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社畜・イン・ファンタジー ~異世界ブラック冒険譚~  作者: 揚げたてアジフライ
第四章 銀雪と矜恃
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第85話 作戦会議

作戦会議パートはここで終了。


次話より、いよいよ氷獄獣との戦闘パートへと移行していきます。


翌日、俺達はマークを含め、作戦会議のため、護衛部隊の詰め所を訪れていた。

天候は雲一つない程の快晴。

俺達が来た時のあの猛吹雪はなんだったのだろうか。

本当に、運がない。


「待ってたよ、ヨシヒロさん。護衛部隊の面々は殆ど揃っているから、会議室へ向かってくれ」


 詰め所の入り口へ向かうと、護衛部隊のアッシュが、そう言って俺達を迎えてくれた。


 詰め所の奥へと進み、俺達は会議室へと向かう。

 扉を開くと、中には、護衛部隊の幹部を始め、そうそうたる面々が既に席へ付いていた。


「待ってたよ~。じゃあ、氷獄獣ブリザードビースト討伐に向けた作戦会議、始めよっか~。じゃあ、後はモリスの爺様、任せたよ~……」


「……む、お主が議長ではないのか?まぁ、構わんが……」


 やや困惑しつつも、モリスは淡々と会議を進行する。

 そして、全員の自己紹介が終わり、会議は本題へと移る。


「まずは、戦闘時の人員配置だな。うちからは、隊長のベル、幹部のピエールとマーリンの他、こちらで選んだ選抜隊員の合計33名が参加する予定だ」


「うんうん、うちでも選りすぐりのメンバーだから、きっと役に立つと思うよ~」


 幹部に隊長を含めた33名に、俺達のパーティを含め、計37名。

 あまり参加者が多すぎても指揮系統に混乱が生じる可能性があるし、妥当な人数だろう。


「では、この討伐隊の代表として、ヨシヒロ。意見はあるか?」


「……えっ?」


「何を呆けておるか。元より、氷獄獣討伐はそちらの目的。そのパーティのリーダーが代表を務めるのは、当然のことであろう」


「な、なるほど……」


 どうやら俺は、気づかぬうちに、討伐隊の代表になっていたらしい。

 一応はパーティのリーダーを務めてはいるが、俺に大人数を指揮した経験はない。

 引退したモリスは兎も角として、この護衛部隊の現役の隊長であるベルの方が、よほど代表に相応しいのではないかと思うのだが……。


「……責任重大ですが、分かりました。まず、部隊を前衛・中衛・後衛に分けるのが良いと思うのですが、どうでしょうか?」


 37名と言う限られた人数で、格上の魔物を討伐する。

 その為には、誰をどう配置するかが最重要になるのではないだろうか。

 そう考えた俺は、会議室の面々へ、そう問いかけた。


「うんうん、良いと思うよ~。ちなみに、具体的な配置はどんな感じにするつもりかな?」


「はい。一応、全員の自己紹介が終わった段階で、頭の中に配置の考えは浮かんでいて―――」


 俺の考えた配置はこうだ。


 まず、前衛を務めるのが、俺・ベル・エリカ・アッシュの4名。

 氷獄獣の正確な戦闘力は分からないが、間違いなく強力な魔物だ。

 前衛は、防御の要であり、ここが崩れてしまえば、部隊全体へと影響が及んでしまう。

 その為、前衛の経験が豊富な、少数精鋭で構成すべきと考えたのだ。


 そして、中衛を務めるのは、マーク、ピエール、ドルフに、精鋭10名を加えた合計13名。

 この部隊の役割は、あくまでも遊撃だ。

 あまり人数が多すぎても、動きが被ってしまい、相手に攻撃の隙を許してしまう。

 この部隊は、前衛が作った隙を縫って細かにダメージを蓄積させつつ、ターゲットを散らすことで、前衛の負担を軽減する役割を担う。

 また、マークを始めとして、相手を妨害する策に優れた能力を持つ人員が多数配置されているのも特徴である。


