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社畜・イン・ファンタジー ~異世界ブラック冒険譚~  作者: 揚げたてアジフライ
第三章 新たなる出会い
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第64話 逆転の一手

7月6日で、投稿から一ヵ月が経過していたようです。


語彙力とか発想力?みたいなのが無いので魔法の詠唱文を考えるのがわりと大変ですね。

でも詠唱文は抜いてはいけないと思うのです。

「ヨシヒロ、クロエの守りは任せるぞ!」


「ああ、勿論!マークも気を付けて!」


 マークが敵を撹乱しつつ戦力を分散させ、俺がクロエを守るように敵の波を凌いでいく。

 先程までの絶望的な状況とは違い、俺達にはどこか余裕すらあった。


 自信家のクロエが必ず成功させると言ったのだから、いくら時間が掛かったとしても、あの作戦が成功するのはもう確定事項と言ってもいいだろう。

 この多勢に無勢の絶望的な状況を、一気にひっくり返してしまう程の強力な魔法。

 一体どれ程のものなのか想像もできないが、今はクロエを信じて待つしかない。


「……今その手綱を我が下に!」


 詠唱を終えたクロエが魔法を敵に向けて放とうとする。

 掲げられた右手に大きな魔力の渦が集約するが、それも数秒で消えてしまった。

 失敗した魔力の残滓だけが辺りに散っていく。


「ダメだわ、失敗よ……!」


「問題ない!すぐに再詠唱を開始してくれ!」


「ああ、まだ余裕だ!クロエは詠唱にだけ集中して!」


「わかったわ!二人とも、もう少しだけ耐えて……!」


 クロエは瞳を閉じると、再びその長文詠唱を開始する。

 唄うようなその声だけが、苛烈極まる戦場の中で不思議と耳に木霊した。


「……シッ!」


 マークが敵の攻撃を素早く回避し、そのまま敵の胸にある核をナイフで貫く。

 殆どの魔物は体内にある核を破壊されることで消滅するため、これが一番理にかなった戦法なのだ。

 ただし、それも簡単に出来ることではなく、マークの技量と観察眼があってようやく達成できることではあるが……。


「【挑発タウント】を発動出来ないなら……!」


 俺は魔法で両腕のみを硬化させ、それを打ち鳴らすように金属質な音を辺りに響かせることで疑似的な注目状態を作り出す。

 魔物とは言え、相手は生き物だ。比較的単純な知能を持つ魔物が相手であれば、ただ大きな音を出すだけでも挑発代わりの戦法になる。


 普通なら【挑発】を発動している状況ではあるが、もしここで魔法を使ってしまえば、恐らくこの部屋にいる全ての魔物が【挑発】の範囲に含まれてしまい、俺はその全てから敵意を向けられることになってしまう。

