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社畜・イン・ファンタジー ~異世界ブラック冒険譚~  作者: 揚げたてアジフライ
第三章 新たなる出会い
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第50話 出会い

記念すべき?50話ですね。

 異常な能力を持つゴブリンと出会いギルドへ報告した翌日、俺達はギルドの支部長室へと呼び出されていた。


 俺達が席に着くと、いつになく焦った様子のボールズは、いつものようにお茶を出すこともなく、本題を切り出した。


「……端的に言うと、今回の一件には、獄王の刃の干渉があるようだ」


「それは本当ですか!?」


「やはり、獄王の刃が関わっていたか……」


 ボールズの言葉を受け、俺とマークはそれぞれ反応をする。

 俺達の動揺を確認しながらも、ボールズは更に言葉をつづけた。


「ギルド本部の調査によると、お前達の集めた証拠品の中に、あの結晶体と思わしきものの記述があった」


 どうやら、禁忌の森の拠点で回収した資料の中に、あの漆黒の結晶に関する資料があったようだ。

 恐らく、マークが最後に見つけた、魔物の改造と使役に関する資料のことだろう。


「……そこには、何と記述があったんですか?」


 俺と同じようにそのことを察したのか、マークはボールズへそう尋ねる。


「邪結晶と呼ばれるあの結晶体には、埋め込まれた魔物を異常なまでに強化する効果がある。もちろん、その超強化と引き換えに、寿命を奪われるようだが……」


「確かに、あのゴブリンの能力は異常でした。たかが数匹であっても、俺達が苦戦する程に」


「そうか、やはりそこまで研究が進んでいたか……」


 マークの話を聞いたボールズは、困惑したように頭を抱えながらそう呟く。

 そして溜息をつくと、更に話を続けていった。


「奴らの研究結果にデメリットがあったとしても、我々の脅威になる事には変わりない。だからこそ、ギルド本部は再び、お前達に極秘指令を出した……」


「それで、その極秘指令というのは……?」


 俺の問い掛けを聞いたボールズは、それに答えるように返答する。


「本部の対策協議会曰く、このゴブリンに出会った地域をくまなく探索し、新たな証拠を見つけろ、とのことだ……」


「ゴブリンに出会った地域って……アブダイルの森が、どんだけ広いと思ってるんだ?」


「相変わらず無茶苦茶ですね……」


 ボールズにより告げられた、ギルド本部からの滅茶苦茶とも言える指令に、俺達は静かな怒りを見せる。


あのゴブリンに出会ったのは、アブダイル山脈の麓にある森林地帯だ。

その一帯だけでも数キロに渡る広大な森林であり、今回ばかりは人海戦術で挑むべきだろう。


「すまない。今回も、本部は人員不足の一点張りでな……」


 ボールズは不甲斐無いとばかりに項垂れると、そう答える。

 恐らく、今回も本部と交渉はしてくれたのだろう。

 だが、融通の利かない上層部は、俺達への援助をすることは無かったのだ。


「分かりましたよ。ただ、無茶な分、報酬だけは頼みますよ」


「そうだね。そのくらいないと、割に合わない」


 俺達は、半ば諦めたようにそう返答する。

 前回もそうだったが、最低でも報酬金くらいは受け取れるだろう。


 まぁ、人数が少ない分は気合と根性でカバーするしかない。

 社畜時代の経験から、そう言うのは得意だ。

 考察なんかの細々した調査はマークに任せて、俺は地道に足を使う捜査を担当しよう。


 こうして、俺達は途方もない極秘指令を受け、アブダイルの森へと向かうことになるのであった。



              ◆◆◆



 アブダイルの森を捜索し始めて、三日が経過していた。


「んー……何もないなぁ……」


 朝一で捜索を開始し、昼に一度休憩と報告を兼ねて集合、情報共有をしたらまた日が暮れるまで捜索。

 この三日間はずっとその繰り返しだ。


 通常の魔物や素材なんかは見つかるが、あのゴブリンのように改造された魔物や、怪しい施設の痕跡は一切見つからない。

 マークもそれは同じみたいで、昼食と夕食の際は愚痴を言うだけの時間になっている。


 生い茂る木々の隙間から空を覗くと、太陽がちょうど真上にあった。


「大体12時ってところか。そろそろ、報告も兼ねて一度拠点まで帰ろうかな……」


 恐らく、マークもそろそろ戻ってくる頃だろう。

 俺は、一応辺りを見渡しながら、拠点に向けて帰っていく。


 ―――ガサガサッ!


