表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社畜・イン・ファンタジー ~異世界ブラック冒険譚~  作者: 揚げたてアジフライ
第三章 新たなる出会い
48/137

第44話 毒、毒、毒……

いつもの1.5倍くらい長くなってしまいました。

それでも楽しんでいただければ幸いです。

 ランドルフからプラチナ合金の鎧を受け取った俺達は、久しぶりにクエストへ向かっていた。


 今回受けたクエストは『大毒蜥蜴ポイズンリザードの討伐』だ。

 5メドルを超える巨体を持ち、猛毒のブレスを放つことから、蜥蜴リザードという名前を持つが、ドラゴンの近縁種として認定されている魔物である。


 今回ばかりは、【毒耐性】のスキルを持つ俺であっても危険ということで、もしもの時に備えて、マークと一緒に市場で解毒薬を購入し、出発することになった。


 そんなこんなで、森の中を探索していた俺達は、巣穴と思われる洞窟を発見する。

 毒の影響か周囲の植物は枯れ果て、巣穴の周囲には餌食となったであろう動物の骨が転がっていた。


「この光景を見てるだけで危険さは理解できるだろ?」


「そうだね。ただの耐性じゃ、大変なことになりそうだ」


先の見えない洞窟の入り口へ向かう俺達は、改めてその危険度を認識した。


今回は光の差し込まない洞窟での探索となるため、松明を準備して進む。

 攻撃力の高い大毒蜥蜴が不意打ちで攻撃してきた場合に備え、俺が前を進むことになった。


 暗い洞窟の中を、松明の光を頼りにしばらく進んだところで、俺達は大空洞に抜け出る。


『……グルルルルル』


 どうやら、大毒蜥蜴はその巨体を丸めて眠っているようだ。

 時折口から漏れる吐息は、見るだけで猛毒と分かる、怪しい紫色をしている。


「毒を使う相手に、閉鎖空間で戦うのは危険だ」


「じゃあ、どうするんだ?」


「とりあえず、起こしたら【挑発タウント】を発動して全力で走れ。外までおびき寄せてから戦闘を開始する」


「了解。マークは先に外で待っててくれ」


 寝ている大毒蜥蜴に近づいていく中で、俺はふと思いつく。


 せっかく隙だらけで寝てるんだから、全力で攻撃してから起こすべきではないだろうか。

 ゲームの中でも、寝ている相手への攻撃はダメージが増加する場合が多かった。


 そんなことを考えた俺は、そっと近づき、武器を持った右手に意識を集中させる。

 そして、眠る大毒蜥蜴の頭に向け、全力の一撃を放った


『……ゴアアアアアアアアアアアアッッッ!??!?』


 全力で振り下ろされた俺の一撃に驚いた大毒蜥蜴が目を覚まして、叫びを上げる。


 しかし、そこはドラゴンの近縁種と言われるだけはある。

 大毒蜥蜴は、すぐさま冷静さを取り戻すと、俺を睨みつけた。


「怖っ……!【挑発】!」


 目覚めた大毒蜥蜴の圧に恐怖を感じながらも、俺はすぐさま詠唱を開始し、その魔法を発動した。


『グゴアアアアアアアアアアアアアッ!!!』


 【挑発】の効果を受けた大毒蜥蜴が、これまでより鋭い眼光を向け、俺の方へ近づいてくる。

 そして効果の発動を確認した俺は、外に繋がる通路へ向けて一直線に駆けだした。


「うおおおおおッ!やべええええっ!!」


 冒険者としての加護によるステータス補正があるとはいえ、その巨体とちっぽけな俺では、一歩で進む距離に大きく差がある。

 先に駆けだした筈の俺だが、一歩、また一歩とその差は縮められていく。


 だが、不意に足音が鳴りやむと、大毒蜥蜴がその場に停止した。


「あれ……?」


 【挑発】の効果はまだ続いているし、範囲からも出ていない。

 急な大毒蜥蜴の行動に、俺は思わず、振り向いてしまう。


 すると、そこには、大きく息を吸い込み始めた大毒蜥蜴の姿があった。


「……まずいっ!!!」


 その様子を見た俺は、再び全力で走り始める。


 そう、これはゲーム内で何度となく見た光景。

 ドラゴンが大きく息を吸い込んだとなれば、次に来る行動は一つしかない。


『……ゴオオオオオオオオオッッ!!』


 これこそが、大毒蜥蜴がドラゴンと認定される所以。

 大きく開けた口から、猛毒のブレスが溢れだし、一直線に俺へと向かってくる。


「おおおおおおおおおお……ッ!?」


 まずい、まずい、まずい……!

