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社畜・イン・ファンタジー ~異世界ブラック冒険譚~  作者: 揚げたてアジフライ
第一章 剣と魔法とデスマーチ
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第7話 ホームレス冒険者?


 1つ目の候補をくまなく捜索すると、スライムはすぐに見つかった。

 なんと、農場入口の、目と鼻の先に潜んでいたのである。


 それににも関わらず、何故俺も含め、誰もスライムを発見できなかったのか。

 答えは単純明快。

 なんと、スライムはカメレオンのように背景と同化し、周りの景色と同じ姿に擬態していたのだ。

 それも、多少目を凝らした程度では、全く分からない程の精度で。


 人の多い昼間は擬態で隠れ、夜な夜な活動しては、農作物を貪っていたのだろう。

 これの精度で隠れられれば、誰も見つけられないのも納得できる。

 俺も、偶然、景色が歪んでいる場面を見かけなければ、見つけることが出来なかった。


 ギルドで得た情報では、スライムに擬態する生態など無かった筈だ。

 だが、スライムはその弱さとは裏腹に、高い適応能力を持ち、時には環境に合わせて進化するという話を耳にした。


 恐らく、この村のスライムは、効率良く餌を確保するため、農場へ来たのだ。

 そして、退治されずに食料を得るため、擬態できるように進化した。

 その高い適応力には驚かされてしまう。


 そんなこんなで、俺は擬態したスライムを次々に発見すると、討伐していった。

 倒すこと自体は簡単で、粘性の高い体の中心にあるコアを少しでも傷つけるだけでいい。

 支給品の片手剣をスライムの中心部に刺し込むと、ドロリと体が溶け、淡い光となって次第にスライムは消えていった。


 この世界の魔物は、倒れると光とともに消滅し、一定確率でアイテムをドロップする。

 もっとも、死体が消えるのは魔物だけで、人間や動物なんかの死体は。元の世界と同様、その場に残り続けるらしいが。


「終わっ、たぁ……!」


 こうして、無事に3体のスライムの討伐を終えた俺は、畑に力尽きるように座り込んだ。

 発見までに時間が掛かり過ぎたせいで、既に空は茜色に染まり、夜が訪れることを知らせていた。


「本当に、ありがとうございますじゃ!これは、少しばかりのお礼です。是非貰って行ってくだされ!」


 討伐を報告すると、村長は大変喜んだ様子で、この村の特産だという果実を幾つか貰った。

 真っ赤な果物を齧ると、リンゴに似た味がする。

 疲れた体に甘酸っぱい果汁がが染み渡るのを感じながら、俺は街までの帰路に着くのだった。




◆◆◆




 すっかり夜の帳が落ちた頃、俺はグスタの街のギルドへと辿り着いた。

 依頼完了の報告への為にカウンターへ向かうと、朝も対応してくれた職員が驚いたようにこちらを見る。


「なんと、本当に1人で依頼完了されたんですね!まさか、あの広大な農場を1人で探し回るとは……!」


 あんなに広いなら最初から教えてくれよ思ったが、俺のやや食い気味な発言と、自信ありげな様子から、言うのを躊躇ったとのことだった。

 この失敗を糧に、今度からはもっと情報収集をしてから出発しよう……。


 俺は、ギルドで報酬金を受け取ると、物価と貨幣価値を調べる為に街中へ向かった。

 既に夜も遅い時間になりつつあるが、まだ市場は営業している。

 そこで品物を見れば、なんとなくの物価は分かるだろうと考えたのだ。


(なるほどね……)

 

 武器や防具はピンキリではあるが、最も安い初心者用の剣でも大体2000エル、高いものは数十万エルを超える。

 パンは安いもので150エル、大体の平均価格が200エル程度。

 雑誌という文化が無いのか、本は分厚いハードカバーのものばかりで、どれも1000エル以上する。


 大体1エル=1円くらいだろうか。

 物価も貨幣価値も日本とそこまで変わらないように思う。


 そして、1番安い宿の宿泊費が1晩で500エル。

 所持金を考えると、ここに泊まるしかあるまい。


「とは言え、流石最安値の宿だな……」


 俺が選んだのは、宿とは名ばかりの、木造の掘っ建て小屋を壁で仕切っただけの簡素な建物だった。

 随分年季の入った室内は所々に経年劣化が見られ、天井の隅には蜘蛛の巣が張っている。

 埃っぽいベッドに腰かけると、壁の向こうから、隣の宿泊客のいびきが響いてきた。


 流石に、何の道具も無い中で野宿をすると言う選択肢は俺には無いので、ここに泊まるしかない。

 雨風を凌げるだけマシと考えるべきだろう。


 俺は、村で貰ったプルアと言う果実と、市場で購入したパンで軽く夕食を済ませた。

 ある程度まともな食事しようと思うと、どの店でも500エル近く掛かるようだ。

 そこで、とりあえず腹に溜まるものをと思い、200エルで大きめのフランスパンのようなものを購入したのである。

 プルアの実も含め、一日で食べきれる量では無いので、数日分の食事にはなるだろう。

 無論、贅沢とは程遠い、最低限活動が出来るだけの簡素なものではあるのだが……。


「ううむ、どうしたものか……」


 宿泊費と食費で、俺の財布の中に残ったのは、たったの50エル。

 これでは、宿泊費どころか、今後の食費にすらならない。


 今回はたまたま報酬が高かったから良かったが、もし他の依頼を受けていれば、恐らく宿代すら稼げなかっただろう。


 このままでは、異世界生活2日目にしてホームレスになりかねない。

 どうにか、効率良く資金を集める策を考えなければ……。


俺はそんなことを考えながら、埃っぽいベッドに転がる。

 舞い上がった埃と、部屋を吹き抜ける隙間風が、俺の寒い懐事情を暗示しているような夜だった。


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