第53話 緊急招集
書き立てほやほやです。
クロエがパーティに加入してから三日が経過した。
俺達3人は、ギルドからの招集を受けて支部長室へと向かっている。
「いよいよ、獄王の刃の拠点が見つかったのかな?」
「十中八九そうだと思うが、どうだろうな……」
「……やっとこの時が来たのね。あいつらに目に物を見せてやるわ」
支部長室へ続く廊下を進みながら、俺達は三者三様にそんなことを呟く。
「それでは、お入りください」
案内役のギルド職員が両開きの扉を開け、俺達を招き入れる。
いつものようにボールズだけが待っているのかと思ったら、今日はどうやら違うようだ。
部屋の中には、ボールズ以外に冒険者と思わしき人達が3人もいる。
一人は戦士風の男、一人は魔法使い風の女性、そして最後の一人は……。
「ランドルフ!?」
俺は驚きのあまり大きく声を上げる。
なにせ、普通であれば自分の店にいる筈のランドルフがそこにいたのだから。
「よっ、お前ら。久しぶりだな」
俺達の驚きをよそに、ランドルフは気楽にそうこちらに手を振った。
俺達以外にもこれだけ冒険者がいるのならば、極秘案件である獄王の刃に関連した呼び出しではないのだろう。
「なんだ、お前ら知り合いか?」
俺達のそんな様子を見ていたボールズが、そんな言葉をかけてくる。
「そうですね、俺とランドルフは専属契約をしてます」
「おうとも!最早、俺とヨシヒロは心の友と言ってもいい仲だぜ!」
「あー、うん。そうだね……」
相変わらず暑苦しいランドルフを適当に流しながら、ボールズの問いにそう答える。
「それなら話が早い……と言いたいところだが、他のメンツはお互いのことを知らないだろう?とりあえず、軽く自己紹介をしてくれ」
確かにその通りだ。
俺とマークはランドルフやクロエのことをお互いに知っているが、残りの二人のことは全く知らない。ギルドで何度か見かけたことはある気がするが……。
「じゃあ、俺からいくぜ!俺は鍛冶師のランドルフだ!」
先陣を切ったランドルフが、手を上げながら大きな声でそう話し始める。
それをきっかけに、他の面々も順に自己紹介をしていった。
「じゃあ、次は俺かな。ヨシヒロ・サトウです。職業は冒険者、主に前衛での壁役をやってます」
「へぇ、冒険者なのに壁役なの~?」
俺の言葉に、戦士風の男が不思議そうに尋ねてくる。
「まぁ、詳しくは実戦で見てもらった方が早いかと……」
マークに初めて会った時も驚かれたことがあったが、こればかりは【硬化】のことや、ステータスの耐久値のことを教えないと理解できないだろう。
「そうかい、楽しみにしてるよ。んじゃあ、次は僕かな?戦士のケヴィンです。よろしく~!」
大柄ながらも呑気そうな彼は、間延びした声でそう言った。
そして、それに続くように魔法使い風の女性が自己紹介を始める。
「え、えっと!私はリーシャでしゅっ!……です!あとは……魔導士をやってて、風魔法が得意ですっ!」
魔女っぽい帽子とローブが似合う、おっとりした彼女はかなり緊張した様子でそう言った。
ランドルフが炎属性、クロエが水属性、リーシャが風属性が得意となれば、役割が被らなくてちょうどいいな。
「ケヴィンとリーシャだな、よろしく頼む。そんじゃ、次は俺がいこうか。盗賊のマークだ。得意なのは毒や拘束なんかを使った妨害と奇襲だな」
自己紹介を終えたマークが、最後に控えたクロエの方を見る。
そして、それを察したクロエも続いて自己紹介を始めた。
「……クロエ・ベルヴィルよ。水魔法が得意。話せるのはそれだけ」
ややつっけんどんな態度で、クロエは自己紹介を終えた。
まぁ、そういう性格だから仕方ないよな……。悪気はないだろうし。
こうして、集まった6人の冒険者が、それぞれ軽く自己紹介を終えた。
それを確認したボールズが、話を開始する。
「うむ、自己紹介は終わったようだな。とりあえず茶を入れるから、座ってくつろいでくれ」
そう言って、ボールズはいつものように紅茶を準備し始める。
「え~、お茶が出るんだねぇ。お菓子もあるかなぁ?」
ケヴィンがマイペースにそんなことを呟く。見た目通りのキャラだな……。
そして、手際よくお茶の準備を進めたボールズは、すぐにテーブルまで戻ってきた。
「すまんが、菓子の類は用意してないんだ。俺が気に入ってる紅茶だが、良ければ飲んでくれ」
そう言って、ボールズは俺達の前にあるティーカップに、鮮やかな赤色のお茶を注いでいく。
花の良い香りがする。ローズヒップ的な感じかな。
「わわっ!美味しいですー!」
「……ふん、悪くない味ね」
素直なリーシャはともかく、辛口のクロエも満足する味らしい。
