第54話 ドラゴン(を倒す)クエスト
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早くも?夢が叶ったのでこれからも頑張ります!
ギルドからの指令を受けた翌日、俺はマークとクロエと共に、集合場所である街の門を訪れていた。
どうやら、ランドルフは先に到着していたようで、退屈そうに空を眺めている。
「おーい!ランドルフ!」
「おっ!ヨシヒロとマークと……魔導士の姉ちゃん!」
俺が声をかけると、こちらに気づいたランドルフが大きく手を振った。
まだクロエの名前は憶えていないみたいだったが……。
「私の名前はクロエ!あと、ただの魔導士じゃなくて上級魔導士よ!」
「おっと、そうだったか?いやあ、すまんすまん!」
案の定、ランドルフの発言が気に入らなかったのか、クロエが訂正するように声を上げる。
ランドルフは、少し怒っているクロエを宥めるようにそう言って豪快に笑った。
「みなさーん!お、お待たせしましたーっ!」
ちょうど辺りに正午を知らせる鐘が鳴り響く頃、慌てた様子のリーシャが到着した。
別に集合時間ぴったりに来た訳だし、慌てる必要はないと思うけどな……。
「いや、俺達も今来たところだよ」
「そ、そうですか!それなら良かったですっ!」
俺のそんな言葉を聞いて安心したのか、リーシャはほっとしたようにそう答える。
5人が集まり、これで、来ていないメンバーはケヴィンだけだ。
しかし、鐘が鳴り終わってから5分、10分と経過するが一向にケヴィンは現れない。
クロエはそろそろ苛立った様子で、足をパタパタさせている。
「リーシャは何か知らないの?」
「ごめんなさい、ケヴィン君、いつもマイペースだから……」
俺がケヴィンのパーティメンバーであるリーシャにそう尋ねるが、その答えは芳しくない。
この様子からして、遅刻するのもいつもの事なのだろう。
それから更に10分程経過した頃、呑気な声が聞こえてきた。
「ごめ~ん、お待たせ~!」
大通りの方から、ケヴィンが大荷物を背負ってのしのしとやって来た。
馬鹿でかいリュックを背負っているけど、なんだあれ……。
「いやぁ、ごめんごめん。準備に時間が掛かっちゃって~……」
ようやく現れたケヴィンは、相変わらず間延びした声でそう言うと頭を下げる。
「いや、まぁ待ったのは良いんだけどさ……」
「良くないわよ!」
反論するクロエはスルーして、俺は更に言葉を続ける。
「その大荷物、どうしたの?」
「そうだな。一体、何が入ってるんだ?」
マークも同じく荷物が気になったようで、俺に続いてケヴィンにそう尋ねた。
後ろでクロエが何か騒いでいるが、これもまたスルーしておいた。
「ああ、これはねえ!食料がいっぱい入ってるんだぁ!」
「やっぱり、そういうことだったんですね……」
よくぞ聞いてくれましたとでも言うような様子で答えたケヴィンの言葉に、リーシャは頭を抱えて溜息をついた。
恐らく、これもリーシャ達にとっては毎度のことなのだろう。
ケヴィンによれば、道中でお腹が空くといけないから、食べ物をいっぱい持ってきたらしい。
「ちょっと!無視しないでよ!」
いい加減我慢できないとばかりに、クロエが吠えかかってくる。
ああ、宥めるのに時間が掛かりそうだな……。
「ごめんよぉ。あ、そうだ!このキャンディを上げるから元気出してぇ?」
今にも噛みついてきそうな狂犬に、ケヴィンがリュックから大きなペロペロキャンディのようなものを取り出してそう言った。
全く、子どもじゃないんだからそんなので宥められないだろうに……。
「あ、ありがと……」
そう思ったのだが、クロエはまだ子どもだったようだ。
今度からクロエが怒った時のためにキャンディを常備しておこうかな……。
「はぁ……。先が思いやられるが、そろそろ出発するか……」
マークがマイペース過ぎる彼らに呆れたようにそう告げる。
こうして、俺達は30分程遅れて、カストゥール山脈へと旅立ったのだった。
道中での話によると、ケヴィンは大斧を使う純粋なパワーアタッカーで、魔法は使えないとのこと。