 外までの通路は一直線、脱出が間に合わなければ、そのブレスを躱す手段はない。


 出口まで5メドル、3メドル、1メドル……。


 その猛毒の吐息が、俺の背中、数十セルチまで迫ったところで、ようやく脱出することができた。


 しかしまだ安心はできない。

 外の空気で拡散するとはいえ、このまま進めば、ブレスは直撃してしまう。


 敏捷のステータス補正を活かし、俺は強引に左方向へと全力で跳躍した。

 そのまま前転して距離を取り、どうにかブレスを躱す。


「あっ……ぶねえっ!」


 未だに紫紺に煙る洞窟から、大毒蜥蜴が這い出てくる。


 そして俺を見つけるなり、忌々しそうにその目を向けた。

 どうやら、必殺とも言えるブレスを躱されたことに腹を立てているらしい。


「ヨシヒロ、幸いこの辺り広い!このまま戦闘を開始するぞ!」


 ブレスが霧散していき、先に出ていたマークが飛び出してくる。


「ああ、このままターゲットを取る!不意を突いて攻撃を頼む!」


「ああ!ただし、いつものように【毒の牙(ポイズンファング)】は使えないぞ!」


 確かにそうだ。

 猛毒を持つ大毒蜥蜴は、もちろん毒に大きな耐性を持つ。

 今回ばかりは、いつもダメージソースとなっていた【毒の牙】に頼ることはできないだろう。


 となれば、今回は、大毒蜥蜴との純粋な殴り合いを制する必要がある。

 俺達は二人とも、攻撃魔法を使えないからな……。


「後は頼むぞ!」


 そう言ったマークが、一撃を入れた後、すぐに離脱する。

 ここからは、俺達と大毒蜥蜴との耐久勝負だ……。


「よし、こい……!」


 俺は頬を叩いて気合を入れると、再び大毒蜥蜴と向き合った。



               ◆◆◆



「ハァッ、ハァッ……!」


「大丈夫か、マーク……?」


何度となく攻撃を行っているが、決定打のない長期戦に、俺達は苦戦を強いられていた。


いい加減、俺にもマークにも疲れの色がちらつき始め、その過酷さが目に見えて分かる。


俺の場合は精神的なものだが、マークは肉体的な披露もかなりのものだろう。

何度も全力の一撃離脱ヒットアンドアウェイを行ってきたマークは、かなり消耗が激しいはずだ。


「問題ねえ!離脱する!」


疲れを隠すように気丈に振る舞うマークは、再び茂みの方へと離脱していった。


(まずいな。やっぱり、俺も攻勢に出ないと……)


俺自身も不意を着くように、幾度と反撃カウンターを入れているが、硬い鱗を持つ大毒蜥蜴に対しては、有効打とはなっていない。


更には、マークの消耗も激しい。

そうとくれば、俺も【鉄拳】か、魔棍ハティによる全力攻撃をするしかないだろう。


『グルルアアアアアアアアオッ!』


そんな考え事から油断した俺に、大毒蜥蜴が毒に染まった黒い爪を振り下ろす。


「ぐぅっ……!」


詠唱が間に合わず咄嗟に右腕で受けるが、【硬化】していない肌を、大毒蜥蜴の鋭い爪は易々と切り裂いた。

持ち前の耐久値のおかげか傷は浅く済んだものの、傷口とその周辺が毒々しい紫色に変色している。


「まずい、すぐに解毒剤を使え!」


攻撃を受けた俺を見たマークは、咄嗟に指示を出す。


そう、大毒蜥蜴の毒は、即効性のある麻痺毒。

動きの取れなくなった獲物を、大毒蜥蜴は悠々と食らうのだ。


しかし、普通であれば一撃必殺とも言えるその即効性の毒は、俺の【毒耐性】の前に軽減される。


痺れる腕で解毒剤を飲み干し、その半分を傷口にかけると、すぐさま体が軽くなっていく。


『グルルルルオオオオッ!』


隙を見せた俺を、再び大毒蜥蜴の爪が襲う。

しかし、同じ攻撃をくらうことは無い。


咄嗟に詠唱を開始し【硬化】を発動、鋼鉄の如き右腕で、今度はその一撃を防御した。


爪の一撃を無効化された大毒蜥蜴は、その攻撃に意味が無いことを悟ると、大きく息を吸い込んでブレスの予備動作に入る。


『グロオオオオオオオオオオッッ!!』


再び当たりを猛毒が埋め尽くし、視界が紫に染まる。


しかし、俺はそのブレスを全身を【硬化】させることで防ぐ。

無防備を晒すことになるが、【硬化】さえしてしまえば、鋼鉄と化した俺は猛毒を吸い込むこともない。


『グルルルルルルッッ!』


ブレスの煙も晴れぬ中、大毒蜥蜴は無防備になった俺を見逃さぬと、両腕による連撃を放ってくる。


それすらも全て防ぐが、大毒蜥蜴は1度後ろに下がり、距離を取った。


(まずい、流石に威力を付けられたら防御が間に合わない……!)


俺の敏捷では、大毒蜥蜴の全力の突進を回避することはできない。

そうであれば、やはり正面から受けるしかない……!


―――ギリィィイイッ!


