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社畜・イン・ファンタジー ~異世界ブラック冒険譚~  作者: 揚げたてアジフライ
第四章 銀雪と矜恃
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第80話 要塞都市アイスジェイル

どうにか早めに投稿できた気がします。

主人公たちがようやく街に辿り着きました。

「おう、着いたぜ!ここが俺達の街、要塞都市アイスジェイルだ!」


 ソリから降りてそう言ったジェイクは、どこか誇らしげだ。

 まず、白雪狼スノーウルフに引かれ、アイスジェイルまで連れられた俺達を迎えたのは、大きな鋼鉄製の門だった。

 グスタの街よりも高く堅固な壁と大きく分厚い鋼鉄製の門は、ある種の威圧感すら放っていて、この地の過酷さを物語る。


「「ジェイクさん、お勤めご苦労様です!」」


 ジェイクに連れられ、門の前に辿り着いた俺達に向かって、二人の若者が走ってくる。

 軽装だが、要所は金属製のプレートで保護された鎧を着込んでおり、どちらも長い槍を構えていた。

 恰好からして、この二人はアイスジェイルの門番をしているのだろう。


「おう、お前らもお疲れさん。街の周りは相変わらずなんもねえが、そっちはどうだったんだ?」


「は!こちらも異常なしです!」


「それにしても、街の代表であるジェイクさんが見回りなんてしなくても……!」


「そうですよ!そのくらいのこと、俺達下っ端に任せてください!」


「いんや、これは昔からの俺の日課みてえなもんだから、気にするな」


 門番達とジェイクの話を聞いていると、何やら衝撃的なことが聞こえてきた。

 どうやら、ジェイクはこのアイスジェイルの代表らしい。


「ええ!?ジェイクさんがこの街の代表だったんですか!?」


「いや、ただ前に護衛部隊の隊長をやってたってだけだ。俺より代表に相応しい奴なんて、探せばいくらでもいらぁな」


「いやいや、それも護衛部隊の隊長までやってたなんて……。この街の元締めみたいなもんじゃないですか……」


「ははは、そんな大したもんじゃねえよ。俺はただの隠居寸前のオッサンだぜ」

 

 俺が驚いたことに気を良くしたのか、ジェイクは嬉し恥ずかしといった様子で頬を掻いた。

 それにしても、この街を束ねるような人物と知り合えたことはかなり大きい。

 氷獄獣ブリザードビーストの討伐に関しても、何かあれば協力してもらえるかもしれないし、街の護衛部隊にも恐らく伝手があるだろう。


「まぁ、俺の事はいいんだよ。とりあえず、アンタらは疲れてんだろ?今日の所はゆっくり休んだらどうだ?」


「確かに!色々驚いて忘れてましたけど、一刻も早く休みたいです!」


「そうね。とりあえず、私はお風呂があればゆっくり入って温まりたいかしら……」


「おう、それならちょうどいい!ここからちょいと東に行けば、氷雪亭って宿があるから、そこを使うといいぜ!飯はうめえし、何よりも天然の温泉が湧いてんだ!」


「温泉ッ!?アンタ達、今すぐダッシュで行くわよ!なう!」


 ジェイクの温泉という言葉を聞いたクロエは、目を光らせて走り出す。

 先程までは疲労困憊と言った様子だったのに、どこにそんな体力があったのやら……。


「あ、クロエ!?ちょっと待ってくれよ!」


「ったく、しょうがねえな……」


「まぁ、元気そうで何よりですわ」


「ちょっと、アンタ達―!早くしないと置いてっちゃうわよ!