 最後に、後衛部隊。

 この部隊に配置されるのが、クロエとマーリン、魔法を主に使う部隊員達18名を加え、計20名。

 前衛・後衛も無論のこと攻撃を行うが、この部隊の攻撃の要となるのがこの後衛部隊だ。

 基本的には、氷獄獣の攻撃が及ばない最後方に立ち、遠距離から強力な魔法を使って、この討伐隊の最高火力で攻撃を浴びせかける。


「―――とまぁ、こんな所なんですが、いかがでしょうか?」


 説明を終え、俺は会議室全体へとそう問いかける。

 あくまでも、素人考えだ。

 戦闘のプロフェッショナルである護衛部隊からすると、穴だらけかもしれない。

 だが、この配置で大枠では間違いない筈である。

 この配置を基に意見を募り、細かい部分を詰めていけば良いだろう。


「……驚いたな。儂も、概ね同じ意見だ」


「私も良いと思うよ~。ヨシヒロってば、案外どこかの部隊の指揮官だったりして?」


 そう言って、俺の案を評価するモリスとベルの二名。

 この二名が賛成してしまえば、他の人員が意見するまでもない。

 特に変更することもなく、人員配置に関してはこの案で決定となった。


「これで、戦う上での大まかな動きが決定した。残りは、物資の調達についてだが……」


 モリスが、次なる議題をそう切り出す。

 そして、それに続くように、ピエールとマーリンが声を上げた。


「……うーん、アイスジェイルって僻地だからねぇ。グスタの街のような大都市なら兎も角、この付近には他に街はない」


「その通りだな。特に、武器や防具の調達がネックになるだろう。幹部連中やヨシヒロ達は良いとしても、他の部隊員達が装備する分が圧倒的に足りてないからな……」


 ピエールとマーリンに関しては、都会に憧れる普通の若者なのかと思っていたが、流石にこの部隊の幹部を務めているだけはある。

 的確に、この行軍における問題点を見抜いているようだ。


 戦闘に必要なポーションや、食料に関しては、俺達のパーティで事前に用意していた分に加え、アイスジェイルで一定量の仕入れができれば、それでどうにかはなるだろう。

 だが、流石に武器や防具ともなると、俺達も予備までは準備できていない。

 恐らく、護衛部隊として保有している装備もあるだろうが、相手は強敵である氷獄獣だ。

 生半可な装備では、相手に有効打を与えられないばかりか、こちらが命を失う危険が高まってしまう。


「……それならば、それがしがどうにかしましょうぞ!」


 そう名乗りを上げたのは、護衛部隊の幹部でもあり、このアイスジェイル随一の鍛冶師でもあるガンテツだった。


 装備が足りないのであれば、作ってしまえばいい。

 あまりにも当たり前すぎて、盲点になってしまっていた。

 だが、俺達と幹部を除いたとしても、討伐隊に参加する隊員の数は30名。

 そんな人数の装備を、短期間で準備できるのだろうか。


「つかぬことをお伺いしますが、準備はどれ程の期間が必要なのでしょうか?わたくし達も、何週間、何か月とは待っていられないものでして……」


 そう声を上げたのはエリカだった。

 あまりにも時間が掛かってしまうのであれば、ガンテツには申し訳ないが、それ以外の案を考えるしかない。

 最悪、この行軍そのものが頓挫してしまう可能性すらあるだろう。


「ふふ、それなら問題あるまい。なぁ、ガンテツよ……?」


 エリカの問いに対し、そんな声を返したのはモリスだった。


「うむ、その通りだな盟友よ。エリカ殿、儂らは、兼ねてより氷獄獣の討伐に向け、数十年単位で準備を積み重ねてきたのだ」


「……と、いいますと?」


「武器も、防具も、何もかも既に用意してあるのだ(・・・・・・・・・・)!」


「ええ~、そんなの、私聞いてないんだけど~?」


 武器も防具も、既に用意してある。

 そんなガンテツの言葉に、驚いた様子なのは、他でもなくベルだった。

 どうやら、現役の部隊長であるベルすら話の外で、モリスとガンテツが秘密裏に準備を進めていたらしい。

