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社畜・イン・ファンタジー ~異世界ブラック冒険譚~  作者: 揚げたてアジフライ
第四章 銀雪と矜恃
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第68話 行列のできるギルド酒場?

プロットだけはあったので、頑張って連日投稿です。

明日も投稿できれば良いなあと思ってますが、投稿できたとしても時間はこのくらいか、もっと遅いかだと思います。

『ピッ、ピッ、ピヨッ!』


「いやぁ、ヒヨリちゃんはよく食べるねぇ」


 分けてもらったドラゴンの燻製肉をついばむヒヨリを見ながら、ケヴィンはいつも通り間延びしたような声でそう呟いた。


「ごめんよ、ケヴィン。急に押し掛けちゃって……」


「ううん、全然大丈夫だよぉ。こんなに喜んでもらえるなら、僕も作った側として鼻が高いよぉ」


『ピッピィ♪』


 ケヴィンの大きな手で撫でられながら、ヒヨリが嬉しそうに鳴き声を上げる。

 こうして見ると可愛いんだけど、最近攻撃が凶悪になってきたんだよなぁ……。


「でも、もうそろそろドラゴン肉は品切れなんだよねぇ……」


『ピピピッ!?ドラゴピーヨ……』


 ケヴィンのそんな発言を聞いたヒヨリは、がっかりしたように項垂れた。

 既に相当食べている筈なのだが、まだ足りないとでも言うのだろうか。


「ヒヨリ、そろそろお暇しよう……。いくらケヴィンがお礼はいらないって言ってても、そろそろ俺の心が痛い……」


『ピピィ!ピヤーッ!』


 嫌とでも言ったつもりなのだろうか。そういう発音だった気がする。

 これ以上ケヴィンから食料を出してもらうなら、俺も手土産だけじゃなくお金を払わないといけなくなる。

 いや、というかそろそろ払った方がいいレベルに達している。


「それじゃあ、僕のとっておきのテール肉を上げるから、これで我慢してねぇ?」


『ピピィ……ピッピヨヨ!』


 ヒヨリは、ケヴィンが棚の奥から取り出した分厚いドラゴンのテール肉の匂いを嗅いで、これなら満足とばかりに再びついばみ始めた。


「ごめんよ、ケヴィン。とりあえず、少ないけど謝礼を渡しておくよ……」


 ケヴィンの家の肉を食い尽くさんとばかりの惨状へのお詫びとして、ケヴィンには少ないが1万エル程渡しておく。

 貴重なドラゴンの肉を分けて貰ったのだから、これでも安いくらいだ。


「うわぁ、ありがとうねぇ!これで、今夜は美味しいものでも食べに行くよぉ」


 笑顔のケヴィンに見送られながら、大量の肉を食べて真ん丸に膨らんだヒヨリを抱えて街へ出る。

 全く、ヒヨリと再会してから、こいつ関係で出費をしてばっかりだ。

 まぁ、元はと言えば俺がヒヨリの事を忘れていたのが悪いのだが……。


「はぁ、これからの食費が憂鬱だな……」


 俺は成長して大きくなったヒヨリを想像しながら、それに比例する様に増加しそうな食欲に思わず溜息をつく。

 そんな俺の憂鬱なんて知らぬとでも言うように、眠そうに舟を漕ぎ始めたヒヨリは、俺の腕の中で丸くなるのだった。



                ◆◆◆



 時刻は既に正午を回り、太陽は少し西へと傾き始めた。

 強い日差しが差すモンテス通りは、今日もグスタの街で一番の賑わいを見せている。

 俺は商人たちの呼び込みを適当に聞き流しながら、雑踏の中を進んでいく。


「うん……?ヨシヒロと、その黄色い毛玉はヒヨリか……」


 前から暇そうに歩いてきたマークが、俺達を見つけて声を掛けてくる。

 確か、仕事があるとかで出かけて行った筈だったが……。


「あれ?マークじゃないか。言ってた仕事はもう終わったの?」


「ああ、ただの受け渡しと伝達だけだったからな。すぐに終わったよ」


「それって、危ない薬の受け渡しとか、闇の商人への伝達とかじゃないよね……?」


「んなわけねえだろ!俺をなんだと思ってんだ!」


 良かった。幸いなことに、俺の相棒は犯罪の片棒は担いでいないらしい。

 ぶっちゃけ、冗談半分と言ったところだったのだが。


「それならよかったよ。ほら、マークって突然一人で仕事とか言って出かけちゃうからさ」


「ああ、それのことか。あれは、俺がソロで活動していた頃の依頼主からの仕事なんだ。なまじ敏捷が高いから、飛脚代わりをやらされてんだよ。手紙やら宅配やらな」


 なるほど、マークも案外律儀なところがあるんだな。

 つまり、駆け出しの頃に依頼してもらった恩返しとばかりに、今でもその人からの依頼を受けているのだろう。


「そういや、ヨシヒロはこの後の予定は決まってんのか?」


