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社畜・イン・ファンタジー ~異世界ブラック冒険譚~  作者: 揚げたてアジフライ
第四章 銀雪と矜恃
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第72話 大食堂での一幕

大変お待たせしました。

ここまでブックマークを継続して下さっていた40名の皆様のおかげで投稿する意欲が保たれました。

本当にありがとうございます。

少しの間、休みが取れたので出来る限りで投稿します。

「おう、戻ったかエリカ!それじゃあ、本題に移ろうか!」


 あれだけの激闘を繰り広げたにも関わらず、無傷で帰ってきたエリカを眺めながら、カタギリはニコニコと笑顔を浮かべながら頷く。


「勿論ですわ、お父様!お二方も、それで良いですわよね?」


 良いも何も、こちらはまだ何も現状を把握出来ていない。

 突然呼び出され、突然決闘を申し込まれ、その決闘にマークが勝利しただけなのだ。


「……ちょ、ちょっと待ってくれ!いきなり話が進み過ぎて何も理解出来ねえよ!」


「俺も同じくです。できれば、もう少し詳しく説明して下さい……」


 俺とマークがこぞって説明を促し、ようやくロックウェル親子も説明する気になったようだ。

 代表する様にカタギリが咳払いをすると、やや仰々しく話し始める。


「うーむ、まずはどこから話したものか……」


「とりあえず、決闘の理由から話してもらいたいですね」


「ああ、そうだな。何のために決闘させられたのか全く分からねえ。俺達の実力の品定めって感じはしたが……」


 話し始めるなり考え込んだカタギリに向け、俺達はそう言葉を投げかける。

 何か用があって俺達を呼んだらしいが、ようやく決闘が終わった今まで、休む暇もない程に唐突な出来事だったのだ。

 理由が思い浮かばないのはマークも同様であるようだが、確かにマークの言う通り、俺達の実力を見るために戦ったのはこれまでの会話から明白だろう。


「おう!そう言やぁ、そのこともまだ話してなかったな!今回、あんちゃん達を呼んだのも、決闘をさせたのも、エリカの旅の供をして欲しいからだ!」


「ええと、今いち話が飲み込めないんですけど……」


「ああ、俺も同じです。もう少し詳しく話してほしいんですが……」


 ここに俺達が呼ばれたのは、エリカの旅のお供をするためで、決闘をさせたのは俺達の実力を図るためと言うことだろう。

 これまでの話から、それは理解できたのだが、それ以上の情報が全くないのである。


「ああ、もう!お父様は話が端的すぎますわ!私が説明します!」


「おお、そうか!すまんな、頼んだぞエリカ!」


 そう言ったエリカがカタギリを押し退けるように前に出ると、軽く咳払いをして俺達に向かって話し始めた。


「まず、お二方には私がとある事情で旅に出る際の、付き添いをして頂きたいのですわ。そして、その付き添いに相応しいのかどうか、腕試しの為に決闘をさせて頂きました」


「ああ、そこまでは理解してる。ヨシヒロも大丈夫だよな?」


「うん、そのことに関しては、今までの話の中でもどうにか推測できたよ」


「理解が早くて助かりますわ。では、続きを話しますわね……」


 俺達が頷いたのを確認すると、エリカは再び話を始める。


「まず、お二人に同行してもらいたい旅の詳細についてお話しましょう。私は、ロックウェル家の次期当主として、武勲を立てねばならないのです」


「なるほど。その武勲を立てるための旅に、俺達が同行してくれってわけか」


「でも、武勲って具体的にどんなことをすればいいのかな?」


 エリカ達の言う旅の詳細については理解できた。

 その旅に同行する事に関しても、特に他に用事が無いので断る理由も無い。

 だが、武勲を立てるという事に関しては、全くもって想像がつかなかった。


「そうですわね、冒険者ギルドのランクアップのようなものと思って頂ければ分かりやすいと思いますわ。強力な魔物の討伐、希少な素材の入手、賞金首になるような盗賊の捕縛……。つまり、功績が認められれば何でも良いのです」


「アンタ程の実力があれば、大抵の事は一人でこなせると思うんだが、どうなんだ?」


「そう言ってもらえるのは嬉しいのですが、私の実力だけではこなせないような功績を残さねばならないのです。そこで、巷でも有名になりつつある、お二方にサポートをお願いしたいのですわ」