 モリスに至っては、現役を引退した、なんて言いつつ、密かに闘志を燃やしていたのだ。

 ガンテツも含め、なんとも血気盛んな爺さん達である。


「……という訳で、部隊員達の装備は、儂らが事前に準備してある。こんな機会、もう生涯訪れることはないかと思っていたが、何事もやっておくものだな」


「うむ。その通りであるな。どの装備も、某と盟友が素材から厳選した逸品揃い。質に関しては保証するぞ」


「な、なるほど……。では、装備の問題も解決したと言うことで……」


「参加する部隊員全員に装備を渡しても余りある程だ。このまま腐らせておくのも勿体ない。ヨシヒロ殿達も、何か使えそうなものがあれば、是非持って行ってやってくれい」


 こうして、人員配置に続き、物資の調達に関しても解決した。

 質の良い武具があるのであれば、後ほど俺達も見せてもらっても良いだろう。

 格上の相手と戦うのだから、予備の装備があった方が無難だからな。


「次に、戦闘時の細かい動きであるが―――」


 会議は粛々と進んでいく。


 氷獄獣との戦闘経験があるモリスによって、氷獄獣の攻撃方法、戦闘時の注意点等が語られた。

 まず、氷獄獣の主な攻撃は、鋭い爪や牙による物理攻撃である。

 そして、追い詰められた際には、雪や氷を操り、雪崩を起こす力を持つ。

 生半可な攻撃はその厚い毛皮によって防がれてしまう為、渾身の力を込めた一撃か、強力な魔法で無ければダメージを与えることは難しいだろう、とのことであった。


 それを基に、具体的には誰がどのように動くのか、攻撃する際の合図はどうするか、不測の事態が起きた際の対応はどうするか等が決められる。

 また、マークの秘策についてもこの場で明かされ、護衛部隊の面々からの同意を受け、実戦でも採用されることになった。


 当日の天気にも影響されるが、順調にいけば、決行日は一週間後。

 討伐の部隊は、アイスジェイルから程近い場所にある氷狼山ひょうろうさんと呼ばれる山岳地帯だ。

 はるか昔より氷獄獣の縄張りであるとされるこの山は、強大な氷獄獣の気配に押されてか、他の魔物は生息していないと言う。


 更には、決行日には、討伐部隊以外の人員も配置されることが決定する。

 物資の補給や怪我人の救護の役割を担う隊員達だ。

 この部隊が、不測の事態が起きた際の撤退の中心となる。

 その為、この役割を担うのは、白雪狼スノーウルフによる犬ゾリを操るプロフェッショナルなのだと言う。


 このようにして、討伐に向けた作戦会議は順調に進んでいった。

 護衛部隊の面々も、それぞれが各分野における戦闘のプロフェッショナル達である。

 何か問題となる点が上がっても、それに対応できるだけの対策が練られていった。


 あまりにも順調に進んでいったが、作戦はあくまでも作戦に過ぎない。

 モリスの実戦経験ですら数十年前の出来事であり、今回も同様に戦闘が進むとは限らないだろう。

 しつこい程に言っているが、氷獄獣は、はるか遠くの地域であるグスタの街まで響く程に強大な力を持つ、伝説の魔物だ。

 戦闘に参加するのは精鋭ばかりだが、部隊を率いる俺が判断を誤ってしまえば、命を失う結果にすらつながりかねないのだ。


 出発までは一週間の猶予がある。

 残りの期間で、少しでも個々の戦闘力について知り、的確な指示を出せるようにしておかなければ……。


次話、できれば明日投稿予定です。


少しでも面白いと思って頂ければ、感想、評価、ブックマーク等頂けると励みになります。


よろしくお願いします。


5/19追:盛大に風邪(だと思いたい)を引いてしまい、しばらく更新が難しそうです。大体のプロットはあるので、極力今週中には続きをアップしたいと思っています。申し訳ございません。

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