第43話 ニュータイプな社畜
短いですが、第3章第一話目となります。
なんか、章が変わったって感じがしないですね。
冒険者ランクCへの昇格から三日後、休息を終えた俺は、マークとの約束通りギルドへと向かった。
まだ昼前だというのに、相変わらず飲んだくれる冒険者達を他所に、俺は空いているテーブルを見つけると、腰かける。
「マークはまだ来てないみたいだな……」
辺りを見回すが、トレードマークの、逆立ったような銀髪は見当たらない。
特にやる事のない俺は、何か注文するわけでもなく、ただボケーっと天井を眺めていた。
賑わいを見せ始める酒場スペースの様子に、いい加減席を譲ろうかと考え始めた頃、やっとマークが姿を見せた。
「よう、ヨシヒロ!……追い剥ぎにでもあったのか?」
俺を見るなり、マークはそんな言葉を口にする。
「はぁ?何言ってんだ、マーク……」
「まぁ、冗談はさておき、流石にその防具じゃただの重りにしかならねえだろ……」
マークは、大怪鳥ジズとの激闘により、パンキッシュすぎるデザインになった俺のレザーアーマーを見てそう言った。
確かに、改めて見てみると酷い状態だ。
一撃兎の角により開いた穴から始まり、怪鳥の風の刃によってズタズタに切り裂かれた俺の鎧は、最早防具としての役割を果たせないだろう。
「確かに、今更気づいたよ……」
「ランドルフの店の前に、眼科にでも行くか……?」
どうやら本気で心配した様子のマークを宥め、俺達は、どうにかロペス武具店へと向かったのだった。
◆◆◆
「こりゃ酷えな。愛する我が子の悲惨な姿に、思わず泣きそうだぜ」
ボロボロになった俺のレザーアーマーを見るなり、ランドルフはやや嫌味っぽくそう言った。
……流石に、今回ばかりは悪かったと思ってるよ。
「流石にこれの修復をするくらいなら、新しく買うか作る方が安上がりだろうよ」
ボロボロの鎧をじっくりと観察していたランドルフは、諦めたようにそう告げる。
「やっぱ、そうだよなぁ……。ランドルフ、申し訳ないけど、また頼めるか?」
「おうとも!俺達は既に一線を越え、固い絆で結ばれた相棒……だろ!?」
「いや、違うけども……」
謎のハイテンションでそう告げるランドルフの言葉を、俺はきっぱりと否定する。
俺とランドルフは、専属契約を結んだだけだ。
あまり変な事を言わないでほしい。周りに誤解されかねないだろうが。
「お前ら、既にそんな関係だったのか。お幸せにな……」
ほら見ろ!やっぱり、そんなことを言ったらマークが茶化すに決まってるんだ!
マークは手をひらひらさせながら、店を出ていこうとする。
「待て待て!勘弁してくれってマーク!」
必死で呼び止めた俺などつゆ知らず、けろりとした表情で踵を返して戻ってきたマークに、俺はすっ転びそうになる。
「ま、そんなことはさておき、ヨシヒロの防具は何日で完成する?」
「まぁ、早く見積もっても2日はかかる。次に作る鎧は、ちと特殊な加工をするつもりだからな」
そう言うと、ランドルフは早速職人モードへ突入し、鍛冶の準備を開始した。
用意している素材を見るに、どうやら今回は金属を用いた鎧になることが予想される。
「お代は後でいいのか?」
「ああ、出来高制ってやつだ。完成してから決めるよ」
その会話を最後に、ランドルフが口を開くことは無かった。
高温の炎により融点に達した金属が、ドロリと溶けて形を変えていく。
どんどん熱量を上げていく炉の炎は、周囲の空気を屈折させ、陽炎を生み出す。
ゆらゆらと揺れる視界の向こうで、熱された金属に向け、何度も槌が振り下ろされた。
何度も熱した金属塊を打ち、再び折り畳んでは、また熱して打ち付ける。
この作業を何度も繰り返すことで、金属はその純度を増していくのだ。
製作はまだ、始まったばかり。
ランドルフの言う通り、まだまだ時間はかかりそうだ……。
◆◆◆
二日後、相変わらず寝ているであろうランドルフは無視して、奥の鍛冶場へと押し入った。
怪鳥の討伐以来、5日以上もクエストに行っていないのだ。
そろそろ、退屈も爆発してしまう頃合いである。
ランドルフの仕事場へと勝手に侵入すると、目ざとく、俺のために作られた金属鎧を見つける。
ランプの光を浴びて白銀に輝くその鎧は、これまでの防具との格の違いをそれだけで思わせた。
軽量加工された合金の鎧は軽く、装着してもそれ程動きの負担にならない。
更には、魔法を軽減する付与効果がなされているらしく、その守りをより強固なものへと変化させている。
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武具名:プラチナ合金の鎧
特殊能力:魔法によるダメージを軽減する。
装備重量軽量化。
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ランドルフが【武具鑑定】を用いて残した書置きによると、このような能力があるらしい。
強固であってなお軽いその金属鎧は、ランドルフの腕の賜物だろう。
「これなら、より強い魔物の攻撃にも耐えられそうだよ」
俺は、鎧の具合を確かめるように、肩を回しながらそう言う。
そして、一つ気になっていたことを思い出した。
「そういえば、マークは防具を装備しないのか?」
出会ってから今まで、どんな強敵との戦闘であっても、マークは頑なに防具を身に付けることをしなかった。
盗賊であったとしても、ある程度防御力のあるマントやローブを装備すればいいと思うのだが、それすらも必要ないらしい。
「ああ、俺は攻撃を受けないのが前提の立ち回りだからな。それに、下手に防具を装備すると、動きが鈍ってしまう」
相変わらずシンプルな布の服で、マークはそう答える。
そんな器用な立ち回りができるの、マークだけだと思うけどな……。
俺に関しては、持ち前の耐久がなければ何度死んでいるか分からない。
それ程までに、強化されたステータスと防具には助けられている。
「マークの防具はこの際置いとくとして、俺は早速クエストに行きたい!」
流石にもう、我慢の限界だ。
こちらに来てから、ほとんど毎日のように行っていたクエストを5日も休んでしまったとあっては、日常の一部を奪われたのと同義である。
「まぁ、もっともだな。このままだと体が鈍っちまいそうだ」
マークが、コキコキと首や指の関節を鳴らしながらそう言う。
「それじゃあ、早速ギルドへ行こう!今すぐにだ!」
テンションMaxでマークを引きずりながらギルドへと向かった俺は、すぐさま、報酬の良いクエスト捜索を開始し始めたのだった……。
次回は明日のお昼12時に投稿予定です。
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