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社畜・イン・ファンタジー ~異世界ブラック冒険譚~  作者: 揚げたてアジフライ
第三章 新たなる出会い
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第55話 策士クロエの大戦略

遅くなってしまいましたね……。

今書いたばかりです。

「……それはね、私の【水牢獄アクアプリズン】と、マークの【聖縛鎖ホーリーバインド】であのデカトカゲをふん縛って、残りのメンバーでボコボコにする作戦よ!」


 クロエが名案とばかりに話す作戦に、全員が呆れた様子で溜息をつく


「な、なによ!いい作戦じゃないの!」


「いや、ただのゴリ押しじゃないか……」


「さ、流石に厳しいと思いますぅ……」


 クロエの提案は、次々に反論されていった。

 あのマイペースなケヴィンですら残念なものを見るような視線を送っている。


 だが、その作戦を聞いてから考え込んでいたマークが、ふと声を上げた。


「……いや、案外いい作戦かもしれないぞ?」


「なによ、マークのくせに分かってるじゃない!」


「一言余計だが……。クロエ、【水牢獄】を調整して、水の鎖だけを出現させることは可能か?」


「多分……できると思うけど、確実とは言えないわ」


「いや、可能性があるならそれで充分だ。むしろ、他に作戦が思い浮かばないかな……」


 確かに、あのマークが他に作戦を思い浮かばない状況で、少しでも可能性があるなら、それを試してみるべきかもしれない。

 リスクを冒さずして、あの炎龍を討伐することはできないだろう。


「じゃあ、作戦の順序を話していくぞ。まず、俺の【毒の牙(ポイズンファング)】で猛毒状態にして極限まで抵抗する力を奪ったうえで、炎龍フレイムドラゴンを2つの魔法で拘束する」


 確かに、今の状態では炎龍を拘束することができないかもしれないが、【毒の牙】で相手の攻撃力と動きを鈍らせることができれば、拘束できる可能性と時間はぐんと上がる。


「……でも、マーク君の攻撃が終わるまではどうするのぉ?」


 確かに、ケヴィンの言う通りだ。

 不意打ちをするにしても、どうにかその隙を作らないといけない。

 マークは一体、その問題をどうするつもりなのだろうか……。


「ヨシヒロが根性で耐える」


「うっそだろマーク!?まぁ、いけるとは思うけど……」


 マークの無茶な作戦に思わずツッコミを入れるが、確かに無理ではない。

 勿論、俺の推測が成功すればの話ではあるが……。


「おいおい、流石にヨシヒロでも無理がねえか!?」


「し、死んじゃいますよう!」


「いや、俺が【硬化】してリーシャに防御上昇の援護魔法を掛けて貰えば、多分あの【超爆炎フレイムノヴァ】でも軽い火傷くらいで済む……と思う」


 驚くランドルフとリーシャに、俺はそう答えた。

 リーシャの強化魔法は、相手のステータス値に応じて効果が上昇する。

 俺の耐久値であれば、恐らくはかなりの能力上昇が見込める筈なのだ。


「でも、あくまでも可能性の話ですよぅ!」


「流石に、僕も危ないと思うなぁ……」


「でも、俺だけがリスクを背負う訳じゃない。遠距離攻撃のできる、ランドルフとリーシャ、それにクロエには、遠くから魔法で牽制してもらいたいんだ」


 俺の提案に、全員が少し考え込む。

 まぁ、あの【超爆炎】を見てからでは不安の方が大きいのも当然だ。


「……俺はやるぜ!ヨシヒロだけを危険な目に合わせてらんねえ!」


「そうね、攻撃を受けるのはヨシヒロだし、私もいいと思うわ」


 理由がわりと対極的だが、ランドルフとクロエはこの作戦に乗ってくれるらしい。

 そんな二人の言葉を聞いたリーシャは、あわあわとしている。

 そして、しばらくそんな様子で考えていたと思うと、急に声を上げた。


「う、ううっ!私も……手伝いますっ!」


「リーシャもいいの?俺が【挑発タウント】で炎龍を引き受けるとは言え、絶対に安全っていう保証はないよ?」


「でも、皆さんが頑張ってるなら、私もやります!」


「僕も、できることがあるなら手伝うよぉ!」


 リーシャの参加と同時に、ケヴィンも手伝いを申し出る。

 これで、炎龍の第二次討伐作戦への全員の参加が決まった。


「よし、じゃあ第二次討伐作戦開始だ!」


「「「「「おー!」」」」」


 気合は十分、これなら、炎龍なんて目じゃないかもしれないな。



           ◆◆◆



「おいトカゲ野郎!こっちを見ろ!」


 俺が【挑発】を発動しながら炎龍へと突っ込み、討伐作戦が再開された。


「……ヨ、ヨシヒロさんっ!」


 それと同時に、後方に控えるリーシャが俺へと防御力強化の魔法を掛けてくれる。


『グルルロオオオオオオオオオオアアアッ!!!』


 先程の攻撃でまだ怒っているのか、炎龍はこちらを見つけると血走った目でそんな叫び声を上げる。

 そして、大きく息を吸い込むと、こちらに向けて大きな火球を吐き出した。


「……【硬化】ッ!!!」


 その火球にタイミングを合わせ、俺は全身を硬化させてそれを無効化する。

 いける、俺が【硬化】すれば炎龍の炎も無効化できる……!