 いつの間にやらかなり遠くまで走って行ったクロエが、教えられた氷雪亭と思わしき建物の前で手を振っている。


「早ッ!?すいません、ジェイクさん!お世話になりました!」


「お、おうよ!早く嬢ちゃんのとこに行ってやんな!」


 少し呆気に取られた様子だが、ジェイクは笑顔で見送ってくれた。

 そう言えば、壁に囲まれているおかげか、外よりも格段に吹雪の勢いが弱い。

 かなり広い街のようだが、吹雪が弱まったおかげで様子が一望できる。


「まぁ、探索と情報収集は明日にして、とりあえずクロエの方へ急ごうか……」


「ああ、そうだな。早く行かないと後でうるさそうだぜ……」


「ふふ、わたくしも温泉に入るのが楽しみですわ!」


 ジェイクに別れを告げた俺達は、クロエの待つ氷雪亭へと走り出す。

 命の恩人と言っても過言ではない人だ。明日にでも、ちゃんとお礼をしないとな……。




                ◆◆◆




 あの後、氷雪亭へと向かい、夕飯と風呂を済ませた俺達は、泥のように眠っていた。

 この地方独特の料理に舌鼓を打ち、ゆっくりと温泉に浸かることが出来たので、体力の回復はバッチリだ。


「うーん!ご飯もおいしいし、温泉はサイコーだし、夢のような宿だったわ!」


「はは、何はともあれ、クロエが元気になってよかったよ」


 朝日の下で大きく伸びをするクロエは、かなりご機嫌な様子だ。

 昨日とは違って顔色も良く、本当に元気になったようであった。

 今朝なんて、誰よりも早く起きて、朝風呂にまで行ったくらいだからな……。


「まぁ、飯も美味いし、サービスも抜群だったよな。おかげでよく眠れたぜ」


「私は、あのヴェールイという変わった魚料理が気に入りましたわ!今晩もここに泊まりましょう!」


「ああ、あの料理ね。最初は、凍ったままだったからどうなのかと思ったけど、案外イケるもんだよねぇ……」


 そう言えば、北海道にも似たような郷土料理があったような気がする。

 何にしろ、極寒の地であるコキュートスだからこそ食べられる逸品だろう。


「ともかく、今日は情報収集に集中しよう。相手は未だに誰にも討伐されたことも無いような氷獄獣だ。グスタの街では、殆ど眉唾物の情報しか仕入れられなかったからね」


「そうですわね。今回の旅で、情報収集と準備の大切さを思い知りましたわ。この街で、しっかりと準備してから討伐に向かいましょう!」


 確かに、入念に準備したつもりでも、道中で命の危険すらあったのだ。

 伝説とも言える程の魔物を討伐するのだから、それくらい念には念を入れて調べるべきだろう。

 グスタの街ではあまり情報が集められなかったが、きっとこの街ならば有益な話を聞くことが出来る筈だ。


「とりあえず、ヨシヒロ達はジェイクさんの言っていた護衛部隊の詰め所へ向かってくれ。俺は俺で、別行動して調べておく」


「そうだね、情報収集はマークの得意分野だ。確かに、色々と調べるなら別れた方が効率がいいかもしれない」


「ってことは、アタシ達3人と、マークって感じで別れるのかしら?それとも、各自で分担して別の方向を調べてみる?」


「いや、クロエとエリカは俺と行動しよう。マークと違って素人の俺達なら、人数がいた方が気づくことも多い筈だよ」


 情報収集のプロとも言えるマークならともかく、一般人の俺達が各自で情報収集に走ったところで、得られる情報は限られるだろう。

 それなら、ある程度はマークに任せて、俺達はまとまって行動するべきだ。

 まぁ、人海戦術という言葉もあるので、一概にこの判断が正しいとは言い切れないのだが……。


「それじゃあマーク、そっちは任せたよ」


「ああ、情報収集こそ俺の得意分野だからな」


「こちらも、出来る限りで情報を仕入れておきますわ!」


「そうね!マークだけに任せておけないもの!」


 皆もやる気のようで、それぞれ気合を入れている。

 マークが裏を調べるのであれば、俺達は普通に手に入る情報はしっかり仕入れておかないと。


「とりあえず、俺はもう行くぜ。日が暮れる前に、この宿の前に集合しよう」


「うん、分かったよ。こっちもできる限りのことはしておくから、無理しない程度に頑張って!」


「まぁ、危険な橋を渡るつもりは無えよ。だが、期待しておいてくれ」


 そう言うと、マークは市街地とは離れた方向へ走って行く。

 本気を出したマークの速度は忍者とでも言える程で、あっという間に影すら見えなくなった。


「やはり、速いですわね……。殆ど見えませんでしたわ……!」


「いや、ちょっとでも見えてるのが凄いけどね……」