 そんな音を立てながら、前方、少し奥の方にある茂みが大きく揺れる。

 大方、俺の気配に気づいた魔物だろう。

 なにせアブダイルの森は、魔物の生息数だけは多いのだ。


 俺は、魔物の襲撃に備えて武器を構える。

 だが、茂みから飛び出してきたのは、予想外のものだった。


「……ちっ、冒険者か。消えろ!」


 黒いローブを纏った男が、俺を見るなり、シミターのような曲剣を構えて斬りかかってきた。

 この黒いローブに刻まれた特徴的なシンボルは……!


「極王の刃……ッ!」


 炎の中で交差する刃物のマーク。

 そう、極王の刃のシンボルだ。


 俺は、襲撃を仕掛けてきた男に向けてそう叫ぶ。


「ほう、我らを知っているか。ならば、ここで消えてもらう!」


 俺がその名前を出した途端、男はこれまでよりも苛烈な攻撃を俺に振るう。

 だが、この程度なら受けきれる……!


 俺は硬化した腕を盾のように使いながら、敵の攻撃をいなしていく。


 タイミングよく敵の刃を弾き飛ばすと、男はその衝撃で大きく仰け反った。

 俺は、その瞬間を逃さず、相手に反撃カウンターを仕掛ける。


「……【鉄拳】ッ!!」


「うぐぅ……ッ!?」


 俺の繰り出した全力の右ストレートが敵の鳩尾を打ち抜き、数メドル吹き飛ばす。

 吹き飛んだ男はそのまま木の幹にぶつかると、意識を失ったようだ。


「やっぱり、極王の刃が……」


 俺やマークであれば楽に対処出来る相手ではあるが、問答無用で襲ってくる極王の刃の危険性を考えると放っては置けない。

 とりあえず、拠点に戻ってマークに報告しなければ……。


 俺は少し先にある拠点に向けて、全力で駆け出した。


「ヨシヒロ!無事だったか!」


「ってことは、もしかしてマークも?」


「ああ、極王の刃に襲われた。すぐにでも帰って報告するべきかもな……」


 やはりと言うべきか、マークも極王の刃と遭遇し、襲撃を受けたらしい。

 この広い森で真逆の方向を探索していた俺達が二人とも遭遇したのであれば、何が目的かは分からないが、極王の刃はかなり人員を割いていると思った方がいいだろう。


 ―――ガササッ、ガサッ!


 俺達がどうすべきか考えていたのも束の間、近くにあった茂みが大きく揺れる。


「……チッ、極王の刃か!?」


 いち早くその茂みに気づいたマークが、ナイフを構えながらそう声を上げる。

 そして、俺もそれに倣うように武器を構えた。


「マーク!俺が前に出るから、隙を見て攻撃を頼む!」


 俺がマークを庇う形で前へと出る。


 だが、迫り来る極王の刃に備えた俺達の前に現れたのは、想定外の人物だった。


「……チッ!極王の刃か、しつこいわね……!」


 茂みから現れた、薄い紫色の長い髪をツインテールのように束ねた少女が、俺たちを目にするなりそう叫ぶ。


「待って、俺達は極王の刃じゃ……ッ!?