「おおおおおおおおっ!!!」


 火球の無効化と同時に全身の硬化を解除させ、再び俺は炎龍へと走り始める。

 加護により強化された俺の脚力が、一気にその距離を詰めていく。


「【鉄拳】ッ!!!」


 突っ込むと同時に右拳を硬化させ、俺は全力の右ストレートを放つ。

 大したダメージにはならないだろうが、それでも積み重ねていかば馬鹿にはならない筈。


『グルルルルルルアッ!!!!』


 俺の不意打ちに更に怒った炎龍は、その凶悪な爪で連撃を仕掛けてくる。

 見掛けによらず素早いその攻撃は、受け流すだけで精一杯だ。


 しばらくの間、硬化した俺の両腕と炎龍の爪が交差する音だけが辺りに響き続けた。


「ありがとよ、ヨシヒロ!おかげで隙だらけだッ!!」


 連撃を受け続ける俺にだけ注意を向けていた炎龍は、マークのことに全く気付いていなかった。

 高い敏捷を活かして背中まで駆け上がったマークは、その背中に猛毒に染まるナイフを突き立て、一瞬で離脱する。


『グギャアアアアアアアアオッ!?』


 マークの一撃を受けた炎龍が叫びを上げると同時に、体勢を立て直す。

 そして、天に向かって再び雄叫びを上げ始めた。


「【超爆炎】が来るぞ!ヨシヒロ以外撤退、リーシャはもう一度援護魔法を!」


「は、はいっ!」


 マークの指示により全員が撤退する最中、俺に向けてリーシャの魔法が放たれる。

 全身に力が漲り、その強化が実感できる。


 そして、【硬化】した俺一人を残して全員が撤退した山道に、再び【超爆炎】が放たれた。

 爆炎が岩を砕き、焦土と化した土地すら溶かし、ガラス状へと変えていく。


(……流石に、熱いな!)


 獄炎に染まる視界の中、俺はただひたすらにその炎を耐え続ける。

【超爆炎】が【硬化】と強化魔法すら突き抜け、チリチリと俺の肌を焦がしていく。

 恐らく腕を中心に軽い火傷を負ったが、この程度ならまだ耐えきれるっ……!