「いや、暇だからこの通りをぶらついてただけなんだよね。マークの方はどうなの?」


「俺も似たようなもんだ。今日の予定は、その昔馴染みからの依頼だけだったからな」


 マークも俺と同じく、特に予定が無かったから通りを眺めていたのだろう。

 通りに立ち並ぶ商店を探せば、案外掘り出し物やらお買い得品があったりするからな。

 まぁ、それはさておきだ。冒険者が暇をしているなら、行く場所は一つしかない。


「とりあえず、ギルドに行くか……」


「うん、そうだね。ここを眺めてたってレベルが上がる訳じゃないし」


 そんなこんなで、偶然にも数時間ぶりの再会を果たした俺達は、ごった返す通りを抜けて、遥か先に見える冒険者ギルドへと向かって歩いて行った。



               ◆◆◆



「ああ?何だか、妙に混んでるな……?」


 いつもと違うギルドの光景に、マークが眉をしかめてそう呟く。

 確かに、いつも人の多い冒険者ギルドではあるが、今日はその倍以上の冒険者達がギルドへと押し寄せていた。


「何かあったのかな……?」


「まぁ、十中八九そうだろうな。無理やりだが中に入って様子を確認しよう」


 俺達は冒険者達の波を押しのけながら、無理やりギルドの中へと侵入を試みる。

 こちらが押せば相手も押し返してくるので、中々進むことが出来ない。

 しばらく人混みと格闘し続けた俺達は、十分程経過した頃にようやくギルドの中へと入ることが出来た。


「はぁ、はぁ……。なんて人混みだ……!」


「頑張ろう、マーク……。とりあえず中には入れたぞ……!」


 外よりはマシだが、まだまだごった返しているギルドの中をぐるりと見渡す。

 すると、ギルドに併設された酒場の、ある一角だけに異様な程の人が集まっていた。

 それも殆どが屈強な男達ばかりだ。正直、むさ苦しくて仕方がない。


「おいおい……。何だ、あの異様な集団は……?」


「いくら何でも、あれに近づくのはかなり勇気がいるんだけど……」


 だが、この人混みの真相を明かす為には、あの筋肉の壁を乗り越えなければならない。

 俺達は、意を決して汗臭い集団の方へと近づいて行った。


「うおおおッ!カタギリさん!こっち向いてくれーッ!」


「カタギリ様ー、サインを下さいッ!あなたに憧れて冒険者になりましたぁーッ!」


「てめえ!抜け駆けするんじゃねえ!俺がカタギリさんに握手してもらうんだよ!」


「てやんでぃ!べらぼうめ!儂がカタギリ様にハグしてもらうんじゃい!」


 その地獄の奥には、酒場の小さな椅子にどっしりと腰かけたカタギリの姿があった。

 まるでアイドルのイベントのようだが、ここにいるのは筋肉と筋肉と筋肉だけだ。


「おう、落ち着けお前ら!握手でもなんでもしてやらぁ!とりあえず一列に並べぃ!」


 むさ苦しい筋肉ダルマ達を制御するように、カタギリが声を上げて列整理を始める。

 その一喝により、あれだけざわついていたギルドはシンと静まり、長蛇の列が出来上がった。そして、列に並ばなかった俺とマークだけが取り残される。


「おお、(あん)ちゃん!やっと来たか、待ってたぜ!」


 視界が開けたことにより俺達を見つけたカタギリは、こちらに向けて大きく手を振った

 その様子を見た列に並ぶ冒険者達は、俺達に敵意の籠もった視線を向ける。


「なんだァ、アイツ……?」


「……あの男達、カタギリさんの何だってんだァ?」


「抜け駆け許すまじ、死すべし……!」


 おっと、まずい。今にも暴動が起こりそうだ。

 本当に、彼氏が発覚した人気アイドルだとでも言わんばかりの反応である。

 カタギリさんが有名な冒険者だったのは知っているが、どれだけ人気なんだよ……。


「……あの、カタギリさん!とりあえず、ギルドから出ませんか?」


「ええ、俺もそれが良いと思います。むさ苦しくてしょうがない……」


 俺達は状況を把握していないカタギリに近づき、ひっそりとそう告げた。

 それを聞いたカタギリは、髭をなぞりながら目を瞑って何か考え始める。


「うーむ、確かにそうだなぁ。とりあえず、兄ちゃん達は俺の家に来い!」


「「ええええっ!?」」


 そう言って豪快に笑うカタギリの突然の提案に、俺とマークは揃って驚きの声を上げる。


 こうして、俺達は突如として、伝説の大戦士と名高いカタギリ・ロックウェルの家へと招待されたのであった。


スーパーアイドル☆カタギリさん。


最近アリシアさんとか出せてないので、そろそろ登場させたい。

というか、4章の本編に入る前に登場させないと出番が無いのでどうにかします。

キャラを腐らせるのは避けたいので……。

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