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社畜・イン・ファンタジー ~異世界ブラック冒険譚~  作者: 揚げたてアジフライ
第三章 新たなる出会い
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第49話 蠢く


 ヒヨリが生まれてからというもの、俺達2人と1匹は一緒にクエストを攻略している。

 まだ生まれたばかりだからなのか、その加護や魔法を実感したことはまだ無い。


 基本的には、ポーチの中や頭の上でピヨピヨ言ってるのがヒヨリの役割だ。


 そんな俺達2人と一匹は、今日もクエストに出ている。

 現在は、2つの依頼を完了させ、休憩のために準備をしているところだ。


「ヒヨリ、この薪に向かって火を吹いてくれ」


『ピヨッ!』


 俺の指示に従って、ヒヨリが小さく火を吹いた。

 焚き木に火が燃え移り、次第に広がっていく。


「便利なもんだなぁ。ランドルフが泣いてるぜ?」


 確かに、同じく炎属性が得意なランドルフとは役割が被っているかもしれない。

 まぁ、ランドルフの骨頂は、炎属性の魔法による的確なサポートと、流派の免許皆伝というその剣技にあるんだけどな。


「こいつも大きくなったら戦ってくれるのかなぁ……」


 俺は、隣でピヨピヨと鳴いているヒヨリを眺めながら、ふとそんなことを呟く。

 

