、次第に部隊全体へと伝播し、俺達全員が歓喜に包まれた。

 ある者は涙を浮かべ、ある者は抱き合い、己の生と勝利の喜びを噛みしめている。


 そして、一番の立役者であるマークも、流石に限界だったのか、そのまま力尽きたように雪の中へと倒れ込む。

 その様子を見たエリカが、心配そうに駆け寄っていたが、何やら言葉を交わしていることからも、大事が起きた訳では無さそうだ。

 

 そして、ざわめく討伐隊へと向け、俺とベルが、戦いの終わりを告げようとした時だった。

 

『オ、オ、オオオオオオッ……!オオオオオオオオオォォォンッッッ……!!!』


 絶望が、俺達の耳に木霊する。

 深い傷を負い、全身から血を滴らせながらも、その白銀の死神は、確かに立ち上がっていた。

 弛緩していた空気が一瞬にして凍り付き、辺りが絶望の色に染まっていく。


「嘘、だろ……!?」


 恐らくもう、これ以上の戦闘は出来ないだろう。

 この攻防に全力を注いだ部隊の全員が、気力も体力も、魔力も使い果たしている。


 歓喜の瞬間からの急転直下。

 更なる恐怖が、俺達全員を包み込んでいくのだった―――




次話で氷獄獣編が完結、ちらほら伏線として出てきているマークを中心とした話になっていきます。

少し切りの良いところまで来たので、次話の投稿を目安に、投稿ペースを週1まで落とそうと思います(今とあまり変わらないですが……)


なお、次話投稿は今週中とだけ書いておきます。

定例通り、こちらの後書きに詳細は追記しますので、よろしければご確認下さい。


また、少しでも面白いと思って頂ければ、評価、感想、ブックマーク等頂けると励みになります。

よろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