 それを避けるための苦肉の策でもあったのだが、俺の目論見通り、周囲にいた数匹だけを引き付けることに成功した。


 次々と武器や自身の爪を振りかざしてくる敵の攻撃を受け止め、時には払いのけ、そして隙を付くように硬化した拳で反撃カウンターを行う。

 改造により強化された攻撃は重く鋭いが、それでも受けきれない程ではなかった。

 攻撃を受け止める度に鋼鉄と化した腕が軋み、嫌な音を立てる。多少痛むが、傷が残る程でも、我慢できない程でもない。


 何よりも今、俺が出来ることは、後ろにいる少女を守る事だけなのだから。


「クロエ、いけるか……!?」


「ごめんなさい……!やっぱり、魔力の制御が上手くできないの……!」


 攻撃を受け止めながら、隙を見計らった俺はクロエへそう尋ねる。

 クロエは再び詠唱を終えて膨大な魔力を制御しようと苦戦しているが、収縮と拡散を繰り返した魔力の渦は、制御から外れてそのまま霧散してしまった。


 ここまで制御に失敗していた魔力は膨大ではあるが、恐らくはまだ序の口だ。

 魔法に詳しい俺でも分かるほどに、詠唱によって練り上げられていた魔力の総量は想像を絶するものだった。

 それが攻撃なのか補助なのか、それとも妨害の魔法なのかは分からないが、その魔法が完全に発動さえすれば、この場にいる魔物の全てを完成した魔力の波が飲み込むだろう。


「前衛の俺達のことは気にするな!クロエは魔法にだけ集中してくれ!」


「クロエなら絶対に大丈夫だって、俺達もそう信じてるよ!」


「……分かったわ。次で必ず成功させて見せる!」


 そう言ったクロエは、再び目を瞑ると深呼吸して詠唱のために集中力を高め始めた。

 詠唱以外の全てを思考から放棄するまでに集中しているクロエには、もう俺達の声も戦闘の様子も、全てが届かなくなるだろう。


 これはきっと、100体を超えて迫りくる敵の全てを、俺達が対処してくれるというクロエからの信頼の証だ。

 そうであれば、期待通り敵の波からクロエを守り続けることで、俺達もその信頼に応えなければならないだろう。

 俺達は、ようやく心から互いの事を信頼できたのだ。それこそが、絶望を希望へと変える一筋の光になる。


「……遅いッ!」


「この程度なら……!」


 改造により通常の何倍もの敏捷を手に入れた筈の魔物の攻撃を、マークは易々と躱して急所への的確な攻撃を放っていく。

 あまりの素早さに魔物は攻撃されたことにも気づかず、悲鳴を上げる暇さえ与えられずに光となって消えていった。


 一方で、クロエを守る最終防衛線となる俺は、先程と同じように迫りくる魔物の攻撃を硬化した掌で掴み取ることでその自由を奪った。

 多少荒業にはなるが、この程度の攻撃なら【硬化】の魔法により殆ど無効化できる。

 そして、そのまま逆の腕で全力の【鉄拳】を放つことで吹き飛ばす。

 威力はそれ程出せないが、相手をノックバックさせることで時間は十分に稼げる。


 マークや俺の必死の抵抗により敵が倒される度に、シュタイナーが現れては魔物を補充していく。

 やはり、無限とも見紛うこの軍勢全てを相手には出来ない。


 だが、この状況が打破されるのも時間の問題だろう。

 何せ、今の俺達には最高の魔術師が着いているのだから……。


「……誇り高きベルヴィルの血よ、その魔力よ」


 極限まで集中力を高めたクロエの詠唱が開始され、凛とした声が響き渡る。

 そして、魔力が高まるように可視化され、クロエへと集約していく。

 様々な色に輝く魔力の光は、どこか幻想的ですらあった。


「……気高き絆と尊き信頼を紡ぎあげ、その力の全てを我に貸し与え給え」


 一つのうたのように紡がれるその詠唱は、苛烈な攻防と俺達の疲労を浄化するように流れていた。

 クロエ自身の魔力と周囲から集められた魔力が混ざり合い、その手元へと集約して大きな渦を作っていく。

 七色とも言える程の輝きの渦は、これまで見たどんな魔法の光よりも美しい。


「……願いに応えるならば、今その魔力を喰らい、森羅万象の魔力を統べ、今その手綱を我が下に!」


 辺りの魔力を吸い尽くすように膨張し続ける魔力の渦は、臨界に輝きながら膨らんでいく。

 そして、限界まで膨張した魔力の渦は、クロエの声に応えるように完璧に制御下に置かれた。

 臨界に達した魔力の渦は、クロエの制御により、その力を集約するように小さく縮んでいく。


「……【魔法改変マジックハック】ッ!」


 クロエの詠唱が終わると同時に、収縮した魔力の渦が戦場と化した大広間の全てを包み込んだ。


 同時に、俺達の視界を魔法が生み出した光が支配する。

 視界を奪われたにも関わらず、何故かその光はとても美しいものに思えたのだった。

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