第4話 そして転職へ……
今回も説明回です。
「こちらが、サトウ様のステータスです」
そう言って受付嬢が手渡してきたのは、何やら数字の並ぶ紙きれだった。
この数字が指し示すのが、現在の俺のステータスという訳らしい。
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<<< ヨシヒロ・サトウ >>>
冒険者ランク:F レベル:1
職業:――
筋力:F 20
耐久:D 124
敏捷:F 32
知力:E 55
器用:E 77
運 :F 0
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「ええと、このステータスはどうなんでしょうか……?」
「耐久が平均より少し高いですが……。それ以外は平均のEランクか、それ以下のFランクですね……。残念ながら、このステータスですと、適正は最初級職の【冒険者】のみとなります」
FやらEやらが並んでいた時点でなんとなく察してはいたが、なるほど、平均以下か……。
耐久の値が高いのは社畜生活の賜物かもしれないが…。
ステータスの各項目については、職員の話によると―――
『筋力』:単純に攻撃力を指し、この値によって装備できるものも異なってくる。
『耐久』:攻撃に対する抵抗力や防御力、体力を示す。また、運の値と合わせて状態異常への抵抗確率が上昇する。
『敏捷』:文字通り素早さのことであり、回避率や攻撃、移動速度の速さに繋がる。
『知力』:魔法を使用する際の威力や、効果の上昇に作用する。
『器用』:その名の通り手先の器用さを示し、この値が高いと会心率が上昇する。更に、この値が高い程、武器や道具の扱いが上達する。
『運』:この値が高いほど、状態異常への抵抗やスキルの付加効果が成功しやすい。また、魔物から希少な素材がドロップする確率が上昇する。
―――とのことであった。
ちなみに、ステータス欄に記述されている『冒険者ランク』とは、クエストのクリアや魔物の討伐などを行うことにより、その者の功績や能力に応じてランクアップが行われる、冒険者としての評価基準であるとのことだ。
このランクが高い程、実績も戦闘能力も高いと言う証明であり、冒険者としての信用度に直接的に影響する。
俺のランクであるFは、登録したばかりの駆け出し認定である。
次に、『レベル』とは、冒険者として登録を行い、神からの加護を得ることでその概念が付与される、戦闘力や能力の具体的な指標である。
一定以上の経験値が蓄積するとレベルが上がり、それと同時にステータスが通常よりも大きく上昇するという話であった。
基本的に、よくあるRPGと似たようなシステムと考えて間違いはないだろう。
「サトウ様は、ギルドへ冒険者登録をしに来られたのでしたね。適性が複数ある場合は職業を選択していただくのですが、適性の関係で、【冒険者】として当ギルドへ登録させていただきます」
どうやら、もう冒険者としての登録が完了したようだ。
これで、当初の目的は果たせたことになる。
「それでは、こちらの冒険者カードと、装備一式をお渡ししておきます。冒険者カードは、クエストの受注などの冒険者としての活動に必要な他、この街での身分証明書になります。再発行には1万エルの手数料がかかりますので、くれぐれも無くさないようお願いします」
なるほど、このカードがあれば身分が保証されるらしい。
これがあるだけでも、随分生活が楽になりそうだ。
それにしても、再発行に手数料が必要とは、随分現実的だな……。
「こちらの判断で、初心者の方でも使いやすい片手剣を支給させていただきました。それから、その服では動きにくいでしょうから、こちらで服もお渡ししておきます」
目の前に、片手剣と革製のサポーター、革製のウェストポーチが並べられる。
登録だけでこれだけ支給があるとは、なんとも至れり尽くせりである。
「サトウ様は、今は【冒険者】の適正のみですが、戦闘を重ね、様々な経験やレベルアップをしていくうちに、他の職業へ転職できることもあります。これから精一杯サポートしますので、一緒に頑張って行きましょう!」
「は、はい。頑張ります……」
「それに、第一線で活躍する人たちの中にも、【冒険者】からスタートして上り詰めていった人は少なからずいます。最初級職だけあって、伸び代も可能性も未知数ですからね!」
なるほど、地道に努力していけば、いつかは俺も第一線で戦うことができるかもしれない。
いずれは勇者か大英雄か。そう考えると、夢は膨らむばかりだ。
そんなこんなで、俺はこの世界において、冒険者としての第一歩を踏み出したのであった。