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社畜・イン・ファンタジー ~異世界ブラック冒険譚~  作者: 揚げたてアジフライ
第四章 銀雪と矜恃
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第70話 決闘

溜めた割に短くて申し訳ない……。

頑張って決闘本番はもう少し長めに書きます。

「お二人のどちらかが、わたくしと決闘をしてください。その結果に納得が出来れば、お二人を私の旅の共としますわ!」


「「はぁ……?」」


 カタギリの娘である、エリカ・ロックウェルの突然の宣言により、俺達のどちらかとエリカが決闘をすることが決定してしまった。

 カタギリも止めるどころか、決闘を推奨するように盛り上がっている。


「おう、エリカ!そう言うことなら、裏庭の修練場を使うと良いぞ!」


「勿論そのつもりですわ、お父様。お二人も、それでよろしいかしら?」


 俺達の返事を聞くまでも無く、既に二人の中では決闘に参加すること自体は決定しているらしい。

 よろしいも何も、未だに話についていけてないのだが……。


(……どうする、ヨシヒロ?依頼という形であれば、大戦士カタギリに恩を売るチャンスとも言えるかもしれんが……)


(……まぁ、どっちが参加するかは置いといて、この後やる事もないし良いんじゃないかな?)


 俺達は二人に背を向け、肩を組むような形でヒソヒソと話をする。

 カタギリさんがなぜ俺達に頼もうと思ったのかは分からないが、マークの言う通り、これ程までにお金も権力もありそうなカタギリさんからの依頼なら、現金な話だが報酬も期待が出来そうなのも事実だ。

 まぁ、俺としてはそういうのを抜きにしても、この世界で初めて目を覚ました禁忌の森で助けられているので、何も無くてもこの決闘とその後にあるだろう依頼を受けるべきだと思っているのだが。


「この決闘、受けましょう。場所もそれで良いですが、ルールの方はどうなるんですか?」


 俺達の意見をまとめるようにマークが代表してそう答える。

 確かに、場所はある程度広さがあればどこでもいいだろうが、ルールに関してはしっかり聞いておかないといけないだろう。

 使う武器の種類や制限時間、禁止事項、勝敗の判定など、聞くべきことは山ほどあるのだ。


「そうですね……。制限時間無し、使用武器は木剣、相手を場外にするか参ったと言わせた方が勝利、ということでどうでしょうか。審判は父が務めますわ」


「オーソドックスなルールですね。それなら問題ないでしょう」


「なぁ、マーク……。俺、剣なんて殆ど使えないんだけど……」


 一応、冒険者を始めたばかりの頃は支給された片手剣を使っていたが、純粋に殴るだけの戦法なら打撃武器の方がいいと思ってからはずっとメイスを使っている。

 エリカがどれ程の実力なのかは分からないが、素人同然の俺が戦ったところで、勝てる見込みは薄いだろう。

 いや、【硬化】を使ってゴリ押せばそうでも無いのだろうけど、それはなんか決闘の趣旨に反する気がするからな。


「それなら問題ない。今回は俺が行こう」


「マーク、剣も使えたのか?」


 まぁ、これまで万能っぷりを見せてきたマークなら剣を使えても不思議はない。

 多少の違いはあるとはいえ、同じ刃物であるナイフを普段から使ってるわけだしな。


「……ああ、昔少し齧った程度だが、問題はないだろうよ」


「そうか、じゃあ今回はマークに任せるよ!」


 こうして、マークがエリカと決闘をすることが決まった。

 俺達の会話を聞いていたエリカが、話が決まったのを確認して声を掛けてくる。


「決まったようですわね。それでは、お二方とも裏庭まで移動しましょう」


 そして俺達は、エリカとカタギリの先導の下、裏庭の修練場へと向かう。

 大食堂から一度玄関ロビーへと抜け、城の中を奥へ奥へと進んでいった。

 住んでいるのだから当たり前かもしれないが、よく迷わないものだと感心してしまう。


「着きましたわ、ここがロックウェル家の修練場です」


 俺達の眼前に広がる修練場は、表の華美な庭とは違い武骨な雰囲気を感じられた。

 これから決闘を行うと思わしき円形のリング、打ち込み用との使い込まれた木製の案山子、壁に掛けられた整備の整った武具の数々に加え、よく分からないが恐らくトレーニングに使うのであろう魔道具まで、広い修練場には様々な設備が整っていた。


「うわぁ、やっぱり凄いな……」


「ああ、下手したらこの街の騎士団の修練場よりも規模が上なんじゃないか?」


「ガハハ!これだけの設備があったところで、使うのは俺とエリカだけなんだがな!」


 修練場の規模に驚く俺達に向け、カタギリが笑い掛ける。

 家に住んでいるのは、恐らくカタギリとその奥さん、娘のエリカの他には雇われた執事やメイドのような人達しかいない。

 これだけの規模があって勿体ないとも思うが、使い込まれた案山子や武具を見る限りは持ち腐れでは無いようだ。


「……それでは、早速ですが決闘を始めましょうか」


 未だにキョロキョロと辺りを見渡す俺達に向けて、エリカがそう声を掛けた。

 そう、圧倒されていたが本来の目的はエリカとマークの決闘なのだ。

 マーク程の実力があって負ける筈が無いとも思うのだが、エリカの実力が分からない以上、勝敗がどちらに決まるかも分からない。


「ああ、問題ない。あのリングに上がればいいのか?」


「ええ、その通りです。それでは向かいましょうか」


 エリカに続くように、マークが修練場の中心にある円形のリングに向けて歩いていく。

 二人が中心で向かい合うと、カタギリから片手剣サイズの木剣が手渡された。


「父上の合図で決闘を開始します。マーク様もそれでよろしいでしょうか?」


「……始まる前に聞いておきたい。全力でやっていいのか?」


 木剣を構えて向き合ったまま、マークがエリカにそう尋ねる。

 確かに、マークが本気で挑めば、いくら木剣を使った勝負でもエリカに怪我をさせてしまう可能性もある。

 マークの質問は、その可能性を考慮してのものだろう。


「ええ、勝負に手加減は無用ですわ。私、その辺の冒険者よりは強いつもりですの」


「ああ、そりゃ良かった。お嬢様に怪我をさせちまったら、後が怖くて仕方ないからな」


「おう、マークの(あん)ちゃんよ、俺からも言っておこう!エリカに遠慮はいらんぜ!」


 エリカがそう答え、カタギリからも念を押すようにそんな言葉が掛けられた。

 ある程度はマークの実力を知っているカタギリが言うのだから、心配する必要はないのだろう。

 その会話が終わるのをきっかけに、二人は再び真剣に向き合った。

 そのまま数十秒か、数分の時間が流れ、辺りの空気が緊張に包まれていく。


「それでは、マーク・マルティネス、エリカ・ロックウェルの両者向かい合って!」


 シン、と静まった決闘場にカタギリの声が響き、静寂が破られる。

 そのまま続けるように、カタギリは大きく息を吸い込んだ。


「それでは、ここに決闘の開始を宣言する……!」


 カタギリによる開始の合図が響き渡り、決闘の開始が告げられた。

 こうして、唐突に決まった決闘はいよいよ幕を開ける。


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