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社畜・イン・ファンタジー ~異世界ブラック冒険譚~  作者: 揚げたてアジフライ
第二章 胎動する悪
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第42話 決着、そして……

今回は、いつもより少し長めです。

このお話で、話数的には少なかったですが、一応2章が完結になります。

 獄王の刃によって改造された魔物である、大怪鳥ジズとの死闘を終えた俺達は、小休止を終えると、戦闘の場になったドーム状の大研究室を調査し始めた。


「うーん、かなり酷い状況だな……」


 怪鳥の魔法によって、滅茶苦茶になってしまった研究設備を漁りながら、マークが言う。


「そうだなぁ……。でも、肝心の資料なんかは無事みたいだし、まだマシじゃないかな」


 俺は、床に無残に散らばるガラス類を避けながら、パラパラと資料をめくっていく。

 どれも普通の学術書や参考書のようで、あまり参考にはならなそうだ。


「うーん、難しい専門書ばっかりで全然わかんないや」


「そうだな。流石に俺も、こういう分野はさっぱりだ」


 これまで万能っぷりを見せてきたマークも、流石に専門外らしい。


「ギルドも人使いが荒いよなぁ。たった二人でこの広い拠点を探さないといけないなんて」


 未だに戦闘の疲れが残る俺は、何故か無事だった(・・・・・・・・)本棚にもたれかかる。


―――ガコン。


 俺がもたれかかった途端そんな音がして、本棚が横にスライドするように動き始めた。


「うわわわわわっ……!?」


 突然動き出した本棚にバランスを崩した俺は、思わずすっ転ぶ。


「お手柄じゃないか、ヨシヒロ」


 床に転がる俺を尻目に、マークが本棚の後ろにあった隠し扉へと歩いて行った。


「あ、待ってくれよ!」


 急いで起き上がった俺は、扉の中へと進んだマークを追いかける。


 扉の中にあった小部屋は狭いが、設備の整った研究室だった。

 中央には、ガラスケースに保護された、何かのタマゴが鎮座している。


「ビンゴだ。恐らく、ここなら重要な情報が見つかるだろうぜ」


 マークが、研究室の本棚を調べ始める。

 俺もそれに倣って調査を進めるが、やはり専門書の類しか見つからない。


 いつしか、俺は部屋の中央で存在感を示す、タマゴを観察していた。

 淡い虹色に輝くそのタマゴは神秘的で、神々しさすら感じられる。


「……あった。魔物の改造と使役に関する研究資料だ」


 俺がタマゴに見惚れている間にもしっかり調査を進めていたマークは、どうやら重要な資料を発見したようだ。


「おいおい、ヨシヒロも手伝ってくれよ……」


 タマゴを見つめる俺に呆れたようなマークが、溜息をつきながらそう言う。


「なぁ、マーク……。このタマゴなんだけど……」


「ああ、それか。重要証拠だ、持って帰ってギルドに引き渡そう」


 マークが、そんな衝撃的なことを言った。

 いや、任務内容的に当たり前なのではあるが……。


「いやだ!俺は持って帰ってこいつを育てる!」


「はぁ!?馬鹿かお前!明らかに一番重要なのがそれだろ!?」


 やはりマークは反対か……。

 だが、ここは俺も譲れない……!


