第45話 鍛冶師のお手伝い
大毒蜥蜴との戦闘にて【毒無効】のスキルを獲得した翌日、俺達はランドルフに呼び出されていた。
なんでも、どうしても頼みたいことがあるらしい。
そんな訳で、俺達はランドルフの店であるロペス武具店を訪れる。
「ヨシヒロ、マーク!待ってたぜ!」
入店した俺達を見るなり、ランドルフが相変わらず元気そうに声を上げる。
今日は珍しく、販売スペースの整理や陳列なんかをしていたようだ。
「それで、頼みってなんだ?」
マークは単刀直入にそう問いかける。
「ああ、俺と一緒にクエストに行ってほしいんだ」
あまりにも意外なその答えに、俺は思わず問い返す。
「ランドルフと一緒にって……戦えたのか!?」
いくら加護があるとはいえ、戦闘ができる程ではないと思っていたが……。
「ああ、勿論だ。自分で素材を取りに行くこともよくあるからな!」
「そうなのか。でも、今回は何で俺達と一緒に?」
自分で戦えるのであれば、普通にクエストをする分には問題ない筈だ。
となると、答えは一つ。ソロでは難しい依頼を受けるつもりなのだろう。
「なるほどな。お前、ランクアップを狙ってるってとこか」
どうして難易度の高いクエストを受けるのかと思ったら、そういう理由か。
確かに、それなら納得がいく。
ランクアップのためには、ある程度の功績をギルドに提出しないといけないからな。
「ああ、その通りだ。どうしても手に入れたい素材があるんだが、その素材の採集地に行くためには、ランクがD以上無いといけないみたいでな……」
実力に見合うと思ったクエストしか受けてこなかったから、そんな場所があるなんて知らなかった。
それとも、単純に希少性が高い素材だから、冒険者の立ち入りを一定で制限しているのだろうか。
「そういうことか……。行きたいクエストはもう決まってるの?」
俺はランドルフにそう尋ねる。
俺達のうちどちらかでなく、2人を呼んだとなれば、相当難易度の高いクエストなのだろう。
「ああ、『水晶亀』の討伐依頼だ。その鉄壁の防御から中級でも上位のクエストに分類されてるが、お前ら二人の力を借りれば攻略可能だと思ってる」
水晶亀。確か、洞窟の奥深くに生息する大型の亀の魔物だ。
あまり覚えていないが、特殊な功績で出来た甲羅を纏いかなりの防御力を誇る、という説明をギルドの書庫で見たような覚えがある。
「水晶亀か……。俺らは大丈夫だろうが、ランドルフは戦力的にどうなんだ……?」
確かに、それは純粋に疑問だ。
いくら普段からクエストに行くとはいえ、中級でも上位に分類されるような魔物との戦闘に、果たしてランドルフは着いてこれるのだろうか……。
「そこは無理を承知だ。だが俺は、どうしても早く功績を上げないといけない……。頼む、この通りだ!」
そう言って、ランドルフは深々と頭を下げて頼みこんでくる。
鍛冶を行う時と同じような真剣な表情に、その覚悟は見て取れた。
「……はぁ、仕方ねえ。俺は手伝ってもいいと思うが、ヨシヒロはどうだ?」
「俺もいいと思うよ。ランドルフにはお世話になってるしね!」
「二人とも、すまない!恩に着る!」
こうして、俺達の意見は合致し、ランドルフのランクアップのための手伝いをすることが決定した。
クエストの目的地はアブダイル山脈の中腹にあるという、水晶洞窟だ。
出発は、準備が出来次第すぐとなる。
準備のために一度解散してから1時間後、街の門にて集合した俺達3人は、目的地に向けて出発したのであった。
◆◆◆
街を出てしばらく進み、山の麓まで来たところで、ちょうどいいスペースを見つけた俺達は、小休止を挟むことになった。
「とりあえず、適当に座ろうか」
周囲から薪を集め、魔道具を使って火をつけた俺は、鍋に火をかける。
「ああ、残りの道のりは1/3ってぐらいか?」
胡坐をかいて座るランドルフが、俺達にそう尋ねる。
「そうだな、水晶洞窟までならそんなところだろうよ」
鞄から地図を取り出して確認したマークが、その質問に答える。