そして、リーシャは初級の風魔法と、味方を強化する魔法が使える補助役。
普段は、ケヴィンに強化魔法を掛けつつリーシャが魔法で牽制、その隙をついてケヴィンが強化された渾身の一撃で止めを刺すという戦法らしい。
ちなみに、ケヴィン達の話によるとランドルフは炎刀なんていう二つ名で呼ばれているそうだ。
本人曰く、鍛冶師としてよりも冒険者としての名前の方が上がってしまい、うんざりしているとのこと。その実力から、こういう緊急招集もたまに受けるらしい。
凄腕の剣士として名を馳せていたにも関わらず、突然鍛冶師を目指し始めたので変わり者と言われているが、ランドルフ自身は後悔していないみたいだった。
まぁ、本人が良いならそれが一番いいと思うけどな。
実際に、ランドルフの鍛冶師としての腕は目を見張るものがあるし……。
◆◆◆
途中で休憩を挟みつつ、2時間程歩いたところで、ようやく目的地付近に辿り着いた。
休憩中に振舞った料理をケヴィンが絶賛してくれたのは少し嬉しかったな。
それはさておき、ギルドの情報によると、炎龍は、中腹の山道を塞ぐように居座っているらしい。
先導していたマークが歩くのをやめ、手をこちらに向けて同じく止まるよう指示を出す。
「まず、俺が先に出て様子見をしてくる。お前達は、俺が帰ってくるまでここで待機していてくれ」
そう俺達に指示を出したマークは、山道から逸れて茂みの方へと走っていく。
恐らく、炎龍に気づかれないように迂回したのだろう。
そして、5分程経過してマークが帰ってきた。
「間違いなく炎龍だ。情報通り、300メドル程先の山道に居座ってる」
「ふええ、やっぱり炎龍で間違いないんですねぇ……」
「それじゃあ、お肉のためにレッツゴー、だね!」
「ケヴィン君は呑気すぎますっ!」
そんな二人の漫才(?)に呆れながら、マークが的確に指示を出していく。
パーティの仮代表は俺だが、司令塔はマークが担っているのだ。
「まず、ヨシヒロが【挑発】を発動して攻撃を引き受ける。その隙に俺が【毒の牙】で毒を入れるから、それが成功したら前衛のランドルフとケヴィンも攻撃を開始してくれ」
まず、自分も含めた前衛組へと指示を出していく。
俺はいつも通りタゲ取りと壁役、マークが妨害、ランドルフとケヴィンは物理アタッカー担当だ。
「リーシャは、ランドルフとケヴィンが攻撃に移るタイミングで、攻撃力上昇の強化を二人に掛けてくれ」
そして、リーシアはアタッカー二人の強化と、風の魔法による牽制を担当する。
「……で、私はどうすればいい訳?」
残ったクロエが、少し不機嫌そうにマークにそう尋ねる。
「クロエは、前衛の邪魔にならない、【水弾】と【水連弾】で援護を頼む。炎属性を司る炎龍には、お前の魔法が一番効く。頼りにしてるぞ」
「……ふふっ!言われなくても、あんなトカゲくらい私が仕留めてあげるわ!」
マークの言葉に上手く乗せられたクロエは、少し上機嫌にそう答える。
マークも、なんとなくクロエの扱いが上手くなってる気がするな……。
「じゃあ、俺が先に出て、注意を引き付けるから、あとは頼むよ」
壁役となる俺が先に出発して、その少し後をランドルフとケヴィンが続く。
「うわぁ、デカいな……」
「あれだけデカいと、素材も山盛りだな!」
「お肉もいっぱいだねえ!」
俺が遠くからでも分かる程の炎龍の巨体に驚愕している後ろで、欲望に忠実な二人がそんな声を上げていた。
実力を知っているランドルフはともかく、この食い意地オバケのケヴィンは本当に大丈夫なんだろうか……。
俺を先頭に、前衛組3人は少しずつ前へ足を進めていく。
そして、残り100メドルを切ったところで、炎龍の方もこちらに気づいたようだ。
『ギャオオオオオオオオオオオオオン!!!!』
離れていても鼓膜に響く程のその大声に、俺は思わず顔をしかめる。
だが、ここで立ち止まっている暇はない。
すぐに残りの距離を詰めて、炎龍の注意をこちらに引き付けなければ……!
「ランドルフ、ケヴィン!俺がこのまま突っ込んで注意を引き付けるから、二人は左右に分かれて着いてきてくれ!」
「了解だ、ヨシヒロ!