「絶対育てる!俺はペットを飼うのが夢だったんだ!」


 そう、これが理由だった。

 生まれてこの方、団地暮らしだった俺は、動物大好きにも関わらず一度たりともペットを飼ったことがない。

 いつか働き始めたらペットを飼うのが夢だったのだが、社畜生活に追われてそれどころじゃなかった。


 動物好きを拗らせすぎて、ゲームですら魔物使いなんかのジョブばかり選んでいたしな……。


「百歩譲って育てるとして、それ、魔物のタマゴだぞ?」


「ちゃんと面倒見るから!」


「そういうことじゃねぇ……。危険だって話だ」


 確かに危険かもしれない。

 こちらに来て以来、かなりの数の魔物を相手にしたが、友好的な種類は全くいなかった。


「でも、人間に使役されてる魔物もいるだろ?」


 そう、この世界には、調教されて荷車を引く、走竜ドラゴランナーという二足歩行で大型のトカゲのような魔物がいる。

 別に無茶を言ってるわけじゃなく、ちゃんとアテがあっての発言なのだ。


「まぁ、確かにそうか……。ただし、危険だと判断したらすぐに処分するからな?」


「勿論だ!ちゃんと躾けるよ!」


「そういうことじゃねぇけど、まぁいい……。とりあえず、ギルドには見つかるなよ」


 存外簡単に折れてくれたマークへお礼を言いつつ、俺は資料を回収するために用意していたナップザックへとタマゴを収納する。

 クッション代わりに、上着を巻いて保護しておくことも忘れない。


「さて、証拠品は十分集まった。さっさと帰って報告しよう」


「そうだね。そろそろ休みたいし……」


 俺達が証拠品を回収し、街へと帰ろうとしたのも束の間、地面が、いや、建物全体が激しく揺れ始めた。


「……まずい、まだ組織の奴らがいたか。恐らく、俺達を生き埋めにするつもりだ」


「はぁ!?まずいじゃないか!早く脱出しよう!」


「全力で上まで突破するぞ!俺が先導する、着いて来い!」


 マークの的確な先導により、全力で踏破した俺達はようやく1階部分へと辿り着いた。


 しかし―――


「まずいな、出口へ続く道が崩れちまってる……」


 マークの言う通り、確かに、下っ端達との先頭を繰り広げた大広間から続いていた道は、既に崩れ去っており、俺達の退路は断たれているようだ。


「ここは任せてくれ!……【鉄拳】!」


 珍しく焦るマークを他所に、俺は詠唱を開始、硬化した右腕で石壁を粉砕した。


頑丈な鉄の扉すら破ったのだ。

 今更、数メドルの厚さがあろうと、石造りの壁程度では俺を止めることはできない。


「ああ、そうだったよ……。焦った俺が馬鹿だった……」


 ピンチを切り抜けた筈なのに、何故かマークは冷たかった。


 そして、俺達は崩れ落ちる獄王の刃の拠点から脱出する。


 空を見上げると、東から上った太陽は辺りを照らし、一日の始まりを告げていた。

 どうやら、潜入してから丸一日が経過していたらしい。


「さて、帰りくらいはゆっくり行くか……」


 俺は朝日を浴びながらゆっくりと街の方向へ進み始めたマークに続くと、崩れ落ちる拠点を後にしたのであった。



                         ◆◆◆



 約2時間後、グスタの街へ到着した俺達は、その足でギルドへと向かい、報告のために支部長室へと呼び出されていた。


 相変わらず日焼けしたスキンヘッドの眩しいボールズ支部長が俺達を迎えると、慣れた手つきでお茶を入れてくれた。


「二人とも、ご苦労だった!まさか、これ程早く帰ってくるとは……!」


 少し大げさなまでに声を張り上げるボールズは、満面の笑みを浮かべている。


「本当ですよ……。今回ばかりは、死ぬかと思いましたね……」


 そんなボールズに向かって、マークが肩をすくめながらそう返す。

 確かに、大怪鳥ジズとの死闘は、それ程までに過酷だった。


「これが収集した証拠品です。確認してください」


 そう言うと、マークは、大きなリュックから次々と資料を出し始める。

 出発した時より荷物が多くなってると思ったら、いつの間にかそんなに集めていたのか……。


 怪しい薬品の入ったフラスコや試験管から始まり、小型の魔道具や、最も重要である『魔物の改造と使役について』と書かれた資料まで様々だ。


「こんなに、よく集めたな……」


 ボールズが感心したように息をつく。

 そう、うちの相棒は優秀なのだ。何せ、俺も驚いている。


「まぁ、集めたのはこんなもんですかね……」


 マークが、空になったリュックをひっくり返して、何もないことを示す。


「おや、サトウ君の方は、収穫無しかね?これだけあれば十分ではあるが……」