「へぇ、そっか。あ、良かったらランドルフも飲んでくれよ」
俺とマークの間では、半ば定番となった特製の野草茶を手渡す。
今日はハーブのような野草を入れたので、ハーブティー風だ。
「おう、ありがとう!いい香りだな!」
笑顔で俺の茶を受け取ったランドルフは、それを豪快に飲み干す。
「おいおい、せっかくヨシヒロが入れてくれたんだから、もうちょっと楽しんでから飲めよな……」
相変わらずどこか優雅な様子で、マークは香りを楽しむように、じっくりとそれを啜る。
まぁ、俺としては、二人が少しでも楽しんでくれればそれでいいんだけどな。
料理なんて、他人に振舞ってこそだ。更に、喜んでもらえればなおのこと良い。
「すまん、すまん!じゃあ、もう一杯頼むよ!」
笑いながら、ランドルフは俺にお替りを頼んでくる。
どうやら、気に入ってもらえたようだ。
「まぁ、とりあえず互いの得意な戦法と、魔法を共有しておこうか」
そう、情報共有を行うのが今回休息を取った理由だ。
単純に、少し休憩したかったというのもあるが、前者の理由の方が大きい。
「おう!そうだな、じゃあ、俺から行くぜ!」
そういってランドルフは、自身の使える魔法と、扱う武器について説明を始めた。
まず、ランドルフの使える魔法は二つ。
1つ目が、【火球】という初級の炎魔法。
2つ目が、武器に炎属性を付与する、【炎属性付与】だ。
戦闘で使う武器は刀で、ランドルフ自ら打ったものらしい。
特に技術があるわけではないが、自慢の武器の火力には自信があるというのが自称。
道中の戦闘でも見ていたが、普通に刀の扱いも上手かったように思うけどな……。
ともかく、どうしても防御と一撃離脱だけに戦法が偏ってしまいがちな俺達2人とっては、メインの攻撃役が加わってバランスがいいだろう。
「……とまぁ、こんなところだな。近接攻撃と付与しかできないが、よろしく頼むぜ!」
そんな感じでランドルフは説明を終える。
続いて俺とマークも説明をしたのだが、それは割愛だ。
「よし!互いのことも分かったし、出発するか!」
残った野草茶を一気に飲み干し、ランドルフが勢いよく立ち上がる。
「おいおい、道わかんのか……?」
それに続いて立ち上がったマークが、呆れたようにそう尋ねる。
「……そうだった、わかんねえ!マーク、先導は頼むぜ!」
「はぁ、そうだと思ったよ……」
溜息をつきながら、マークは前へ出て、案内を始める。
俺も焚き火の比を消し、野営道具を片付けると、二人に続いていった。
◆◆◆
山を登り始めてから小一時間が経過し、目的の水晶洞窟が見え始めた。
「手前に見えるのが、目的の水晶洞窟だ」
そう言ってマークは、目の前の洞窟を指差して、俺達に教えてくれる。
「おお、あれか!水晶の原石が見えるぞ!」
ランドルフの言葉通り、洞窟の周囲には水晶の原石と思われる、透明な欠片を散りばめた岩がゴロゴロしている。
光を反射して自ら発光しているようにも見える水晶は、幻想的な雰囲気すら感じさせた。
「じゃあ、行こうか」
洞窟前まで辿り着いた俺は、2人に向かってそう声をかける。
「残念だが洞窟の地図はない。俺が警戒しながら先導するから、二人は後を着いてきてくれ」
「ああ!分かったぜ!」
「了解、よろしく頼むよ、マーク」
用意してきた松明に火をつけると、マークはゆっくりと洞窟へ歩を進めていく。
洞窟内は原石ではなく結晶となった水晶に覆われており、松明の明かりを反射している。
「おお、質のいい水晶がこんなに……!」
鍛冶師であるランドルフが、洞窟内の水晶をみて目を輝かせていた。
進んでいくにつれ、水晶の質は上がっていくようだ。
少し進んだとはいえ、まだまだ水晶洞窟は深い。
俺達は、洞窟のスタートラインに立ったばかりである。
次回は明日のお昼12時に投稿予約済みです。
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