俺の隣では、相変わらず優雅にマークがお茶を嗜んでいる。
ランドルフは軽く匂いを嗅いだ後、まだ熱いお茶を一気に呷った。犬みたいだな……。
「あっ、そうだぁ!なんで僕たちはここに呼ばれたんですかぁ?」
美味しそうにお茶を飲んでいたケヴィンが、思い出したようにそう尋ねる。
確かに、まだ自己紹介をしただけで、話の本題を聞いていなかった。
「そうだな、では本題といこう。まずは、カストゥール山脈からダルク地方へと続く山道に、ドラゴンが現れたことを伝えておこうか」
ボールズのそんな言葉に、冒険者達がざわめき始める。
「ドラゴンって、まさか、亜種じゃなくて原種の方だったり……?」
恐る恐るといった様子で、ケヴィンがそう尋ねる。
「ああ、勿論原種だ。ギルドの調査と目撃情報から推測するに、どうやら炎龍らしい」
「えええっ!?もしかして、その炎龍を、私たちが倒すんですか……?」
リーシャが青い顔でそう尋ねる。
みんなの反応からして、原種のドラゴンっていうのはかなり強いのだろうか。
「……そうなるな。ギルド専属の冒険者達が、別件で遠征に出ている以上、君達しか頼れる冒険者がいないんだ」
「倒すのは良いとして、なんで俺達6人なんです?」
「ええっ!?そこはいいんですか!?」
マークの言葉に、リーシャが驚いたように反応するが、ボールズはそれをスルーしてその問い掛けに応えた。
「君達6人は、俺自らが見込んだ新進気鋭の冒険者だ。人海戦術で押してもいいのだが、その場合は被害が計り知れない。だからこそ、少数精鋭の君達で被害も最小限に抑えたいのだ。もちろん、君達なら誰一人欠けずに討伐を果たせると信じている」
ボールズは、俺達を真剣な眼差しで見つめながらそう告げた。
ケヴィンとリーシャのことを詳しく知らないので多少の不安は残るが、仮にもグスタの街のギルド支部長が認める程の実力なのだから、二人ともかなりの冒険者なのだろう。
それに、ここまでボールズが言ってくれるのであれば、その期待に応えなければいけない。
「俺とマーク、それからクロエは、この依頼を受けようと思います」
パーティの代表として、俺はそう答える。
どうせマークに聞いても俺に任せるって言うだろうしな……。
問題はクロエの方だが……。
「……ま、でっかいトカゲくらい大したことないわね」
当の本人は、余裕綽々と言った様子でそう答えた。
勝手に決めちゃったけど、俺達三人は全員の参加が決定した。
「待て待てい!俺も参加するぜ!原種のドラゴンなんて、素材の宝庫だからな!」
俺たちの会話に割り込むように、ランドルフが大きな声を上げて参加を表明した。
「まぁ、ランドルフならそう言うと思ったよ」
「そうだな。この鍛冶馬鹿がドラゴンの素材を手に入れる機会を逃すはずが無い」
確か、原種のドラゴンは、普通の魔物なんかと違って、倒しても光になって消えないという話を資料で読んだことがある。
その危険度から、ドラゴンは災厄の象徴とも、素材の宝庫という面で富の象徴とも呼ばれる。
それを知っているからこそ、ランドルフも参加に乗り気なのだろう。
「これで4人か。ケヴィンとリーシャの二人はどうする?」
ボールズは、まだ答えを出していない二人を値踏みする様にそう尋ねた。
「僕は行くよぉ。ドラゴンって、お肉も美味しいらしいからさぁ」
なんとも食い意地の張った理由だが、ケヴィンも討伐に参加するらしい。
最後の一人となったリーシャだが、目を白黒させて慌てている。
「えええっ!?ケヴィン君が行くなら、同じパーティの私も行かなきゃいけないじゃないですかぁ!」
「いいんじゃない~?きっと、何とかなるよ~」
「ふええっ、ケヴィン君は呑気すぎます……」
マイペースなケヴィンの発言により、半ば強制的にリーシャも参加することになった。
それにしても、この二人は同じパーティメンバーだったのか。
「よし、これで全員参加だな!ギルドを代表して、本当に感謝する!出発は、こちらの支援物資の準備や君達自身の準備の時間を鑑みて、明日の正午とする!それでは、解散!」
こうして、俺達六人は炎龍の討伐ミッションへ参加することとなった。
ボールズの解散指令を受け、俺達はそれぞれ準備のために出かけていく。
それにしても、この世界に来て初めての本当のドラゴンとの闘いか……。
一応、亜種のドラゴンである大毒蜥蜴とは戦ったことがあるが、原種ともなればその戦闘力は計り知れないものがある。
とにかく、準備だけはしっかりしておかないとな。
期待と不安の入り混じる中、俺はマークやクロエと共に大通りへと向かっていくのだった……。
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