「あ、あはは!俺は主に戦闘を担当してたもんで!」


 俺はボールズの鋭い指摘に、やや芝居がかった様子でそう答える。

 勿論大嘘だ。俺は、一番重要な証拠とも言える、あのタマゴを持ち帰った。


 ただし、見せれば没収され、研究資料にでもされた挙句返ってこないのは明白なので、絶対にそれは伝えない。

 肝心のタマゴといえば、今頃、借りている宿の部屋で、布団にくるまってお休み中だろう。


「そうか。とにかく、本当に苦労をかけた!今回の件は、すぐにでも本部に伝えておこう!」


 当たり前ではあるが、しっかりと本部の方へも伝えてくれるらしい。

 これだけ苦労したんだ。マークの集めた資料で、何か自体が進展すればいいけどな……。



                         ◆◆◆



 ギルドへと報告を終えてから三日後、しっかりと休息を取った俺達は、ギルドから呼び出され、支部長室を訪れていた。


「それで、呼び出されたってことは、何か進展があったんですか?」


 席に着くなり、マークが早速本題へと移る。

 やけに早い気もするが、確かにそれくらいしか呼び出される思い当たりはない。


「すまない、それはまだなんだ……。だが、呼び出したのは他でもない。ランクアップについて、だ」


「ランクアップ!?」


「ついこの間、ランクDに上がったばかりですよ……?」


 驚く俺とは対照的に、マークは懐疑的な声を上げる。


「いやいや!これだけの功績、認められて当然だ!お堅い上は渋ったが、俺がどうにか説得しておいたよ!」


 やけにニコニコしたボールズがそう告げる。


 まぁ、何にしろ、努力して結果が認められるのは嬉しい事だ。

 ランクアップをすれば、またクエストの同時受注数が上がるだろうしな。

 そうなれば、また効率が上がるだろう。


「それと、もう一つ朗報だ!今回の功績として、本部から報奨金が出た!」


 ボールズが、自分のことのように嬉しそうな表情でそう告げる。

 見た目は強面だが、紅茶が好きな事といい、実は良い人なのだろう。


「ほう、金額の方は……?」


 報奨金の話が出た途端、マークが盗賊シーフらしく目を光らせる。


「俺はこれでも少ないと思うのだが、20万エルの報奨金が支給された」


 そう言って、ボールズはずっしりと重そうなズダ袋を机の上に乗せる。


「……まぁ、中級冒険者の俺達に支払われる金額としては妥当ですね」


 マークもどうにか納得したようだ。

 俺は大満足なのだが、二人としては少なく見える金額らしい。


「ともかく、本当にありがとう!本部の連中に代わって、礼を言うよ!」


 立ち上がったボールズが、深々と礼をする。

 大きな街のギルドの支部長がここまでするのだから、俺達の成し遂げたことは大きいのだろう。


「また何か進展があれば、こちらから呼び出しをかける。今日はご苦労だった!」


「ええ、よろしくお願いします」


「ありがとうございます!」


 俺とマークはそれぞれ礼を告げると、支部長の見送りを受けて、ギルドを後にした。


 相変わらず人で賑わうモンテス通りへと出た俺は、大きく伸びをする。


「これからどうする?……一狩りいっとくか!?」


「いや、流石にそんな体力はねえよ……」


 クエストに誘った俺を、マークは飽きたような目で見る。


「そうだな……。しばらく、休暇といこうじゃないか。ヨシヒロも、たまには里帰りしたらどうだ?」


「いや、俺は良いよ……。マークは、実家に帰るのか?」


 マークに里帰りを勧められるが、流石に元の世界には帰れそうにない。


「……いや、俺もいいよ。実家が遠いもんでね」


 何故か苦々し気な表情で、マークはそう答える。

 そう言えば、マークの実家ってどこなんだろうか……。


「ともかく、だ!集合は三日後にギルド!じゃあ解散!」


 無理やり話を切り上げたマークは、一人で雑踏の中へと消えていった。

 

「さて、何をしようかな……」


 固有ユニークスキルの【不眠不休】の効果か、あまり疲れのない俺は、どうしたものかと思案する。

 まぁ、結局クエストに行くしか時間を潰す手段がないんだけどな……。


 相変わらずワンパターンな俺は、今しがた出てきたばかりのギルドへと踵を返すのであった……。


次回は、3章が始まる前に、幕間の番外編と登場人物紹介を投稿します。

お話は色々考えてますので、これからもよろしくお願いします。


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