第67話 帰還、いつもの日常
ギリギリですが、なんとか隔日投稿。
しばらくは、日常回が続く予定です。
章タイトルにもありますが、今回の章はマークをメインに動いていくことになります。
長くなるか、短くなるかもまだ未定ですが……。
研究本部でのシュタイナーとの激闘から早二日が経過していた。
シュタイナーを捕縛して帰ってきたその日にはこの間の報告会に呼ばれていたので、今日になってようやく、まともな休みが取れることになる。
クロエがパーティに加入することになった昨夜の祝勝会で決まったことだが、今日から5日間はそれぞれ自由行動で休息を取るとのことだ。
それぞれやる事も行く場所もあるだろうとのことで、マークによって決定された。
ちなみに、クロエの方は、一度ダルク地方に戻って一族の慰霊をしてくるとのことだ。
今回の報奨金で、少なくとも家族のお墓だけは建てたいと言っていたので、帰ってくるのもしばらく先になるかもしれないな。
マークに関しては、別の仕事があるとかでどこかに消えて行ってしまった。
こういう事はたまにあるけど、マークはあまり話したがらないので、あまりしつこく聞かないようにしている。
ほら、マークって盗賊だし、闇の仕事とかしてたら俺まで消されちゃうかもしれないじゃん……。
かく言う俺は、特にすることも無いのでグスタの街で過ごしている。
クエストに出かけてもいいのだが、今日明日くらいはゆっくりと過ごしたい。
流石に、往復の旅路が長かったのもあってかなり疲れたしな。
「うーん……。それにしても、何か忘れてるような……」
別にやるべき事がある訳でもないし、買う物があった訳ではない。
ただ何となく街をぶらついていたのだが、何かが胸に引っかかったように思い出せないのだ。
大事な事だったとは思うのだが、それが何だったのかが全く思い浮かばない。
今回の任務の報奨金はしっかり受け取ったし、正式な昇格の手続きに関しては、ギルドの職員の方がやってくれている。となると、本当に何だっただろうか……。
「そこの兄ちゃん!焼き鳥串どうだい?」
ぼんやりと通りを歩いていた俺に向けて、威勢のいい呼びかけが掛かる。
焼き鳥か。ちょうど小腹も空いているし、良いかもしれないな。
「ああ、じゃあ一本もらうよ!いくらかな?」
「あいよ!150エルだぜ!」
「じゃあ、これでちょうど置いてくよ!ありがとう!」
「おう、きっちり受け取ったぜ!また来てくれよな!」
店員から受け取った焼き鳥串を一口齧る。
炭火で焼かれた皮はパリッと香ばしく、特製の甘辛いタレの味がたまらない。
そう言えば、この世界にも普通に鶏や牛がいて、畜産なんかもやってるんだよな。
まぁ、魔物なんて育てたところで、屠ると消えてしまって食べられないから当たり前ではあるのだが。
実際、グスタの街の片隅にも鶏舎や牛舎があって、そこで畜産業が行われている。
「うん……?養鶏場……?」
何か、鳥に関することだった気がする。
もう少しで思い出せそうだ。喉元辺りまで出かかっている気がする。
俺は往来の激しい通りの端により、立ち止まって少し考えた。
「……ああああっ!ヒヨリっ!!」
掃討作戦で長期間街へ戻る予定が無かった俺は、養鶏場に頼み込んで、ヒヨリをしばらくの間預かって貰っていたのだ。
使い魔だからといって特別に宿へ入ることを許可されているものの、流石に出かけている間の世話までは頼めない。
「うわぁ、忘れてたのがバレたら、絶対機嫌悪くなるだろうだなぁ……」
使い魔だからなのか、元々がそういう種族の魔物だからなのかは分からないが、ヒヨリはこちらの言うことを完全に理解している程に頭がいい。
毎晩俺が宿でブラッシングしてやるのが日課のようになっているので、それが無いだけでも機嫌が悪くなっていそうなのに、考えるだけで憂鬱だ。
ともかく、早く迎えに行こう。
重大な使命を思い出した俺は、通りを抜けて養鶏場へと駆けて行くのだった。
◆◆◆
通りを抜けて走ることおよそ15分、グスタの街をぐるりと囲む高い城壁に沿って横に長く建てられた、ブランチ養鶏場へと辿り着いた。
鶏と表現したが、ここで飼われているのは俺の世界の鶏に良く似た鳥で、全身の羽は青く、大きさに関しては1メドル近くある。
「すいませーん!ご主人はいますかー?」
管理人室のような、木製の小さな掘立小屋にそう呼びかけると、中から男の返事が聞こえてきた。
「やっと来たか!早くあの使い魔を引き取ってくれ!」
勢いよく扉を開け放って出てきた牧場主の男は、俺を見るなり何故か切羽詰まったようにそう叫んだ。
「ええと、ヒヨリに何かあったんですかね……?」
「何があったもクソもねえよ!あの使い魔ときたら、置いて行かれてから日を増すごとに機嫌が悪くなって、憂さ晴らしとばかりにうちの鶏を全部シメてボスみたいになっちまった!」
ああ、やっぱり超絶不機嫌なようだ……。