「……親と同じくらいデカくなるとしたらヤバくないか?」


「待って!処分しないで!?」


 マークのそんな一言に、俺は思わず庇うようにヒヨリを抱きしめる。


「いや、流石にあの怪鳥の異常なデカさは改造された結果だろうし、大丈夫だと思うけどよ……」


 そんなマークの言葉に、俺は思わずホッと胸を撫で下ろした。

 だが、それに続けるようにマークは話し出す。


「……ただし、ヒヨリだって魔物だ。もしそうなった場合のことは、考えておけよ」


「……そうだね、俺も覚悟はしておくよ」


 確かに、使い魔登録をしているとはいえ、ヒヨリも立派な魔物に分類される。

 更には、マークやギルドでも判別ができないという未知の魔物だ。

 もしもの事があれば、親である俺が覚悟を決めないといきないだろう。


 しんみりとした空気になってしまったが、まだクエストの途中だ。

 この先もやる気を出していこう。


「そろそろ行くか」


「そうだね!」


 俺とマークは休憩を終え、立ち上がる。

 ちなみに、ヒヨリは俺の肩の上だ。最近はここがお気に入りらしい。


『『『ギイ!ギィィイイッ!』』』


 再びクエストに出かけようとした俺たちの前に、茂みから飛び出したゴブリンの群れが襲いかかってくる。


「なんだ、ゴブリンか。ヨシヒロ、任せていいか?」


「ああ、問題ないよ」


 そう言って俺は、【挑発タウント】を発動する。

 今更、多少ゴブリンが群れたところで俺達の敵ではない。


『ギイイイイイッ!』


 魔法の効果を受けたゴブリン達が、剣や斧(・・・)を振りかぶりながら俺に襲いかかってくる。


「なんだ!?」


 予想外のその武器に驚いた俺は、急いで【硬化】を発動して受け止める。

 普通のゴブリンが使う木の棍棒程度であれば、素の状態で受け止められたのだが、人の武器を使うとなるとそうはいかない。


「ぐっ、重い……ッ!?」


 予想を遥かに超える攻撃の勢いと重さに、俺は思わず驚きの声を上げる。

 そして、そんな俺の様子を見たマークが不思議そうに俺に問いかけた。


「どうした、ヨシヒロ!?」

「分からない!でも、このゴブリン達、異様に攻撃力が高い!」


 俺は、ゴブリンに起こった異常をマークに伝える。


「おかしいな……仮にゴブリンシャーマンなんかに強化魔法を掛けられていたとしても、ヨシヒロが受けきれない程じゃない筈だぞ……?」


「じゃあ、なんで!?」


「分からない!だが、油断だけはするな!」


 ヒヨリを庇うようにしながら、俺はゴブリン達の攻撃を必死で受け流す。

 その連携は、少しでも気を抜けばダメージを受けることになるほど洗練されている


「マーク!こいつら、知能まで上がってる!」


「そのようだな!俺もフォローする!」


 もしホブゴブリンやゴブリンキングなんかの統率する個体が裏に控えているのであれば、ある程度はその指示で動くことはできる。

 だが、仮にそうであったとしても、これ程洗練された連携は無理だ


 何か、俺達の計り知れない裏があるのだろうか。


「……シッ!」


 苦戦する俺をフォローするために飛び出したマークの刃が、ゴブリンの体を狙う。


 だが、通常であればゴブリンの緑色の体を大きく切り裂く筈だったナイフは、僅かに切り傷を残す程度に留まった。


「なんだ、硬い……!?」


 ただのゴブリンである筈のその魔物の見せた予想外の耐久力に、普段は冷静なマークですらも驚きを隠せないようだ。


「手加減してる場合じゃないぞ!全力だ、ヨシヒロ!」


「ああ、分かった!」


 攻撃力、耐久力、そして知能にまで渡る、恐らく全てのステータスが強化されているゴブリンの群れは、油断をしていれば確実に俺達の脅威になる。

 本気で戦うことを決意した俺達は、武器を構えて臨戦態勢を取った。


「蛮族よ、我が盾を見よ!」


 俺が素早く詠唱を完了させ、【挑発】を発動させる。

 そして、攻撃を受ける部分だけを硬化させながら、攻撃を受け止めていく。


「【毒の牙(ポイズンファング)】ッ!!!】


 俺が囮になっている隙に詠唱を終えたマークが、猛毒の刃をもってゴブリンの群れを切り裂いていく。


『ギギギギギィ!!!』


『ギイッ!ギギギッ!』


 だが、普段であれば時間経過と共に敵を弱体化させていく筈の毒を受けてなお、ゴブリン達の動きが衰えていく様子はない。


「まさか、毒耐性まであるのか!?」


「仕方ない、俺も攻撃メインで動くよ!」


 今は少しでも相手にダメージを与えるのが先決だ。

 俺は、【挑発】をキープしつつも、硬化した右腕による【鉄拳】を放つ。


『ギイイイイッ!』


 だが、俺が全力で放った【鉄拳】を受けたゴブリンは、少し弾き飛ばされた程度で、殆どダメージを受けていないのが見て取れる。


 どうやら、この謎のゴブリン達との闘いは、長丁場になりそうだ……。



  ◆◆◆



『ギ、ギイイイッ……!』


 俺達の全力の攻撃を受け続けたゴブリンの最後の一体が、黒い光(・・・)となって消えていく。


「なんだ?やっぱり普通の魔物とは違う……?」


 普通の魔物であれば、その種類や姿形を問わず、消滅する際に放つのは淡く青い光だ。

 だが、今倒したゴブリン達は、全て黒い光になって消えていった。


「それにしても、なんだったんだろうね……」


「そうだな、突然変異種か、新種の魔物か……」


 通常のゴブリンであれば、俺が魔棍ハティで薙ぎ払うだけで討伐できる。

 だが、今回の奇妙なゴブリンの群れは、群れの一個体に集中して俺達が全力の攻撃を放ち続けてなお、苦戦する程の強さだったのだ。


「……何にしろ、ギルドに報告だな。この、怪しいドロップアイテムも含めて」


 そう言ったマークは、ゴブリンが落としたであろう何かをこちらに投げ渡す。


「これは……」


 これまでに見たことも無いドロップアイテムだ。

 宵闇よりも深い漆黒を湛える謎の結晶体は、邪狼ダークウルフの落とした【邪狼の胸結晶】など比較にならない程の邪悪を秘めているような気がした。


「……嫌な予感がする。早く帰るぞ」


「そうだね、急ごう……!」


 ランクCに上がった俺達が全力で対処しなければならない程に強化されたゴブリン。

 すぐに対処と周知を行わなければ、事故が起きるかもしれない。


 もしかすると、俺達の知らないところで、とんでもない何かが起こっているのではないだろうか。


 謎の結晶体の秘める深い闇に一抹の不安を抱えながらも、俺達はグスタの街へと向かっていくのだった。


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次回は明日のお昼12時頃投稿予定です。

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