「つまり、エリカと一緒にクエストに出かければいいって事かな。何のクエストを受ける予定なのかは決まってるの?」


「ああ、そうだな。同行するのは良いんだが、何をするのかは事前に知っておきたい」


 マーク程では無いものの、エリカの実力は冒険者であれば俺達と同じ中級者レベルだ。

 【硬化】さえ使ってしまえば攻撃自体は防げるだろうが、俺ではエリカへの反撃の余地が無い。今回の決闘も、俺が挑んでいれば恐らくエリカが勝利していただろう。

 それ程の実力を持つエリカが一人ではこなせないレベルのクエストなのであれば、事前に情報収集や準備を行っておきたい。


「……氷獄獣ブリザードビーストの討伐ですわ。ギルドによる分類で言えば、上級冒険者が挑む魔物です」


 聞きなれない魔物の名前に俺は首を傾げるが、冷静なマークが思わず立ち上がって叫んだ。


「はぁっ!?氷獄獣なんて、俺達3人だけじゃ勝てる見込みはねえだろ!?」


 これまで冷静だったマークが身を乗り出すように立ち上がって声を荒げる。

 対するエリカの方も、その言葉を噛みしめるように、ただ静かに目を瞑っていた。


「……ごめん。話の腰を折るようで申し訳ないんだけど、その氷獄獣って言うのはどういう魔物なの?」


 聞きなれない魔物の名前に、俺は二人に向けてそう尋ねる。

 先程のマークの反応からするに、かなり強力な魔物だという事は理解できるのだが……。


「……そうですわね。それでは、私から説明しますわ」


 そう言ったエリカは深く深呼吸をすると立ち上がる。

 そして、これまでよりも一層、真剣な表情で話を始めた。


「氷獄獣は、その名の通り氷を操る強大な魔物です。その戦闘力は街の衛兵団程度では一瞬で壊滅する程……並の冒険者数十人が束になっても敵わない程と言われていますわ」


「……龍種とタイマンを張っても引けを取らないとか言われてるな。勿論、俺達が倒した炎龍フレイムドラゴンなんて比にならないような上位の龍種と戦ってな」


 エリカとマークから告げられる氷獄獣の詳細に、俺は思わず絶句してしまう。

 炎龍の討伐では、俺やマーク、クロエだけでなく、ケヴィンやリーシャも含めた、ギルドの選抜メンバーで挑んでなお苦戦したと言うのに、それ以上の龍種と戦っても互角だと言う。


「……そんなに規格外の相手に、俺達三人で挑んで勝てるのかな?」


 俺は二人に向けて、至極真っ当な意見をぶつける。

 なにせ、炎龍と戦った時ですら、あの龍の必殺は俺の【硬化】を上回ったのだ。

 俺もマークもあれから成長しているだろうが、それでも勝てる気がしない。


「いや、無理だろうな。クロエやケヴィン達を呼んで挑んだとしても、勝算は殆ど皆無だろうよ」


「やっぱり、そうか……。ごめん、エリカ、そう言う事だ。俺達じゃ実力不足なんじゃないかな……?」


 一度請け負った約束を反故にするような真似は避けたかったが、俺もわざわざ死にに行くような事はしたくない。

 それはマークも同様のようで、俺の発言に深く頷いている。


「……それでも!それでも、私はロックウェル家の娘として、諦める訳にはいかないのです!」


 静まり返った大食堂に、エリカのそんな叫びだけが響く。

 何がそこまで彼女を駆り立てると言うのだろうか。何か、理由があるような気がする。


「……何か事情があるなら、俺達に話してくれないかな?」


「そうだな。その理由次第では、俺達も今回の依頼を出来る限り手伝いたい」


 そう言って、俺達はエリカへと真剣に向き直る。

 何か事情があるのであればそれを手伝いたいのだ。


 まだ会って数時間と経っていないが、エリカは恐らく、何でも一人でこなしてしまう程の能力がある筈だ。

 そのエリカが、カタギリを経由してとはいえ、俺達に手助けを求めている。

 そうとくれば、何とかそれを解決したいと思うのが人としてのさがと言うものではないだろうか。


「……ふふっ。お二人とも、本当にお人好しなのですわね。あ、いえ!貶している訳ではないのですよ!?」


 これまで俺達の言葉をポカンとした様子で聞いていたエリカは、しばらくしてクスリと笑った。

 そして、年相応にコロコロと表情を変え、慌てたように自分の言葉を否定する。

 これまで毅然とした態度を保っていたとはいえ、きっと、これが本来の彼女の姿なのだろう。そんな彼女の様子が少し微笑ましい。


「……なんか、拍子抜けする感じだが、やっと素の表情が見れたって感じだな」


「うん、そうだね。それじゃあ、無茶をしてまで今回の依頼に挑みたい理由を教えてくれるかな……?」


「ええ、そうですわね。私がここまで今回の依頼に拘る理由……さて、どこから話したものか……」


 こうして、笑顔を取り戻したエリカは、再びその表情を思案に曇らせる。

 そして、しばらくの間考え込んだエリカは、少しずつ今回の依頼の裏にあった思惑を話し始めるのだった。

評価、ブックマーク等頂けると更に頑張れます。

体調は疲労以外は万全なので、気持ち次第と言ったところ……。

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