でも、あの巨大な鶏と比べるとヒヨリはまだ両手に乗る程度の大きさだから、かなり大格差がある筈なんだけどな。
そこはやはり、使い魔だからということなのだろうか。
「うわぁ、すいません……。すぐに迎えに行きます……!」
「そうしてくれ!無駄に大飯を食らうし、うちじゃ面倒を見切れねえよ!」
「ご、ごめんなさーい!」
申し訳なさで居たたまれなくなった俺は、半ば逃げ出すようにヒヨリの下へ向かう。
確か、預かって貰っているのは一番奥にある大きな鶏舎だった筈だ。
『『『コケ、コケ、コケ……!?』』』
巨大な鶏がひしめく鶏舎に入ると、何故か鶏たちが俺に道を譲るように左右へ避け、首を垂れるように地面に頭を付けた。
「え、何だこれ……」
『コケーコッコ、コケーーーーーーッ!!!』
俺が鶏たちの奇行に困惑していると、鶏たちの中でも一際大きい個体が、辺りに何かを伝えるように鳴き声を上げた。
『……ピッピヨ!』
奥からヒヨリが出てくると、鶏達が避けて出来た道を進み、静まれとばかりにざわめく鶏舎を一喝した。
シンと静まった鶏舎を、ヒヨリがコツコツとこちらに向けて歩いてくる。
「ヒヨリ、ごめんよ!迎えに来たよ!」
『ピッピヨーッ!』
俺はヒヨリが飛び込んでくるのを待つように両手を広げて迎える。
それに答えるように、ご機嫌な様子のヒヨリがこちらへ駆け寄ってきた。
『ピピピピピッ!ピイィィィィィッ!!!』
感動の再開に俺が頬を緩めたのも束の間、ヒヨリの様子が急変し、俺に飛びかかってきた。
そして、ヒヨリの全力の蹴りが俺の鳩尾にクリーンヒットする。
「ごはぁ……ッ!?」
不意を受けた俺は【硬化】発動する余裕も無く、ヒヨリの蹴りをまともに受けた。
そうとう高くなっている筈の俺の耐久値を超えてくるとは、ヒヨリの奴、なんて攻撃力をしてるんだ……。
『ピィ……。ピピピピヨ……?』
ヒヨリは、うずくまる俺を羽でポンポンと叩きながら、「まぁ、これで勘弁してあげるわ」とばかりに声を掛けてくる。
ヒヨリによる制裁を受けた俺の様子を見た鶏達は、蜘蛛の子を散らすように悲鳴を上げて逃げていった。
まぁ、巻き込まれたら堪らないというその判断は賢明だろう……。
「ご、ごめんよ、ヒヨリ……。帰ったらご馳走するから、許してくれ……!」
『ピヨッ?ドラゴピヨッ!』
「え?もしかして、ドラゴンの肉が食べたいのか……?」
『ピィ!ピーヨ!』
その通りだとばかりにヒヨリが頷いて鳴き声を上げた。
というか、今ちょっと喋らなかったか……?
本当に、ヒヨリの知能の高さというか、謎の能力の高さは底が知れない。
「うーん、ケヴィンに相談してみるけど、それでダメだったら普通の肉で我慢してね?」
『ピィ……ピピピィヨ……』
ヒヨリが露骨にがっかりしたように項垂れる。
今の鳴き方は俺でもはっきり分かる。絶対に「まぁ、それでいいよ」と言う意味だ。
とは言え、恐らくケヴィンのことだから、あの時の炎龍の肉をまだ確保しているような気がする。
かなり持ち帰っていたし、保存用に加工するとも言っていたからな。
「はぁ、納得してもらえて何よりだよ……。それじゃあ、ケヴィンの所に向かおうか」
『ピッピヨ!』
俺のそんな言葉に、ヒヨリは了解とばかりに羽で敬礼した。
ケヴィンの居場所は分からないが、恐らくはギルドで尋ねれば教えてくれるだろう。
緊急の呼び出しなんかに備えて、冒険者は常に自宅や宿泊先をギルドに伝えておく規定になっているからな。
「はぁ……。とりあえず、ケヴィンに手土産でも買って、ギルドに向かうか……」
「……ピーヨ?」
首を傾げるヒヨリを抱えると、俺は鶏舎を出る。
その間もずっと、鶏達がヒヨリの事を怯えたように見つめていたが、こいつは一体何をしたのだろうか……。
「なんか、重くなったというか、大きくなったか?」
『ピッピピ!』
預けた時と比べると、少し大きくなっている気がする。
これ以上大きくなるようなら、どこかヒヨリ専用に居場所を確保しないといけないかもな。
そんな事を考えながら、俺は迷惑をかけた主人に謝罪して、養鶏場を後にした。
またよろしく頼むと言ったら、もう勘弁してくれと言われたので、とりあえず迷惑料として銀貨を何枚か握らせておいた。
なんだか賄賂のようで気が引けたが、これで何かあったらヒヨリを預けることができるだろう。
こうして俺は、数日ぶりにヒヨリとの再会を果たした。
危険だからと思って置いていったが、今度からはクエストにもヒヨリを連れて行った方がいいかもしれないな……。
少し憂鬱な気分で、俺はケヴィンへの手土産を買うために市場へと向かうのだった。
ちなみに、ヒヨリはメスです。
書いてあったか忘れたので一応捕捉。
次回の投稿は、早ければ明日、遅ければ明後日(7/19)予定です。
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