 俺のそんな言葉が耳に届いていないのか、少女は素早く詠唱を開始し、魔法を織り上げていく。

 そして、十秒も経過しないうちに完成した魔法が少女から放たれ、俺に襲いかかってきた。


「……【硬化】ッ!」


 敵意を察知してすぐに詠唱を開始していた俺は、魔法の直撃する間一髪のところで【硬化】を発動させ、その魔法を無効化させる。


「くっ……めんどくさい!!」


 魔法を弾かれた少女は、気の強そうな目を更に吊り上げると、再び魔法の詠唱を開始した。


「打ち砕くは悪。我が魔力を喰らいて、今その敵を……」


 少女の詠唱と同時にその膨大な魔力が集約されていき、魔法を形作り始める。


「……させるかッ!」


 少女の詠唱を感知したマークが、素早く飛び出すと、あっと言う間にその少女の自由を奪った。


「くそっ、離せッ!!」


 拘束するマークは、少女の首元のナイフを当てているのだが、それすら気にしないというのか、少女はもがき続ける。

 だが、ステータスの筋力値が圧倒的に足りていないようで、少女の抵抗は意味を成していない。


「落ち着け!俺達はただの冒険者だ!」


「ふざけんな!騙されるわけないでしょ!」


 マークが少女を説得しようとしているが、聞く耳を持たない。

 少女は必死で拘束から抜け出そうとしているのだが、関節を決められているのかマークの拘束からは逃れられそうにない。


「とりあえず、落ち着いて!あいつらとは格好が違うでしょ!」


 なおも暴れようとする少女へ、俺もそう声をかける。


 この後そんな応酬が続き、ようやく少女が落ち着いた頃には、既に日が傾きかけていた。



                       ◆◆◆



 必死の説得により、俺達が極王の刃でないことを信じた少女は、ようやくマークの拘束から解放された。


「……で、お前の名前は?」


 拘束で疲れ切ったようなマークが、少女にそう尋ねる。


「……クロエ・ベルヴィルよ」


 ようやく落ち着いた少女は、椅子代わりに切り株に腰掛けるとそう名乗った。


「……あ、美味しい」


 俺の手渡した野草茶を一口飲んで、少女はそう呟く。


「それは何よりだよ」


 やっと年相応の態度を見せた少女に、俺も安心したようにそう答えた。


「……で、なんで極王の刃に追われてた?」


「そうだね、それは俺も気になるよ」


 マークの言葉が少女に向けられ、話の核心を付く。

 少女は、しばらく考え込むような素振りを見せたあと、ゆっくりと話し出した。


「……私、魔術の名門の生まれなの」


「はぁ?なんだ、自慢か?」


「違うわよ!名門だから、私達の一族しか使えない特別な魔法が使えるの!だから捕まったの!」


 マークの言葉に憤慨したように少女が声を上げる。

 なるほど、珍しい魔術が使えるのか。

 ならば、極王の刃は、少女を研究のための資料にしようとしていた可能性が高いな……。


「俺達は、極王の刃に対抗するための特殊部隊として任命されてるんだ」


「ああ、だからこそ、アンタを保護しなきゃいけない」


 俺達のそんな言葉に、少女は少し悩んでポツポツと話し出した。


「それが最善か……。でも、私は守られるだけの籠の中の鳥でいるつもりはないわ!絶対に、極王の刃を酷い目に合わせてやるんだから!」


 自分は保護されるだけじゃないとでも言うように、少女はそんな宣言をする。

 そして、更に言葉を続けた。


「だから、アンタ達のパーティに入れて」


「はぁ!?どうしてそうなるんだよ!?」


 そんな少女の言葉に、マークが目を丸くする。


「俺は別にいいけどね」


 マークとは逆に、俺はそう答える。

 俺としては、仲間が増えるのは大歓迎だ。

 なんて言っても、遠距離攻撃のできる魔法使いの味方なんだから。


「……仕方ない、その辺の判断はヨシヒロに任せる。ただし、ギルド本部に報告して、その決定次第では、そっちに従うことになるからな」


 俺の意思を悟ったのか、マークは諦めたようにそう反応した。


「それでいいよ。クロエ……さんも、それでもいいかな?」


「クロエでいいわ。問題ない、これからよろしく頼むわね」


 俺の問いかけに、クロエはそう答える。

 こうして俺とマークのパーティに、仮とはいえ、魔法使いの少女であるクロエが加入したのであった……。


ようやく男2人のむさ苦しいパーティから脱出です。


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