助走により威力を増した大毒蜥蜴の大爪は、硬化した俺の体をギリギリと引き裂いていく。

威力自体は殺すことは出来たものの、俺は再びダメージと毒を受けることになった。


(まずいな、逃げる隙が無い……)


 【硬化】の発動中であれば、普通の爪攻撃やブレスを防ぐことが出来る。

 ただし、もう一度あの全力攻撃がくれば、またダメージを受けてしまう。


 それに、先程の攻撃のせいで毒をくらってしまった。

 【毒耐性】のおかげでどうにか軽減はできているが、いずれ全身が麻痺するのも時間の問題だろう。

 そうなってしまえば、【硬化】が解除され、今度こそ致命傷をくらってしまう……。


(どうにか、隙さえできれば……)


 少しでも俺以外に大毒蜥蜴の注意を向けることができれば、まだ毒の回りきっていない体に鞭を打って、離脱することができるだろう。

 だが、その注意が俺から逸らされることはない。


(くそっ……【挑発】はもう解除されている筈なのに……!)


 一瞬、【挑発】のことを考えたが、その効果を示す魔法の赤い光は、とっくに体の周囲から消え去っている。

 であれば、単純に目に映る敵が俺だけだからだろう。


 もうすぐ【硬化】の解除時間が迫っている。

 

そうであれば、リスクは承知で攻撃の合間を縫ってでも離脱を試みるしかないか……?

 焦る俺が、一か八かの賭けにでようとした時だった。


「おいクソトカゲ!こっちだッ!」


 俺のピンチを察したマークが駆け付け、大毒蜥蜴の背中にナイフを突き立てる。


『グオオオオオオオオオオッッ!?』


 完全に俺に気を取られ、不意打ちを受けた大毒蜥蜴が叫びを上げる。

 そして、そのターゲットがマークへと移った。


「くっ……!俺が囮になる!早く立て直せ!」


 大毒蜥蜴の連撃を避けながら、マークが俺へ指示を出す。

 普段よりその動作が遅い。やはり、かなり無理をしているようだ。


「ごめん、ありがとう……!」


 ギリギリの所でマークに助けられた俺は、痺れる腕でポーチの解毒薬を取り出すと、一気に呷る。体の痺れが少しずつ和らいでいった。


 未だ爪の連撃を続ける大毒蜥蜴は、なんと、攻撃をしながら大きく息を吸い込み始める。


「なっ……!攻撃中にブレスができるのか……!?」


 大毒蜥蜴の示した予想外の行動に、マークが驚愕の声を上げる。

 どうにか離脱を試みているようだが、連撃への対処で精一杯のようだ。


 周囲の空気を吸い込みながら、大毒蜥蜴はブレスの準備を着実に進めていく。

 そして、一際大きく口を開くと、口内にブレスが充填され始め―――


「こっちだ、ドラゴンもどき!」


 ブレスが発射されるまさに寸前、俺は再び【挑発】を発動し、ブレスを受け止める。

 ダメだ、【硬化】は間に合わない……!


(頼む、どうにか【毒耐性】で軽減してくれよ……!)


 俺は祈るように目を閉じて、ブレスの直撃を受け続ける。

 視界が猛毒のブレスに染まっていき、大気を吸い込んだ俺の肺を汚染していく。

爪の猛毒を凌ぐブレスの効果は、俺の【毒耐性】ですら意味を成さない。


―――その筈だった。


「は……?なんとも、ない……?」


 ブレスの直撃を受け、本来であれば身動きの取れない筈の俺の体は、何故か自由に動かすことができる。

 必殺のブレスの威力を信じた大毒蜥蜴は、きっとその効果に倒れ伏しているであろう俺に向かって、まだ視界の悪い中を悠々と歩いてくる。


「よう、じゃあ、死んどけッ!」


『……グオッ?』


 そこに倒れている筈の(・・・・・・・・・)俺を喰らおうと顔を近づけた大毒蜥蜴に向けて、俺は全力の【鉄拳】を放つ。


『グロオオオオオオオオオアッ!?』


 鼻先に全力の一撃を受けた大毒蜥蜴は、苦痛に叫びを上げる。


「毒が効かないなら、もうお前の攻撃に脅威はない……!」


 こうして、俺達の大毒蜥蜴へのリベンジバトルが開始された。



             ◆◆◆



 必殺のブレスを無効化する俺の猛攻と的確なマークの攻撃により、それから程なくして、大毒蜥蜴の討伐は成された。


「なぁ、お前、なんで途中から毒が効かなくなってたんだ……?」


 マークの上げる当然の疑問の声を受けて、俺はステータスを確認する。


 すると―――


―――――――――――――――――――――――――

<<常時パッシブスキル>>


【毒無効】:すべての毒を無効化する。

―――――――――――――――――――――――――


「……【毒耐性】の常時スキルが、【毒無効】に変わってる!」


 俺自身も、突然現れたスキルの変化に目を丸くしてそう答えた。


「はぁ!?常時スキルが変化するなんて、聞いたことねえぞ!?」


「いや、俺自身もびっくりしてるんだけど……」


 恐らく、大毒蜥蜴による耐性を超えた毒を受け続けたのが原因だろう。

 そんなことを説明したのだが、マークは納得してくれない。


 その後も、やっぱりお前は異常だとか、無茶すんのはやめろとか、さんざん説教をされ、ようやく街に帰ることができたのであった……。

次回は20時に投稿予約済みです。

評価、ブックマーク、ご意見ご感想もお待ちしてます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