「……ああああっつい!!」


 炎龍の【超爆炎】が終わると同時に、俺は【硬化】を解除し、目の前の巨体へと突貫を仕掛ける。

 全力の助走により鋼鉄と化した俺の右腕は更に威力を上げ、炎龍の腹へとねじ込まれる。


『グルルルアアアアアアアアオッッ!?』


 先程の不意打ちよりもダメージを受けた炎龍は苦しみながら身をよじらせる。

 すかさず俺は【挑発】を掛け直すと、再びその怒りを一心に受け止め続ける。


「……【毒の牙】ッ!!」


 俺だけに注意を向ける炎龍にマークが背後から迫ると、その無防備な背中を三度猛毒の刃が襲った。

 ここまでは完璧だ。後は時間経過で、炎龍が弱っていく筈……。


「回復する!遠距離組は俺から注意を引き離して!」


 全身に負った火傷を回復させるため、俺は【挑発】を解除すると遠距離攻撃のできる3人に声を飛ばす。


「応よ!任せろッ!【火球】ッ!」


 真っ先にランドルフが声を上げ、炎龍の顔へと魔法を放つ。

 炎龍に耐性のある炎属性のためダメージは無いものの、その視界を曇らせる。


「……い、行きますっ!【風撃エアショット】!」


 炎龍の視界が晴れると同時に、今度は後方からリーシャの魔法が放たれ、炎龍に直撃する。

 【挑発】が解除されたことにより、炎龍の意識はそちらへと傾いた。


「ひいいっ!助けてくださーいっ!」


 リーシャがそんな悲鳴を上げると同時に、今度は炎龍の右側から水の魔法が放たれた。


『グギャアアアアアアアアアアオッ!?』


 クロエの【水弾アクアバレット】は赤い鱗を数枚飛ばすだけに留まるものの、弱点の魔法を受けた炎龍には確実にダメージとなっている。


「ありがとう、みんな!【挑発】ッ!」


 3人の作り出した時間を活用して回復した俺は【挑発】を発動させ、再び炎龍の意識をこちらだけに向けさせる。

 四方八方から繰り出された攻撃に、更に怒りのボルテージを上げた炎龍は、俺に向かって体重を乗せた右腕での振り払いを放った。


『グルルロオオオオッ!!!』


 しかし、マークの放った猛毒により確実に弱体化したその一撃は、硬化した俺の腕に難なく弾かれる。

 続いて左腕の一撃が放たれるが、これもまた軽く受け流した。


「毒が効いた!マークとクロエ、頼む!」


 俺がそんな指示を出すと同時に、二人が詠唱を開始する。

 【挑発】により俺しか見えていない炎龍は、そのことに全く気付いていないようだ。


「神より賜りし聖なる鞭よ、我が魔力を喰らいて、魔を縛る鎖と成れ!【聖縛鎖】ッ!」


「大いなる水よ、我が魔力を喰らいて、その姿を邪悪を縛る鎖へと変えよ!【水縛鎖アクアバインド】ッ!!」


 マークの放った光の鎖が炎龍を縛り上げると同時に、クロエが土壇場で身に付けた応用魔法、【水縛鎖】による水の鎖が炎龍を拘束する。


『グギャアアアアアアアアアアンッッ!?』


 不意の拘束に炎龍も抵抗するが、猛毒により弱ったその体では抵抗も意味を成さない。


「今だ!全員全力攻撃ッ!」


 その拘束と同時に俺が全員に指示の叫びを上げ、5人が飛び出してくる。


「おおおおおらっ!紅狼流、狼牙ッ!!」


 ランドルフによる鋭い刺突が、炎龍の鱗を貫いて風穴を開ける。


「え、えーっと、【風連撃エアガトリング】っ!」


 それに続くように、リーシャが風の連撃を放ち、炎龍の皮膚を次々に切り裂く。


「ええええいっ!流星落としーっ!」


 大きく跳躍したケヴィンが、炎龍の太い尾へ大斧の振り下ろしを放ち、見事に切断する。


「くそ、攻撃技とかないんだよな……」


 未だにもがき続ける炎龍へと特攻を仕掛けたマークが、そんなことを愚痴りながら予備も含めた二本のナイフで連撃を浴びせる。


「避けてねマーク!【氷槌アイスハンマー】ッ!」


 マークが素早く炎龍から飛びのくと同時に、クロエの放つ巨大な氷の槌が、炎龍の頭へと直撃した。


『ギャアアアアアアアオンッ!?』


 炎龍が断末魔にも似た叫びを上げ、その場に倒れ伏す。

 だが、まだ終わってはいない……!


「行け、ヨシヒロ!今度こそ止めだ!」


 マークの檄を受け、俺は立ち上がろうとする炎龍へと全力で駆ける。


「これでっ、終わりだっ!【鉄拳】ッッ!!!」


 素早く炎龍の懐へと潜り込んだ俺は、項垂れた頭へ向けて、硬化した右腕による全力のアッパーを放つ。


『……グギャオオオオオオオオオンッ!』


 俺の全力の攻撃を受けた炎龍は、一度頭を大きく持ち上げて叫びを上げるものの、そのまま倒れ、今度こそ完全な沈黙を保った。


「「「おおおおおおおおおっ!!!!」」」


 その様子を見ていた面々から歓喜の叫びが上がる。


「やったじゃない!ヨシヒロ!地味だと思ってたけど案外やるわね!」


 クロエが相変わらず一言多い言葉を掛けながら、こちらへ駆けよってくる。


「……はぁっ、今回は死ぬかと思いましたぁ!」


 リーシャは気が抜けたかとばかりにその場に座り込み、ケヴィンに手を引いて起こされている。

 全力の攻撃を放った他のメンバーも、今ばかりは疲れ切った体を休めることに精一杯だった。


「よおし!じゃあ、ドラゴンのお肉でパーティだねえ!」


「応よ!素材祭りだぜ!」


 マイペースなケヴィンとランドルフは、炎龍へと向かって行く。


「全く、どこにそんな体力があるのやら……」


「今回ばかりは、本当に疲れたよ……。熱かったし……」


 隣同士で座り込んだマークと俺は、二人を眺めながらそんな会話をする。

 マークに渡されたポーションを飲むと、少しだけ体の傷が癒えて楽になった。


「……それじゃあ、俺も素材の剥ぎ取りに行こうかな!」


「ああ、そうだな!」


 大きく伸びをして、俺たち二人は立ち上がる。


「ちょっと!私を置いていかないでよ!」


 そんな俺達の様子を眺めていたクロエも、少し遅れて着いてくる。


 そんなこんなで、俺達の炎龍討伐作戦は終了した。

 案外元気そうな皆の様子を見るに、この後は打ち上げでもするかもしれないな……。


 そんなことを思いながら、俺は解体されていく炎龍へと駆けていくのだった。

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