「わかった~!」
俺の指示を受けたランドルフとケヴィンが、二手に分かれて後ろを着いてくる。
このまま山道を進まないのは、俺以外に炎龍の注意が向くのを避け、二人のアタッカーによる左右からの挟撃を狙うためだ。
「……蛮族よ、我が盾を見よ!」
炎龍に向けて全力で駆けだした俺は詠唱を終え、【挑発】を発動させる。
魔法が発動すると同時に、辺りへ甲高い音が響き渡り、炎龍の視線をこちらへと釘付けにさせた。
『グギャオオオオオオオオオオッッ!』
見事に【挑発】の効果を受けた炎龍が、近づいていく俺に向かって走り出す。
ここまでは作戦通りだ。後は、冷静に相手の攻撃を受けきるだけ。
炎龍との正面衝突に備え、俺は更に魔法の詠唱を開始する。
「……【硬化】ッ!」
魔法の光が意識した場所へ集中していき、衝撃に備えるための脚と実際に受け止める腕の部分だけを硬化させる。
―――ズン。
俺と炎龍の巨体が衝突し、辺りに地響きと砂煙が巻き起こる。
少し押し返されたが、このくらいの突進であれば十分に受け止められそうだ。
俺が炎龍の攻撃を受け止めたと同時に、左右からケヴィンとランドルフが飛び出した。
そして、それとほぼ同時に、リーシャの詠唱が辺りに木霊する。
「……神よ、その力を今、我らに貸し与え給え!」
リーシャの放った魔法の光がアタッカー二人を包み、その攻撃力が強化される。
「おおおおおッ!紅狼流、狼爪ッ!」
「えええええいっ!フルスイング!」
ランドルフの刀とケヴィンの大斧が、炎龍の鱗を左右から引き裂く。
『ギャアアアアアアアオッ!?』
不意打ちを受けた炎龍が叫び声を上げるが、俺達の攻撃はまだ止まらない。
銀色の影が炎龍の後方へ飛び出すと、その尻尾を足場に背中へと駆け上がる。
「いくぞ、クソトカゲ!【毒の牙】ッ!」
マークの全力の振り下ろしが炎龍へと突き刺さり、その体を蝕んでいく。
原種のドラゴンなので一撃では毒の効果を発揮できないだろうが、あと2、3回同じように【毒の牙】を使えば、じきに毒で動きが鈍っていくだろう。
「……最後だ、クロエッ!」
「任せて!【水連弾】!」
攻撃を終えた前衛の俺達が一気に散開し、魔法の通り道を作る。
そして、クロエの詠唱が終わると同時に、魔力で出来た5つの水の弾丸が、炎龍に向けて放たれた。
『グギャアアアアアアアン!?』
息もつかせぬ俺達の連携の後、弱点である水属性の魔法がクロエから放たれる。
そんな連撃の後、炎龍は苦しむように叫びを上げた。
「やったか!?」
「いやあ、そろそろ休みたいなぁ」
ランドルフとケヴィンが、苦しむ炎龍を見ながらそんなことを言った。
この程度で倒せれば楽でいいのだが……。
「いや、まだだ!全員、全力で退避しろ!」
戦場にマークの指示が飛び、俺達はその指示を受けてそれぞれが全力の退避を行う。
『……ギャオオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!!!』
マークの指示を受けて全員が距離を取った瞬間、炎龍がこれまでの比にならない程の大きさで、天に向けて雄叫びを放った。
「……なんだ?」
今までとは異なるその様子に、俺は思わずそう呟く。
その雄叫びと同時に、炎龍の全身を激しい炎が包み込んでいき、そして、爆ぜた。
炎龍の放った爆炎は野山を焼き尽くし、辺りを焦土へと変える。
あと一瞬でも退避が遅れていれば、いくら俺が【硬化】したところで、かなりのダメージを受けていただろう。
それに、俺以外のメンバーであれば、死は免れない程の火力だった。
「……あれが、炎龍の【超爆炎】だ」
マークが冷静に、しかし少し焦ったような表情でそう告げる。
「あ、あんなのどうやって倒すんですかぁ!?」
「流石に、あれに当たったら熱いじゃ済まないよねぇ……」
「鍛冶師の俺でも、あれはキツイぜ……」
炎龍の【超爆炎】を目の当たりにした面々が、青い顔でそんな感想を発する。
確かに、あの技を正面から受けるなんて、俺でも不可能だ。
もし接近している際に【超爆炎】を受ければ、このパーティは壊滅するだろう。
「……私に良い考えがあるわ」
これまで、唯一沈黙を保っていたクロエが、そんな言葉を俺達に投げかける。
「……ほう、聞かせてくれ」
これまで司令塔の役割を果たしていたマークも、あれに対応する策が思いつかないのか、素直にクロエの話を促す。
そして、そんなマークの返事を聞いたクロエは、更に話を続けた。
「それは―――」