 あのマークと速さで渡り合っただけあって、エリカはマークの動きが少しだが見えたらしい。

 最早、動体視力が化け物レベルだ。俺も、鍛えれば加護の力で目が良くなるのだろうか。


「ともかく、俺達は詰め所へ向かおうか。別れ際に、ジェイクさんが俺達の事を伝えてくれるって言ってたから、多分協力はしてくれる筈だよ」


「本当に、ジェイクさんにはお世話になりっぱなしですわね……」


「確かにそうね。この戦いが終わったら、ちゃんとお礼しに行きましょ!」


 他愛の無い話をしながら、俺達は街の護衛部隊の詰め所へと向かう。

 ジェイクから聞いた話によれば、詰め所は街の中央にある大きな建物だ。

 この宿からでも見える距離にあるので、すぐに辿り着くだろう。




               ◆◆◆




「すいません、ジェイクさんの紹介で、ここに来たんですけど……」


 宿から少し歩き、詰め所に着いた俺は、門の前で話し込んでいる男達に声を掛ける。

 二人とも、昨日の門番と同じような恰好をしているので、恐らくは護衛部隊の人間だろう。


「……んん?ああ、アンタら達が氷獄獣を倒しに来たっつう酔狂な冒険者達か」


「とりあえず、ジェイクさんから話は聞いてるぜ。にしても、どんなムサい男共が来るのかと思ったら、普通の兄ちゃんと華奢な女の子じゃねえか」


「まぁ!これでもヨシヒロさん達は、グスタの街では名の通った冒険者なのですわよ?」


 俺達の事が予想外だったのか、少し訝しげな様子で見つめてくる護衛部隊の男達に、エリカが少しムッとした様子で反論する。

 とは言え、そこまでの実力は無いので、そう言われても嬉しいやら恥ずかしいやらなのだが……。


「おっと、そりゃすまんな。俺達はアイスジェイルから出たことがねえもんでよ。他の街の事情には疎いんだ」


「まぁ、今まで来た冒険者達も、そんな事を言っては帰って来なかったがな……」


「おい、ドルフ!いくらなんでも口が過ぎるぞ!」


「はん、事実だろうが。この土地での戦闘に慣れてない冒険者なんぞに、氷獄獣が倒せるわけがねえのさ……」


 ドルフと呼ばれた男は、こちらを値踏みするような目で見ながら不愛想にそう言った。

 確かにそうかもしれないが、初対面でここまで言われる筋合いは無い。


「いや、お言葉ですが……」


 流石に頭に来た俺は、反論しようと口を開く。

 しかし、その言葉はクロエの大きな声で掻き消されることになった。


「……ふっっっざけんじゃないわよッ!アンタみたいなヘナチョコヒョロガリ野郎より、うちのヨシヒロの方が何倍も強いわよ!」


「そうですわ!いくらヨシヒロさんが前衛タンクだからと言っても、街の護衛部隊に負ける筈がありませんわ!」


「ちょ、ちょっと二人とも、落ち着いて……!」


 俺が反論するよりも先に声を上げた二人は、前に飛び出すと、未だにふてぶてしい表情でこちらを睨むドルフに詰め寄る。

 これはまずい。ここで喧嘩になってしまうと、ジェイクさんの紹介が水の泡だ。


「ほぉ?そこまで言うなら、そこの兄ちゃんと決闘でもするか?ちょうど暇してたところだ。俺は全然問題ねえが、そこの腰抜けの兄ちゃんはどうかねえ……?」


「おい、ドルフ!いい加減にしろ!それ以上は、名誉あるこの護衛部隊の顔に泥を塗るのと同じだぞ!」


「いいや、アッシュ!こいつらに一泡吹かせてやらないと気が済まねえな!」


「だから、とりあえず落ち着け!ジェイクさんの紹介だと言う事を忘れるなよ!」


 売り言葉に買い言葉とでも言うように、ドルフはこちらに食って掛かる。

 話に巻き込まれた俺は、何故かこの青年と決闘をすることになっているようだ。


「ふん!一泡吹くのはどっちかしらね!」


「ええ、そうですわ!ヨシヒロさん、受けて立ちましょう!」


「いや、二人とも、本来の目的を忘れないでよ……」


 相も変わらず、クロエとエリカは怒気を孕んだ声で呼びかけてくる。

 いや、ここで決闘して何になるって言うんだ……。


「なぁ、ヨシヒロさんっつったか!俺はこいつを止めるから、アンタはそこの嬢ちゃん達をどうにかしてくれ!」


「あ、ああ!分かったよ!とりあえず、どっちも落ち着けって!」


 こんな調子で、本当に情報収集なんて出来るのだろうか……。

 俺は深く溜息をつきながらも、アッシュと共に睨み合う三人を宥めるのであった。

書いてたら想像以上に長くなったので話を切りました。

次回も早めに投稿できればと思いますが、土曜日も仕事なので、どうにか頑張ります。

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